晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーリア・オーエンズ 『ザリガニの鳴くところ』

2022-02-13 | 海外作家 ア

年のせいでしょうか、なんだかものすごーく心配性になってしまいまして、家を出るとき、特にこの時期はコタツやストーブといった暖房器具のスイッチが心配で、ちゃんと切れてると確認してから玄関ドアのカギを閉めて車に乗り込んでエンジンがあったまるまで待ってると「あれ、ストーブ切ったっけ」と、だんだん心配になってドキドキしてきてとうとうたまらなくなって車から降りて玄関を開けて家じゅうの暖房がちゃんと切れてるか確認するもんで、この時間に家を出れば余裕で間に合うという時間より5~10分ほど早めに家を出ることにしてます。ちなみに心配になって家に戻ったら暖房が点けっぱなしになってたということは今まで一度もありません。まあ用心に越したことはないですけどね。

以上、老いと向き合う。

さて、おそろしく久しぶりの海外の小説。たぶん去年は何冊か読んでるはずですが。

この作品は2021年の本屋大賞翻訳小説部門第一位、だそうです。こちらの作者は本職が動物学者とのことで、過去にノンフィクション作品は出されたことがあるのですが、小説はこれが初めて。それでいきなり大ベストセラー。すごいですね。

 

1969年、アメリカ、ノースカロライナ州にある湿地帯の水溜りに男の死体が横たわっているのを、遊びに来た少年が発見します。男はチェイス・アンドルーズで、金持ちの息子でハンサムで学生時代はフットボールのスターで、という人気者。

1952年の話。夏のある朝、カイアという女の子は母親が家から出ていくのを見ます。カイアの家は湿地帯の中にあり、この湿地帯は法的に誰の所有とかいう境界もなく、犯罪者や逃亡者の潜伏地のような状態で、そこにクラーク家が住んでいます。カイアは5人きょうだいの末っ子で、母はマリア、父はジェイク。もともと別の土地にいたのですがジェイクが無一文になってしまい、さらに戦争で片脚を負傷して一家の収入は国からの軍人恩給のみ。ですがジェイクはそのわずかな金も酒に使ってしまい、気に入らないとマリアや子どもたちを殴る始末。そんなことでマリアは出ていってしまいます。

上の兄ジョディは心配するカイアに「だいじょうぶ、母さんは戻ってくるよ」と声をかけますが、夜になっても次の日になっても戻ってきません。母がいなくなって子どもたちへの暴力もエスカレートし、兄や姉はひとりまたひとりと家を出て、ジョディもいなくなって、残ったのはジェイクとカイアのみ。台所に残ったわずかな食材でどうにか飢えをしのぎます。ジェイクは恩給の支給日になるといくらかを置いていって飲みに行きます。その金でカイアは村の食料品店でトウモロコシ粉を買います。そんなカイアも本来なら学校に行かなければいけないのですが、家に来た無断欠席補導員を「自分を捕まえに来た」と思って逃げ隠れてしまいます。が、補導員の「学校に来れば毎日無料でランチが食べられます」という言葉に、空腹には勝てずカイアは補導員の前に出てきて、学校に行くことになりますが、それまでまともな教育を受けてこなかったのと他人とのコミュニケーションが取れないことで同級生たちにからかわれて、学校に行くのをやめます。

ある日のこと、カイアは少年と出会います。「きみはジョディの妹だろ」と言われてびっくりします。テイトという少年は兄のジョディと知り合いで、ジョディから話をきいていたのです。

それから数年が過ぎ、カイアはテイトから文字や数の数え方などを教わります。やがてお互い異性として好意を持つようになりますが、テイトは大学に行くことになります。「大学が休みになったらきっとここに戻ってくる」という言葉を信じますが、テイトからはなんの音沙汰もありません。

さて、チェイス・アンドルーズの死因は、火の見櫓から転落して頭を強く打ち付けたというのですが、まずそもそもチェイスはなぜ湿地帯にいたのか。自ら飛び降りるようなことは生前のチェイスからは想像もできません。あたりには発見した少年以外にはチェイスの痕跡しか残っておらず他殺の可能性も見つからず、捜査にあたっている保安官は進展がないことに苛立ちますが、ある漁師がチェイスの死んだ日の夜、ボートに乗った女性を見た、という目撃情報が。その女性は「湿地の少女」と呼ばれているカイアだったのですが・・・

チェイスが死んだ日に目撃されたのはカイアなのか。ふたりの関係は。

 

正直にいうと、ストーリー的には「まあそうだろうな」という展開なのですが、なにより文章が美しい。とても丁寧です。そして湿地帯の風景、動植物の描写が美しい。この作品がアメリカで出版されたのが2018年、今でもまだ売れ続けているそうですが、古今東西、良いものは良いのです。

こんなご時世ではありますが、読み終わって心がほんのりと明るくなる、そんな作品と出会えてしあわせです。

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