晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『吉原裏同心(十四)決着』

2020-03-07 | 日本人作家 さ
とうとう十四巻まできました。いちおうこのシリーズが全二十五巻。ところがこのシリーズの続編にあたる「吉原裏同心抄」という新シリーズがあって、折り返し地点は過ぎたかなと思いきやまだ先は長い。

さて『決着』です。ここでの決着とは、前巻「布石」での旧田沼派が目論む札差業の乗っ取りとの対決のことでしょうか。
ところでそもそも幹次郎と汀女が九州から逃げて江戸の吉原まで来た件については、完全に決着がついたんでしたっけ。

札差の新興勢力(香取屋派)と、現・筆頭行司(伊勢亀派)に分裂してしまった札差界。近々行われる次期筆頭行司の投票の直前アンケートでは香取屋がやや優勢。しかし伊勢亀派も黙ってはいません。もともと札差とは(持ちつ持たれつ)の関係だった吉原会所が伊勢亀に協力することに。
ですが、遊女たちはというと「金さえ払ってくれれば良い客」というスタンスで、次の筆頭行司が誰になろうとぶっちゃけどうでもいいのが本音。

そこで吉原会所の四郎兵衛が思いついたのが、前の老中の(亡霊?呪い?)が相手なら、こちらは現老中が相手だと松平定信を引っ張り出そうとします。

しかし、松平定信といえば、はじめの頃こそ三木武夫ばりにクリーン路線で人気もあったのですが、いきあたりばったりの改革で人気は下降気味。次の改革のターゲットは、ズバリ札差。
もともと札差とは、幕臣が給料として支給される米を御蔵から受け取って、米屋まで運んで換金して手数料をいただく(代行業)が本業だったのですが、いつのころからか蔵米を担保に金貸しまではじめます。というのも、江戸開府も百年ほど経って、国内の治安も良くなりますと、急激に江戸に人口が流入します。物価は上がる一方。ですが、武士たちの給料がアップすることはありません。組合でも作ってベースアップ要求もできません。ですので彼らの生活は苦しくなりますが、(武士の体面)というものがありまして、例えば五十石取りの御家人クラスでも、家には女中や小者を置かねばならず、その他何かと出費がかさんで大変。

この借金をすべてチャラにしちゃおう!というのが「棄捐令」。五年前までの借金はすべて帳消し、五年~現在までの借金の利子は年利を三分の一にするという、武士にとっては救済策ではありますが、札差にとってはたまったものではありません。

そこで四郎兵衛、もし次の札差筆頭行司選挙で伊勢亀に投票してくれれば、棄捐令じたいは実行しますが、その後、札差たちに助成金を出す、と松平定信にお願いに行こうとしますが、そんな気軽に会える相手ではなく、そこでかつて定信の側室(お香)を白河から江戸まで連れて来て、今でも(お香)と交流のある幹次郎と汀女を連れて(お香)の住む抱え屋敷に向かおうとしますが、それを妨害しようとする者が・・・

いちおう、これで旧田沼派との「絶対負けられない戦いがそこにはある」は終わったのでしょうか。しかし、「日に千両の金が落ちる」といわれた吉原は、誰にとっても魅力的な利権ではありますので、四郎兵衛会所や幹次郎・汀女にとって新しい敵はまだまだ出てくるのでしょうか。

はやく最後まで全巻読み終わりたいという気持ちと、結末はまだまだ知りたくないという、ふたつの想いに揺れ動いています、浜田省吾的にいえば。
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