晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『吉原裏同心(六)遣手』

2017-09-15 | 日本人作家 さ
今作のテーマは「遣手」。(やりて)と読み、現代ですと
「やり手ババア」なんて言葉が残ってますが、もともとは
吉原で妓楼にいる元遊女の役職で、主に遊女の指導・監督、
ならびに客の手配などをします。
優秀な遣り手がいるかいないかで売り上げに関わってくる
ぐらいの重要なポストではあります。

客の素性や懐具合を見てどの遊女をあてがうか、客の要望
どうりにはいかない場合もあったり、遊女にも厳しくしつけ
をしたり、けっこう恨みを買ったりもしたそうです。

さて、夜明け前、神守幹次郎は吉原から呼ばれます。
吉原内では大きな遊女屋(新角楼)へ行ってみると、楼の
遣り手(おしま)が、帯で首を括ってぶらさがっています。
よく見ると、首には絞められた跡が。つまり殺された後に
自殺に偽装工作をしたようなのです。

主人や番頭に聞けば、おしまは金稼ぎが生き甲斐のような
人で、およそ自殺するような性格ではない、と。

おしまには夫がいて、吉原の郭内に住む大工なのですが、
話を聞けば、おしまは二百両以上を持ってるはずだという
のですが、部屋には金はありませんでした。

捜査が進んでいくと、おしまには遊女時代の朋輩が最下級
の女郎として現在も吉原にいて、その(おひさ)という遊女
に、(もし自分が死んだら・・・)という書付を渡していた
のです。さらに、おしまは二十数年前に子を産んでおり、そ
の男の子は養子に出されたのですが・・・

なんだかんだでおしま殺しの犯人を捕まえ、おしまの葬式も
終わり、幹次郎は、吉原会所の頭の四郎兵衛と新角楼の主人
の助左衛門とふたりの若衆の五人でおしまの故郷の信州に
おしまの遺髪と遺産を届けに旅立ちます。

ところが道中、いきなり見知らぬ男たちに襲われます。どう
やら四郎兵衛に個人的な恨みを持っているらしいのですが・・・

なんやかやでおしまの故郷に到着しますが、そこでもひと悶着
があります。

この旅物語と、さらに吉原の内外で卑劣な引ったくりが連続
して起き、とうとう死者まで出ます。どうやら犯人は吉原内
に住む人らしく・・・

文中で、神守様の周りは行く先々で何かが起きますなあ、と
誰かがつぶやいていますが、まあ(裏同心)という設定上、
そうなるのも仕方がないのでしょうが、それにしても、男女
の愛欲、一日で千両の金が動くという金銭欲、さまざまな欲
がうごめいて、人間なんてしょせんは薄皮一枚剥げば獣なん
ですから、幹次郎が、というより(吉原が)が正解なんで
しょうね。
コメント
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