晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山崎豊子 『華麗なる一族』

2014-03-03 | 日本人作家 や
山崎豊子の作品は長編が多いので、本屋に行くと上中下や1~5が全部
揃ってなかったりして、困ってしまいます。

だからといって予約して取り寄せてもらうのもなんか面倒だし、揃ってれば
買うよ、ぐらいなのですが、しかし買ったはいいとして、今度は読む気分的
な問題が出てきます。

この人の作品は、なんというか、読んだ後にグッタリしてしまう(前に「沈まぬ
太陽」を読んだ後に頭が”ぐわんぐわん”しました)ので、読みはじめようにも
けっこうな気合が必要なのです。

万俵銀行頭取の万俵大介とその家族の物語、彼の銀行頭取としての経済小説とし
ての側面、両方ががっちりタッグを組んでの激しいストーリー展開。

もともと地方の地主から財閥にまで発展した万俵家。阪神銀行は都市銀の中では
業界ランク10位、不動産や流通、鉄鋼などのグループを形成。さらに、使えるもの
はなんでも使うといわんばかりに、閨閥作りにはげみます。

長男の鉄平は銀行を継ぐ意思はなく東大工学部からマサチューセッツ工科大へ進学、
万俵特殊鋼に入社し、現在は専務。妻は国会議員で大臣の娘。

長女の一子は、大蔵省のキャリア官僚、美馬中と結婚。

次男の銀平は、一応は父のあとを継ぐかたちで万俵銀行に入社。しかし、幼い頃に
垣間見た(見てしまった)ものがトラウマなのか、性格がひん曲がってしまいます。

銀平が垣間見たものとは家庭の問題なのですが、大介の妻は公卿華族出身の昔ふうに
いえば「お姫さま」で、これも閨閥作りのための結婚で、お姫さま育ちの寧子は家事
全般なにも出来ず、その代わりに子供たちの世話係として招かれたのが、アメリカ帰り
の相子という女性。はじめこそ相子は子供たちの家庭教師だったのですが、持ち前の
美貌と本人の野心が”英雄色を好む”大介と関係を持つまでに。なんと大介は調子に
乗って寧子と相子を同じベッドに連れ込むという(文中では「妻妾同衾」と表現しています)
まあなんとも破廉恥な行為に及び、これを幼き銀平は見てしまったのです。

相子は、万俵家のさらなる発展のため、銀平、妹の二子と三子に相応しいお見合い相手を
探す役目をおおせつかります。

とまあ、ざっとこんな家庭環境なのですが、もう一方の話の流れは、阪神特殊鋼の鉄平が
高炉を作って自社で製鉄をしたいために父に融資をお願いするところから始まります。
38歳になった鉄平はますます祖父に似てきて、それが大介にとっては気に入りません。
ひょっとして鉄平は祖父と寧子のあいだの子なのではとの疑いはさらに強く持つように
なってくるようになり、阪神特殊鋼の融資の話もすんなりとは了承しません。

ところが、この阪神特殊鋼が別の銀行に融資をお願いに行ったことが、のちに大介と鉄平
とにあいだにとんでもない亀裂を・・・

中央省庁では銀行再編の動きが高まっていて、業界ランク下位の阪神銀行などは、上位行
に飲み込まれてしまいます。しかし、自分の代で阪神銀行を無くすわけにはいかない大介
は、「小が大を食う」銀行合併を模索することに。

ここの部分の銀行再編劇は、第一銀行と三菱銀行の合併から白紙までを描いた高杉良の
「大逆転!」を読むと、さらにディープなことが分かって面白いかと。

冒頭での、伊勢のホテルで行われる万俵家の新年会の豪華なシーンからのラストシーン
の対比が、あたかも舞台を見ているようで、緞帳が下りて来て客席から立ち上がって
拍手したくなるような気持ち。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする