晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『天切り松闇がたり 第四巻 昭和侠盗伝』

2014-03-10 | 日本人作家 あ
浅田次郎の小説の中でも、「プリズンホテル」や「きんぴか」など、
当世風な表現でいうところの”反社会勢力”が登場する作品がたまらなく
面白くて、この『天切り松 闇がたり』もそのひとつ。

「天国までの100マイル」だったと思いますが、主人公の「俺はろくで
なしだけど、人でなしではない」といったようなセリフがあって、まさに
この部分といいますか、まだ救いようのあるろくでなし感が魅力的だったり
します。

親に身売りされた松蔵は、「目細の安吉一家」に預けられ、スリ、詐欺師、
夜盗といった稼業のこの一家のもとで、時に厳しく、時にあたたかく見守られ
ながら松は成長していきます。

第一巻では明治の終わり頃の話で、四巻では、関東大震災の復興後から昭和
初期、軍国主義が徐々に日本を覆ってくるころの話。

松の兄貴分である寅弥は悲痛な面持ち。かつて寅が軍人だったときの部下の
子供に召集令状が届いたのです。我が子のように可愛がっていた子を戦地に
赴かせる前に、国に一泡ふかせてやりてえ・・・そして盗みに入るのですが、
その家とは・・・

その他に、学校の日本史ではそんなに深くは習わなかったと思いますが、
「相沢事件」の相沢三郎を描いた「日輪の刺客」そして「惜別の譜」は
圧巻です。「惜別の譜」で、最後に相沢の奥さんに宛てた手紙のシーン
があるのですが、ここはもう不意打ちのように涙が出てきます。

そして、愛新覚羅溥傑と嵯峨浩の話「王妃のワルツ」これは切ない。

じつは、松蔵はそれまで師匠の安や兄貴たちの補佐といいますか手伝いが主
だったのですが、ようやく”技”を披露します。
その技を伝授してくれた黄不動の栄治は、結核におかされて・・・

ラストの「尾張町暮色」は女スリのおこんがなんとも格好いい。

コメント
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