晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『草笛の音次郎』

2012-07-17 | 日本人作家 や
この作品は「股旅もの」で、股旅とはネコの好きな植物ではなく、
縞の合羽に三度笠で諸国を渡り歩く渡世人などを指します。

主人公、音次郎は”恵比須の芳三郎”一家の渡世人。まだ身分は
低いですが、代貸(ナンバー2)の源七は音次郎をことのほか高く
買っています。

そもそも音次郎が任侠の道に入ったのは、働き者の父を事故で早く
に亡くし、母と音次郎とで版刷り職人になります。が、悪いやつに
だまされて暇を出され、ちょうどその時に音次郎は賭場で出会った
源七に自分を売り込んだのです。

まあ、最初から渡世人に憧れてなったというわけではなく、どうも
気が優しいといいますか、言葉も丁寧。

そんな音次郎に、源七は芳三郎の名代(代理)として、千葉の佐原
に住む芳三郎の兄弟分のところに行ってこい、というのです。

今でこそ東京駅から佐原までは電車でピューッ、ですが、徒歩ですと
だいたい2~3日はかかります。

さて、大役を仰せつかった音次郎、まずは股旅の基本中の基本、軒下
三寸を借りての”仁義を切る”練習。
”仁義”とは、「男はつらいよ」でお馴染みの自己紹介の口上ですね
(寅さんの場合はテキヤですが)。

道中、旅籠に泊まる場合はいいのですが、訳あって渡世人の家にお邪魔
することになったら、玄関先で片手を前に出して腰を落として「手前生国
と発しまするところ・・・」と仁義を切ってタダで食事と宿泊ができます。
が、もし出入りなどがあれば、お世話になっている者は真っ先に突撃しな
ければならない、というルールがあるのです。

芳三郎の兄弟分に渡す金と道中の入り用な金、合わせて百両もの大金を
持って、いよいよ旅立ちます。
江戸から佐原までの途中には成田山があり、成田山詣の人たちが大勢いて、
音次郎の旅の最初の宿は船橋だったのですが、隣の部屋で成田山詣の客の
どんちゃん騒ぎで寝不足に。

というわけで、次の宿泊先の佐倉では、成田山詣の泊まらなさそうな辺鄙
な宿にします。が、この選択が音次郎の身に危険が及ぶことに。
夜中、宿に夜盗が入り、客を縛って目隠しをして、金を奪われます。
しかし音次郎は目隠しをそうっと外し、犯人の顔をよく見て覚えます。

翌日、藩の同心、岡野甲子郎が宿に来て捜査。音次郎は渡世人ということ
で真っ先に疑われますが、犯人の顔を見たと言い、似顔絵を描きます。
手配書が迅速にできたことに岡野は音次郎(はじめは疑っていたのですが)
に感謝。

ゴタゴタに巻き込まれた音次郎ですが、佐倉を旅立ち、成田へ向かう
途中にもまた厄介事に遭遇します。
途中、神社の竹やぶから竹を切って水筒を作ろうと、小屋にいた老人に
許可をとったそのとき、神社の境内で喧嘩騒ぎが。
喧嘩というよりも3人の男が1人を袋叩きにしています。
すると小屋にいた老人があっという間に3人の男を倒します。
いったいこの老人は何者なのか・・・

そして、その後の旅の途中、音次郎はある容疑で牢屋に捕われることに。
そこでこの老人からもらった”ある物”が不利な状況に・・・

たかだか3~4日の旅ですが音次郎にさまざまな試練がふりかかります。
それを乗り越えて渡世人として、男としての器量を上げることになるのか・・・

音次郎が高熱を出してしまい、玉子酒を、というシーンで「仁勇」という成田の
地酒が出てきますが、現在もある銘柄で千葉ではけっこう有名です。

コメント
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