晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

大沢在昌 『無間人形』

2012-07-11 | 日本人作家 あ
ようやく新宿鮫シリーズの4作目を読み終えました。といっても10作まで
出ているらしいので、まだまだ先は長いです。

この作品は直木賞を受賞していて、なぜ”シリーズもの”の途中で?という
疑問はあるにはあるんですが、まあ、いずれにしても「優れた作品」である
ことは間違いないです。

基本のおさらいとしては、新宿署の刑事、ヤクザも名前を聞けばビビると
いう”鮫島”が主人公で、鮫島は今でこそ所轄の刑事ですが元キャリア。
地方に出向していた先でゴタゴタに巻き込まれ、さらに仲良くしていた
キャリアの同僚が警察上層部のスキャンダルを鮫島に託して自殺。
これによって鮫島は出世の道を経たれ、かといって辞められるのも困る
ので新宿署の刑事に配属させられます。

新宿署では腫れ物扱いで孤立しますが、「マンジュウ」(死体という意味)
こと課長の桃井、鑑識のスペシャリストの藪の2人は鮫島も心を許す存在。

そんな鮫島には10以上年下の恋人、晶がいます。彼女はプロのロックバンド
「フーズ・ハニイ」のボーカルで、口は悪いですが鮫島をとても頼りにしています。

さて、『無間人形』ですが、冒頭、鮫島は張り込みをしています。ここ最近、
渋谷や新宿で急に流行りはじめた「キャンディ」というクスリ。でも実は成分
はシャブで、安価で効き目があるということで、特に若者たちが買っています。

その取引の現場を抑えようと3人の若者を見張っている鮫島。女性にキャンディを
渡したところで追いかけ、一人を捕まえます。

ところがこの若者はキャンディがシャブだと知らず(一般的にシャブは注射で、
若者にはダサいと思われてる)、売人のさらに下っ端というだけで、若者に
キャンディを渡した”先輩”を今度は張り込みますが、ようやく動きを見せた
ところで鮫島の邪魔に入ったのは、厚生省の管轄である麻薬取締官でした。

じつは”麻取”もこの男に目をつけていて、これで解明するルートのひとつ
が潰される形に。しかし鮫島は、キャンディ蔓延の裏には必ずヤクザが絡んで
いるとにらんでいて、なんとか掴んだ情報では、藤野組の角という男が怪しい
というところまでこぎ着けます。

この話と並行して、地方の有力一族の兄弟が出てきます。兄の昇、弟の進の
兄弟は、新宿のヤクザ、藤野組の角という男と取引をします。昇は地元に
残って進が東京に行って角と会うことになっています。進は角をなめてかかって
いますが、これは角の作戦なのか・・・

さて、この地方にはナイトクラブがあり、そこのオーナーの景子は、昇と進の
親戚の有力一族。クラブのバーテンの男は東京でプロのミュージシャンを目指す
も挫折して故郷に戻り、景子に拾ってもらい、愛人関係に。店でたまに演奏も
させてもらいます。
ところがこのバーテンの男は、昔の仲間とつるんで、景子が何か法に触れること
をしているというネタで強請ろうと計画。

そんな中、バーテンの男のもとに、昔の仲間からの電話が。その”仲間”は今では
夢をつかんでプロになり、こんどツアーで近くに寄るので久しぶりに会うことに。
その”仲間”とは、晶だった・・・

登場人物のひとりがクスリに溺れていく様を描いているのですが、はじめは少量
で「ちょっと気分を良くする」ために、ところがジワジワと身体がクスリに支配
されてゆくのは、本当に怖いですね。

まさに「人間やめますか」です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする