晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・グリシャム 『陪審評決』

2010-10-20 | 海外作家 カ
久しぶりにグリシャムを読んだ、といっても1年ぶりなの
ですが『陪審評決』は、弁護士ではなく、陪審員が主役。
といっても、名作「十二人の怒れる男」のような、息つまる
密室劇ではなく、もちろん陪審員の心の機微、葛藤もあるに
はありますが、アメリカ大手タバコ会社を相手どった裁判
、それに絡んでくる、タバコ会社側の、係争処理専門会社
の裏工作、謎の女の登場と、相変わらずといいますか、法廷
の内外へとフィールドを拡げ、それでも収めるところにキチン
と収め、締めるところは締め、適度なユーモア、スリリング
も忘れずに、というバランス配分は天下一品。

長年の愛煙のせいで夫に死なれたということで未亡人ウッドが
原告となり、アメリカ大手タバコ会社を相手取って裁判を起こします。
しかしこれまで、全米でタバコ裁判はあったものの、大手のタバコ会社
4社は、いずれも負けてはいなかったのです。
そこには、「係争処理専門」に裏で動く、フィッチという男の存在が。
タバコ会社は帳簿をごまかして「積立金」名目で、うまく裁判で負けない
ようにしていたのです。

そのやり口とは、タバコに寛容な、あるいは否定的ではない陪審員選び
からはじまり、裁判中、原告側に少しでも同情心を見せたら、金でも
仕事でもあらゆる手で懐柔してゆくのです。

そして、メキシコ湾岸地域、ハリスン郡でウッド対タバコ会社の裁判が
はじまろうとして、フィッチは被告側に有利な陪審員を偵察します。
ニコラス・イースターという、コンピュータショップ店員が陪審に
選ばれたのですが、彼の経歴を調べてみると、現在大学を休学中との
こと。しかし、在籍の記録はなく、あいまいだったのですが、どうやら
タバコに関してさほど否定的とも見えず、フィッチ側はたかをくくって
いたのです。

ところがこのニコラス、大学で法学を学んだということで他の裁判員
から頼りにされ、しかも、フィッチの裏工作に気づいている様子で、
判事に、自分たち陪審員は何者かにつけられていて、さらに自分の
アパートに何者かが侵入して、その証拠の映像もあると言い出し、
本来は殺人事件や大規模な犯罪組織の裁判にみられる「陪審員隔離措置」
がとられることになるのです。

さらに、フィッチ側に、マーリーと名乗る謎の女が連絡をしてきて、
陪審員と通じている情報を流してきます。

ニコラスの目的は、原告側か被告側か、どちらに有利な方向に動いて
いるのか、フィッチに接触してきている謎の女の正体とは、そして、
謎の女とつながっている陪審員とは。

フィッチ側は、形勢不利と見るや、陪審員のひとりでチェーン系スーパー
の店長に出世をちらつかせたり、妻が陪審員をつとめている不動産会社社長
にウソの取引、さらにウソのFBI捜査官をよこし、陪審員たちを被告側有利
に先導してゆけと、あらゆるダーティな手を使いまくります。

しかし、どういったわけか、フィッチの工作は「謎の女」には漏れている
ようで、陪審員たちに、タバコ会社の雇っている人たちの卑劣三昧ぶりを
「謎の女」とつながっている一人は伝えるのです。

陪審の密室劇、場外のゴタゴタと、これらをうまく帳尻合わせてゴールに
向かおうとすると、両方をしっかりと描かなければならず、結果「長いなあ」
という印象は持ってしまったのですが、それでも飽きさせられずに楽しめ
ました。


コメント
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