晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

東野圭吾 『探偵ガリレオ』

2010-07-25 | 日本人作家 は
この作品のシリーズ続編「容疑者Xの献身」を先に読んでしまい、というか、
実は「容疑者~」が続編で、第1作があるということを後で知り、またもや
スターウォーズのエピソード1を後で見る状態といいますか、まあそれはそれで
登場人物の背景がシリーズ続編だと、そんなにしっかりと描かないので、前編を
読んで、ああなるほど、このキャラはこうなのか、と知る楽しみもあるのです。

「容疑者~」は長編でしたが、『探偵ガリレオ』は短編が5作品。
いずれも、現場には不可解な「謎」が残り、捜査に行き詰まった警視庁の草薙が、
大学の同期で、現在、帝都大学理工学部物理学科助教授、湯川のもとに相談に
行くというパターン。

一見、幽霊の仕業?と思わせるも、サイエンスの力をもってすれば人為的に
できると実証あるいは証明していく過程は、ニューヒーロー探偵誕生?と思
いきや、歴代ヒーロー探偵のようなダンディズムは無く、また、あまり捜査
そのものに興味はなく、ただ、その謎の解明のみに興味がわく、という、こう
言ってはあれですが、ドライな探偵。

しかし、警視庁の草薙とのコンビネーションは絶妙で、これが熱血すぎず、
時たまユーモラスな掛け合いもあり、前に読んだ「白夜行」「手紙」「さまよう刃」
といった、暗くて悲しい旋律とはちょっと離れた、どこかコミカルな旋律で、
東野圭吾の幅の広さに敬服。

深夜、ただ騒ぎに集まる数人の若者。週末にまたいつものようにバス停留所に
たむろしはじめ、バカ騒ぎをはじめます。すると、そのうちの一人の頭から
突然炎が上がり、そして停留所は爆発・・・「燃える」

釣りに出かけた中学生が、池に落ちていたある物を、文化祭の展示に使います。
しかし、そのある物を見た人は、失踪した家族の顔だと言うのです。中学生が
拾ってきたものは、精巧にできた、人間のマスクだったのです・・・「転写る」

風呂場で死んでいた男は、当初心臓発作と思われていましたが、検死によると、
体のある一部分のみが壊死していることが分かります。行きつけのクラブホステス
に話を聞いてみようとしたのですが・・・「壊死る」

突然、海中から水柱があがる爆発で、女が死亡。そして、アパートの一室で男が
殺されているのが見つかります。男は、帝都大の卒業生で、海の爆発があった日に、
現場の海岸近くに訪れていたことがわかり・・・「爆ぜる」

マンションで女性の死体が。容疑者として、見合い相手の男に聞き込みをしますが、
犯行日にはマンションに行ってなく、遠く離れた川べりで車を停めてサボっていた、
と言います。そして、警察に、一枚の絵が届けられます。それは、川沿いにある赤い
車の絵。じつは、病気の少年が、幽体離脱をして、上空から描いた絵だというのです。
少年の住まいからは車の停車場所は見えず・・・「離脱る」

これが、犯人の殺すに至る動機がきちんと人間くさく描けていないと、たんなるカラクリ
の解明に終始してしまい、別になんとも感想のない作品になるところを、サイエンス絶対善
とはしていないのが素晴らしいですね。


コメント
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