内田光子のシューベルトのソナタ集を聴く。
ずゐぶんと彼女のモーツァルトの協奏曲は聴きましたが、
結局のところ、余り好きにはならずに終りました。
どれも、彫りの深い好演奏でしたが、小生にはややくどい感じがして(その演奏する姿も、悶絶する芸術家、といった趣きですしー)、バックのジェフリー・テイトの指揮がよかっただけに、やはり、彼女の主導権の強さなのかしらん、と思ってゐました。
先日、クラウディオ・アラウのシューベルトのピアノ・ソナタの13番を聴いて、
その少し野暮ったい演奏に閉口したところで、内田光子の演奏を聴いて彼女のよさを再認識しました。
シューベルトが22歳の頃! に書き上げたこのソナタは、まるで、ハミングするやうに曲が始まる愛らしいものです。
クララ・ハスキルが録音した旧い演奏が好きでしたが、内田光子の演奏も、細部のディテールを充分に彫り込んで、でも聞こへてくる音楽は、そんな作為を感じさせない自然の仕上がりになってゐました。
小生の最愛の女優ジュリエッタ・マッシーナの演技のやうに、自然で天真爛漫な演奏は、家族も持たず、友人達の所を転々と渡り歩いたさすらひ人のフランツ・シューベルトにこそふさはしいものではないかな、と思ってゐます。
(写真は、ジャケットから)