エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハモニー管弦楽団による、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を聴く。
1960年の録音ながら、リ・マスターされたCDで、以前のLPやCDに較べると、はるかに音がやはらかくなり、透明感が増してゐました。
日常、チャイコフスキーの「悲愴」なんて、さう滅多に聴くものでもありませんが、本当にこの演奏は素晴しい。
竹、のやうに無駄のない、長身のムラヴィンスキーが紡ぎだす音は、やはり、孟宗竹のやうに、余分なものをそぎ落とし、妙な思ひ入れや恣意的な解釈を突き放し、
早めのテンポで、ダイナミックも大きく取り、そして、しなるやうなしたたかさを見せてゐる!
小生が愛するモントゥ-爺さんがステレオ初期に録音したボストン響との演奏のやうに、すっきりと、都会的に演奏してゐます。
曲が曲だけに、情緒てんめんとした演奏が多いのですが、やはり、繰り返し聴くには、ムラヴィンスキーのこの盤のやうに、太い筆で一気に書き上げたやうな演奏に限るやうな気がします。
それでも、いやそれゆゑ、見事にこの曲のもつ絶望感がひしひしと感じられるます。
同じディスクに、同時期に録音された第4番、第5番もあるのですが、5番の演奏も素晴しかった。
第二楽章のホルンが、旋律を引きずるやうに、哭くやうに演奏して、凍てついた景色を表現してゐるやうでした。
(写真は、ジャケット、より)