やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

クライバー/バイエルン国立管弦楽団

2005-07-04 | 古きテープから
1986年5月19日.東京・昭和女子大学人見記念講堂
指揮:カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団
プログラム 1.ベートーヴェン/交響曲第4番
        2.”       /交響曲第7番
        アンコール/ヨハン・シュトラウス/「こうもり」序曲
         ”    /”         /ポルカ「雷鳴と電光」

とてつもない演奏会です。

ひとしきりのチューニングが済み、指揮者を迎へたざはめきが終はらないうちに
第四番の音が鳴り始まる。
第四番の第一楽章は、アダージオで始まるのに!
そして、メリハリのきいた早めのテンポ。
細部にわたって刻まれた曲全体の造形の何と引き締ってゐることか!

「英雄」と「運命」とにはさまれたギリシャの乙女のやうな曲、といふ
有名な例へが(曲の古典的な美しさは兎も角)影薄くなるやうな、
闘争的な演奏です。
山門に立ち尽くし、にらみを効かせる仁王像のやうに、すっくとした演奏です。

続いて第七番である。
既に、指揮者を迎へる拍手が興奮してゐる。
テンポは、さほど動かさない。
けれど、弱音から強打に向かって立ち上がってゆく音の滑らかさは、
何といふしわざだらう!
終楽章にかけて、徐々に音楽はたたみかけられてゆく。
勿論、圧倒的なラスト。広い講堂の天井に、拍手が突き刺さる。

スリリングだけではなく、カタルシスの直前で踏みとどまった、
誰の口出しや手出しも不可能な演奏である。
そして、アンコールの演奏の、何と素敵なこと!
これがオペレッタの序曲? と疑ふ、骨太で華麗で艶やかな演奏である。
これ一曲だけで、故カルロスの名は歴史に残る!

これだけ細部への細やかな要求や、早めのテンポを求めらながら、
オーケストラは見事に応へてゐる。
途中、幾度か管奏者が音をはずしてゐた。
故カルロスに、しこたま文句を云はれたに違ひない。

改めて、カルロス・クライバーに合掌。