rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

今回問われているのは自衛隊を海外で戦わせる是非だ

2016-07-06 18:23:06 | 政治

参議院選挙までの残り日数が短くなってきました。ある調査では改憲を主張する党が得る改選議席は全議席数の2/3を超えて改憲を発議することが可能になる確率が高いとの調査結果もあります。私にはどうも改憲論議、特に9条を巡っての論議について紛らわしく、論点がぼやけてしまっているように見えます。

 

今回、主に自民党が掲げている改憲の趣旨は、自衛隊を日本の国外においても戦闘ができる国軍として扱えるようにすることであると認識するべきです。「専守防衛に限って存在を銘記する」という従来の「自衛隊の存在を認めるための改憲」をするつもりはないと考えねばなりません。そうでなければ昨年あれだけ揉めた集団的自衛権についての解釈改憲をする必要もなかったのですから。

 

改憲論議についての解りにくさをまとめると下図のようになると思います。つまり1980年頃まで国論を二分していたのは自衛隊の存在自体を認めるかどうか(A対BCD)だったのです。その中で専守防衛のみとしても現在の日本国憲法で自衛隊が存在することは合憲と言いがたいというのがCの意見であって、現実問題として自衛隊は存在しても良いというBCDを合わせると国民の半数近くだったのですが、自衛隊を合憲とはっきり考えていたのはせいぜい20%程度(私もその一人)だったと思います。憲法学者に至っては合憲派はほんの数人程度で殆どの人は裁判官も含めて違憲であると考えていました。だから統治行為論のようなものが出て来たと言えます。

 

ところが現在は自衛隊の存在を認めないとする国民はごく少数(5-10%以内)であり、殆どの国民は自衛隊の存在自体は認めようと考えています。但し集団的自衛権を認めて日本国外においても戦争できるよう変えて行こうと積極的に考えているのは1980年頃のごく少数よりは増加して20-25%位はいるかも知れませんが、全体としてはまだ少数派であると思います。今回改憲の是非という論点で可否を問えば図のように国論を二分(AB対CD)する可能性が出てきますが、きちんと「自衛隊の海外派兵による戦闘行為に対する可否」で問えば否決されることが明らかと思います。我々は今回の選挙を憲法解釈の問題における自衛隊の存在の可否という論点(図で言えばBと考えるかCと考えるか)で投票すべきではありません。ABCに属するか、Dかで選択投票することを解りやすく説明しないと投票率も伸びないし、野党が勝つこともないと思います。

 

自民党が目指す改憲のもう一つの目標は「秩序維持」「公共の利益」のためならば国民の権利を制限して良いということの銘記です。これは2001年911以降の米国「愛国者法」の下に国民個人のプライバシー他殆どの人権の制限が許される法体系ができていることへの憧憬によります。米国は国力衰退と共に、長期に渡るアフガニスタン、イラクなどでの戦争で疲弊し、米欧の資本主義を中心とするワン・ワールド形成のために戦争を遂行する能力が減退しています。だから数年前から米国は自衛隊にも海外で戦争をする能力を高めることを執拗に迫るようになりました。

 

一方、中国を現在のような大国に育てたのは米国でありながら、大国になっても米欧財閥中心の資本主義の傘下に入ろうとしない(独自の通貨発行権を持ち続けて国家資本主義を発展させる)ことに業を煮やした米国は中国に対して敵対政策を取り始めました(ピボット戦略)。これに対して中国も軍事力強化で対抗しているというのが現在の姿です。一方で米国国内も1%の権力者が経済を支配することに国民が反発を始め、トランプ現象、サンダース現象が起きていることは周知の通りです。本音では国内で勝手な事をさせないために戒厳令に近い厳戒態勢を布いて完全な管理社会にしてしまいたいというのが愛国者法を作成した理由です。最近頻繁に「テロリストによる凶行」が米国内で報道されるようになりましたが、何とかテロ事件を増やして完全管理社会にしてしまいたいと焦っているようです。

 

中国の目下の最大目標は中国貨幣(CHY)の価値の維持に他なりません。AIIBを作り、国際通貨バスケットに元を認めさせた事、ロシアなどとの間で自国通貨による貿易を増やしている事など全てCHYの価値を維持させることが目的と言えます。軍事力の強化は軍人の暴走も否定はできませんが、自国の領土拡張などという前時代的な政策で国力が増大できないことは本当の天才達が揃っている中国指導者達は理解していることと思います(中国は想像を超えたバカ野郎も沢山いるので困ってしまうのですが)。

 

日本は今ここで自衛隊を領土外で戦争できるように変えても何も得るものはありません。ワン・ワールド達成など二千年の歴史を誇る日本国にとって迷惑千万な話であり、米中(ロシア欧州も)ともにあまりうまく行っていない実情が見えているのですから、何も変えることなく静観しているのが得策であると私は思います。その意味でも今回改憲はノーでしょう。

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