rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

書評 官僚利権

2010-10-21 00:13:32 | 書評
書評 官僚利権 北沢 栄 実業之日本社 2010年刊

著者は共同通信を経てフリーのジャーナリストとなり、「亡国予算闇に消えた特別会計」(実業之日本社)「静かな暴走、独立行政法人」(日本評論社)「公益法人―隠された官の聖域」(岩波新書)など徹底して官僚の利権や無駄について追及してきたプロと言えるでしょう。2003年には国会で公益法人改革について参考人として意見陳述もしており、民主党の事業仕分けでは本当に仕分けされてしまうことを怖れた官僚達から事業仕分けの人選から「この人は入れるな」と駄目出しをされた経緯もあると書かれています。

本書は民主党の財源として話題になった「特別会計」に焦点を当て、その無駄からいかに埋蔵金を掘り出し得るかを解説した本です。日本の09年度の一般会計予算は88兆円程度ですが、09年の特別会計はその4倍の354兆円もあるというから驚きです。しかし日本国のGDPが450兆円位ですから、実際にはこれらの国家予算は予算同士の金のやりとり、所謂重複計上を含むので純粋な歳出、純計はこれよりも少なく、08年では一般会計で34兆円、特別会計で178兆円ということです。それでも国会で審議される事のない特別会計の額が随分と大きな金額であることが判ります。

この特別会計制度というのは日本に特有のもので、諸外国にも似た制度はあるもののあくまで特例的なもので日本の様に基幹たる一般会計の4倍も5倍も特別会計がある国はないそうです。米国には特別会計という制度自体がなく、フランスは一般会計が総予算の6割、特別会計が4割ということです。日本も80年台ころまでは現在のように特別会計が突出した額ではなかったということですから、国家運営上特別会計は必須の物でないことは確かです。

私は年金の積み立ても含めて財投や外国為替の特別会計も全て一般予算として毎年計上すれば良いと思います。年金などは現役世代が高齢者を支えるなどと言っておきながら実際は年金貯金のような扱いになって有り余った積み立て金で余計な箱物を作ったりアメリカの国債などに一部運用されていたりろくな使われ方をしていないと思われます。特別会計は一般会計のように大赤字ではなく、剰余金(毎年10兆)、利潤(数千億)など一般会計化することで900兆円とも言われる累積赤字の縮減にかなり役立つ部分があることは確実です。

勿論特別会計も中身として重要なものは沢山あります。しかし本当に重要ならば一般会計化されても堂々と認められるはずであり、各省庁だけで取り仕切るのは間違いでしょう。本来国の予算は国民が決める(国会で審議して決める)ものだからです。

書評としてこの本を論ずるにあたって、著者は複雑な特別会計や特殊法人のしくみを図やグラフを駆使して解説してくれているのですが、なんせ特別会計や独立行政法人などの存在がもともと複雑で理解しにくいものなので、一通り通読しても「結局どうすれば良いのか」がすんなりと判らないような印象を持ちます。埋蔵金も「必要だ」としている予算を削れば容易に得られることは判るのですが、いろいろな引き出しにこっそりしまい込んであるといった類いのものではなさそうだということも判ります。

私は自分が公務員であった経験もあるので、日本の官僚が「邪悪」であるとは思っていませんし、省益や利権を守るために自分の情熱や能力を費やすことを「良し」と考えている人間はむしろ少ないだろうと思っています。霞が関の論理や独特の考え方があることは確かでしょうが、政治家、国民がもっと官僚を信頼して行政に積極的に関心をもって働き掛けるようにすれば、彼らも国民のための「国益」を第一優先に考えて仕事をするだろうと信じています。「自分は国民のためにこれだけのことをやった。」と退職する時に胸を張って言える官僚人生でなければあまりに虚しいと考えるのは私だけではないでしょうから。

私は官僚の給料はもっと高くても良い位だと考えていますが、そのかわり特殊法人などは全て廃止して天下りもなくすべきだろうと思います。優秀な官僚を途中退職させて天下りさせることなく定年まで日本のために働いてもらう道を作り、上級ポストはなくてももう少し厚遇で働けるようにすればよいのだろうと思います。現在の小生のように50を過ぎて軍曹兼中隊長兼中佐のような仕事をしている医者もいるのですから、下働きもできる高級官僚もいてよいではないかと思いますね。

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