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rakitarouのきままな日常

人間の虐待で隻眼になったrakitarouの名を借りて人間界のモヤモヤを語ります。

書評「属国」米国の抱擁とアジアでの孤立

2010-01-14 00:46:35 | 書評
書評「属国」米国の抱擁とアジアでの孤立 ガバン・マコーマック著、新田準訳(凱風社)2008年刊

読んでも「残念」な内容の本は書評を書かないで捨て置くのが普通なのですが、この本はある程度期待して購入したのに内容があまりに「残念」なので敢えて苦言を呈することにしました。

それなりに期待をしてお金を払って購入したのに、今までに私が「残念」に思った本とは、1)日本語が読めたものではない(某経済学者が書いた経済本)。2)内容がくだらなすぎて主題を支持する意味をなさない(某日米同盟を勧める本)。3)主張が一方的な上に分析が稚拙(この本)などがあげられます。

著者はオーストラリアの国立大学教授で日本と東アジアの社会問題の研究を専門にしているそうです。この本は主に「小泉・安倍政権が米国を利する属国としての政策を行う一方で中韓に対しては日本のナショナリズムを鼓舞するような外交政策を取ったというのは何故か」ということを分析した内容なのですが、一言で表わせば「アメリカに媚びを売りやすいよう日本国内にはナショナリズムを刺激する政策を取って煙幕を張ったのだ」ということになります。その結果日本の経済は疲弊し、アメリカの戦争政策に加担することになり、中韓から反感を買う事でアジアにおいてさらに孤立することになった、というものです。

この「本の骨格」になる部分はその通りだと思いますし賛成なのですが、では何故このような政策を取ったのか、アメリカの日本の政治へのガバナンスはどうなされたのか、一方で中韓の米国へのアプローチと日本の関係は、中韓以外のアジアの国々と米国・日本との関係はどうであったのかといった専門家に聞きたいような興味深い分析はほとんど皆無です。代わりに書かれていることはアメリカの侵略主義的政策の批判、中韓が行う反日プロパガンダの忠実な反芻が何の分析も批判もなく延々と述べられているだけで結論として「中韓に言われる通りにしないから日本はアジアで孤立してこれからもアメリカの僕として属国の地位に甘んずるのだ」と書かれているだけでした。

本の内容が原著の正確な訳なのか、訳者の創作が含まれるのかはわかりませんが、「日本は戦争中残虐の限りを尽した」という表現や「在日朝鮮人は戦争中の日本による大量拉致の被害者なのだから北朝鮮の拉致問題はそれに比べれば小さな問題」といった記述はオーストラリアの学者としては歴史を知らない上に、かなり偏った日本人への人種差別と偏見の持ち主と言えますし、訳者の意見であるならば文中にそのように銘記しないやり方は原著者にも読者にも失礼なやり方です。

「東京裁判史観の否定」即「皇国史観」という脊髄反射にもうんざりしますが、日本はアメリカの属国として金品を巻き上げられるだけでなく戦争の使い走りまでやらされるぞ、という「大事な所」を突いているのですから、中韓についても「おっしゃることその通り」ではなく客観的な目で分析して正すところは正した上で建設的な未来を築いてゆけるような提言をしてくれれば大枚2500円の価値がある本になっただろうにと残念に思いました。

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