rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

安かろう悪かろうは薬も一緒である

2008-09-13 23:59:18 | 医療
後発医薬品(ジェネリック医薬品)はゾロ品とも言われ、新開発の医薬品が一定期間が過ぎた後、元の製品と同じ主成分の薬品を製造して安い薬価で販売しているもので、医療費抑制の旗手として積極的な使用が推奨されています。05年の全医薬品に占める後発品のシェアは17%といわれ、厚労省は12年までに後発品のシェアを30%以上にするよう勧告を出し、本年4月から処方箋薬局において医師の処方箋に係わらず30%以上後発品を出せば1枚につき40円の調剤料の増収になるという得点まで付けました。

後発医薬品は効能・効果は同じで薬が安いだけだと厚労省は断言しています。しかしそれが嘘であることは医師・薬剤師・製薬会社も全て常識として承知しています。知らないのは薬を飲まされる患者だけです。勿論後発医薬品でも効果が同じであると言えるものもあります。しかし主成分が等しいだけで製造法や配合剤が同じでないものが元の薬品と同じはずがありません。薬は吸収され、血中に入り、臓器に達して細胞に取り込まれ、薬効を働くという過程を取ります。100%同じものでなければこれらの過程が同量の薬を投与されても変わってくることは普通に考えても理解できるはずです。

最近は後発品も「進化したジェネリック」として元の薬剤よりもより効果的であったり、副作用が少なかったり、飲みやすくなったりしているものもあり、一概に「後発品は悪い」といえなくなっていることも事実です。しかし売れ筋の薬になると、同じ薬剤にあまりにも多数のジェネリックが作られるため、どれが信頼できる後発品か見分けが付かないのが現状です。医師としては効果。副作用ともによくわかっている元の製品を患者さんに使ってほしいと考えるのが人情というものです。

具体的な製品名はあげませんが、先発品から後発品に変えた後に明らかに検査データが悪化した例は公の学会報告でも多数示されていますし、製薬会社ではそのようなデータをかなり収集しています。「薬の効果は二の次で、医療費が安くなることが何よりも優先」であることを前提にジェネリックの推進をしていることを厚労省は国民に説明しないといけません。

医師が処方する薬には、「絶対に飲まないといけない薬」、と「飲んだほうがよいと思われる薬」があります。糖尿病や高血圧、癌の治療薬などは飲まないと命にかかわる「絶対に飲まないといけない薬」でしょうし、高脂血症薬などは飲んだほうが将来のために良い薬でしょう。ビタミン剤や湿布薬、胃薬などは場合によってはどうでも良いものといえるかも知れません。医師によってはこの重要度に応じてジェネリックに変えないでほしいと考えている人もいます。私もその一人です。

オランダから医学部の学生が夏休みを利用して研修にきたことがあります。その一人が腹痛をおこしたので薬を出してやろうとしたのですが、「重大な病気でないのなら薬はいらない、自分は抗生物質も飲んだことがない」と言われて外国の若者はそんなものかと感心したことがあります。総じて日本人は薬好きです。私は外科医であり、薬は自分も飲まないし、患者さんにも必要最小限しか処方しませんが、外来などで「もっと薬をくれ」と言われて閉口することもあります。

前にも書きましたが、西洋医学では急性疾患と外科的疾患は治りますが、慢性疾患は症状をごまかすことはできても治すことは不可能です。治らない病気に対して出す薬は必要最小限でよいのであって、あれやこれやと取り混ぜて出すなどというのはナンセンスです。私はジェネリックの使用を増やして医療費を削減するのでなく、不要不急の薬は出さないことで医療費を減らすほうが良いと考えます。それでは薬屋や不要不急の薬を出して生活している医師達が困るではないかと言われるかも知れませんが、自分の命を削ってストレスフルなリスクの高い医療を行っている医師達こそが本当に患者さんの命を救っているのですから、医師たるものその本来の医師の領域に戻るべきなのであって楽をしていてはいけないのです。

世界の製薬業界は大手が中小の企業を吸収合併して再編が行われ、新薬開発に関して十分な体力がないと研究開発が困難な状況になってきています。私は日本の製薬会社を守る必要からもあまり薬価を下げて製薬会社の体力を奪うべきではないと思います。エイズの治療薬が欧米の大手製薬会社が開発し特許を持っていて安い後発品の販売を許さないからアフリカなどの後進国では患者がいても薬が買えない状態が続いています。新たな病気に対する薬を開発する能力がない場合、その国民の健康は薬を持っている他国に支配されることになります。つまり国防の観点からも製品開発が可能な製薬会社の体力を奪うのは良くないというのが私の意見です。

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1 コメント

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患者さんには出しませんが… (nao-koh)
2008-09-19 11:34:26
患者さん、特に高齢者や慢性疾患にかかっている方には、本人の希望がない限りゾロは決して出しません。精神的にかなりナーバスになっているので、名前や包装、形や色が変わるだけで、治療効果が大きく変動してしまいますから…。
でも、自分やスタッフが飲む薬に関しては、「実験」(!)を繰り返して、使えるゾロを少しずつ増やしているところです。国立病院では原則としてゾロを処方しているので、「使えるゾロ」のリストがあるはずなのですが…、残念ながら入手することが出来ません。
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