rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

バクムートが陥落しない理由

2023-04-04 16:23:18 | 政治

2023年初頭からウクライナ戦争は都市バクムートを巡る攻防が続いている様に見えます。ロシア軍は予備役30万人が訓練を終了し、冬季攻勢で一機にウクライナ戦争にケリを付ける事も予想されたのですが、一部を前線に投入したまま戦線自体は膠着している様に見えます。視かたによってはウクライナ軍が善戦しているとも言えます。しかし本当のウクライナ軍の損害について西側メディアで伝えられる事はないようです。ウクライナ側でも西側資本から独立したメディア・キエフインデペンデントは真の兵士達の姿を伝えているものもあり、日本人のTerajima Asami氏の報告や、「前線の兵士の寿命は4時間」というNewsweek報告も貴重な情報です。

 

I.  敢えて店じまいしないバクムート賭殺場(Offenbecker said Bakhmut has been called "the meat grinder" by newsweek)

 

敵を倒す時、出血している傷があるならば、敢えて傷口をなくす事をせず放置したほうが、出血が続いて本体が弱り、本体を早く倒す事ができます。傷口を取り去って、改めて傷のない本体に殴りかかってゆくよりも味方の被害が少なく、相手を倒す事ができるでしょう。ロシアが取っている手段はこれです。ロシアはウクライナ軍の3倍から5倍の火砲を毎日打っている事はウクライナ側も認めています。兵の損害は6割―7割が火砲や爆弾による損傷であり、銃の打ち合いで死傷するのは1-2割であることは第二次世界大戦以来、現在も同じです。「火砲や爆弾を多く打つ方が圧倒的に勝つ」事は軍事の常識なのです。

バクムート市の東にある大規模塩採掘所で、地下要塞化されていたSoldarの攻防を含めると半年以上かかって主にロシア軍は傭兵ワグネルと圧倒的火力の砲兵を使ってじわじわとウクライナ軍を攻めてきました。バクムートだけでウクライナ軍は2万人の戦死、負傷を含めると10万人の兵力を失っていると考えられます。ロシア側は米国の算定で1/8と言われているので三千名の戦死、1.5万人の負傷でしょう。

 

II.  拠点としてのバクムート

 

バクムートには4本の鉄道起点、4本の主要道路が交差し、ドネツク攻防での重要拠点である事は間違いありません。ウクライナ側がSoldarを含むバクムート周辺を2014年以来周到に要塞化してきた事からも明らかです。4/3の戦線の状態 では、バクムートの市街中央がロシア軍(ワグネル)の手中に入った、と報告されています。バクムートにはまだ1万人のウクライナ兵が残留していると言われますが、残された1本の道路は冷たい雨で泥濘化し、砲撃の下で歩いて移動する以外撤退や補充の手段がありません。一説によると、4月15から5月9日の間にウクライナ軍はドイツ軍のバルジ作戦の様な一大反撃を予定しているとされ、現在Himarsなどの攻撃も節約し、西側からの戦車の温存を計っていると言われます。一方でロシア側も招集し、訓練を終了した予備役を前線後方に温存しており、旧式のT55戦車なども動員して野砲として使用する(米国防省による「ロ軍が戦車の消耗に困って引き釣り出した」という説明は虚偽で、昨年来増産されたT90が配備されており、旧戦車は自走砲としてチェチェン紛争の時から使用されている)準備も進められています。4月下旬にウクライナ軍は最後の抵抗を試みて大敗し、終戦の方向に向かう可能性が大きいです。

ほぼ三方が包囲され、いつでも全ての方向から砲撃されるバクムート中心部が4/3にはほぼ占領された

 

III.  戦術の進化

ロシア製滑空誘導弾

 

昨年の2月にSMOが開始された当初は、ロシア軍の戦闘法はシリアでの戦いから重厚長大な師団編成でなくウクライナ側と同様の戦闘団編成になっていたものの、ドローンやジャベリンなどを駆使したハイテク戦闘には遅れを取っていたと言えます。ロシアも現在はドローンを駆使して砲爆撃を行っており、KM-8グランレーザー誘導滑空120mm迫撃砲、GPS機能を備えた誘導滑空爆弾FABを使用しており、それらはワグネル傭兵グループも使用しているとされます。つまり極超音速ミサイルを含めて西側が用いていたハイテク兵器は既にロシア側も使っていて兵器によるウクライナ優勢は既にないと言えます。しかもウクライナ側は補修施設が皆無であるため、破壊、故障した兵器はクズでしかありません。米国は6個の軍事偵察衛星を使用していますが、停止衛星ではないので常時は使えません。商業用を含めても24時間衛星でカバーはできないため、黒海上空のMQ-9リーパーなどのドローン偵察が有効でした。しかし3月14日にロシア空軍に衝突、撃墜されてからは、ウクライナ沿岸から12カイリでなく40カイリ離れた偵察になったと報道されました。

頼みの西側情報網にも制限が

 

IV.  「ロシアが弱い」という宣伝はウクライナの犠牲を増やす

 

第二次大戦前に日本では「アメリカ人は享楽的だから戦争に弱い」という宣伝が盛んでした。米国の底力を知る山本五十六は、真珠湾攻撃成功に際して「眠れる獅子を起こした」と恐懼したとされますが、味方の損害を最小にして戦争を有利に終わらせるには「相手は強い」と徹底的に言い続ける必要があります。日露戦争ではロシアの強大さを正しく怖れ、辛勝(米国に仲介してもらった)と言えます。日本を含む西側の報道機関は「ロシアは弱い」「ロシアは負けていてもうすぐ国家ごと破綻する」といったデマを流し続けていますが、結果としてウクライナおよび西側の犠牲ばかりが増えており、完全な利敵行為、売国行為に堕しています。そもそも国連でも認められた「ミンスク合意」を順守していれば、昨年2月以来の戦闘によるロシア・ウクライナ双方の40万人の若者は死なずに済んだのです。戦争に至らずに済んだ方策を反省せず、「40万人もの死なずに済んだ命」を悼む反省の弁もないメディアや政治家というのは、私には鬼畜にしか見えません。下図の様に、実は米軍も備蓄した戦力を使い果たしつつあります。軍事的センスがないとはいえ、メディアの一方的なプロパガンダのみを受け入れて、ロシア悪い、プーチン悪魔、ゼレンスキー英雄という視点しか持たない日本人には猛省を促したいです。

CSISの分析では米軍の備蓄戦力が3年以内に戻るのはHIMARSだけで155mmりゅう弾砲や対戦車兵器のJAVELINは5年以上かかると。

コメント (6)
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