英国3大重爆の一つであるショート・スターリングMk4を作りました。スターリングは後発のハリファックス、最も成功したランカスター爆撃機が当初双発爆撃機として設計されたのと異なり4発機として設計開発されました。大量の4発重爆による戦略爆撃は、当時としては全く新しい戦略思想によるもので、総力戦として市民を巻き込んだ全面戦争になった第二次大戦において、都市を丸ごと廃にする無差別爆撃につながる物でした。ただ初めての4発重爆として種々の制約を受ける事になり、後発の2機に主役の座を譲ることになります。格納庫の制限などから、胴体に比べて主翼の幅が狭い事が、模型でも上方からの写真で解ります(低アスペクト比)。これは当然飛行安定性不足や失速につながります。また飛行艇メーカーであるショート社が中翼設計にしたため、主車輪が複雑で巨大な装置になり、四角い胴体の割に、爆弾槽が中型爆弾までしか搭載できないなど、性能面で問題が多いものでした。初期の爆撃機型(Mk I.II.III)も重武装で後続距離が長く、大戦初期から中期には活躍しましたが、結果的に後方銃座しか持たない輸送、グライダー曳航用のMkIVが577機製造され、大戦末期まで活躍しました。
エンジンはブリストル・ハーキュリーズMk16 1,650馬力 4基で最高速度434km 航続距離は3,240kmでした。
降着装置が複雑 その辺についても、模型での再現性はとても良い。 アスペクト比の小さい構造
Mk IVは機首の銃座もなく、ガラス面が多い。 後部銃座の下方に飛び出している構造物がグライダー曳航用のタグ。
機体内部の作り込みは精緻で航法士席には定規もある。シートベルトもエッチングでセット。 後方の扉は開けた状態で空挺隊員(Heller製)が梯子に乗っている所にしました。
英軍で使用されたグライダーはAirspeed Horsaが最も多いのですが、米国製のWACO CG-4もローマ皇帝Hadrianの名前で多用されました。ホルサに比べてハドリアンは小型であり、双発のCー47スカイトレーンやダコタ輸送機などでも曳航可能であった上、操縦席が上方に跳ね上がる事でジープや75mm榴弾砲、37mm対戦車砲などが容易に積載可能であったため重装備を持たない空挺部隊に重宝されました。現在はヘリによる輸送や、パラシュートを使って重装備を降着させる技術が進んだために空挺グライダーの需要はなくなりましたが、当時は使い捨てにされるもののグライダーによる敵地侵入は最新の戦術でした。荒地で着陸に失敗する損失も多かったと言われます。陸軍兵で操縦経験のある者は積極的に採用され、操縦員として訓練されました。
操縦席を跳ね上げて胴体から重装備の積載が可能。その際は尾部を支柱で上げて出入り口を下げる。グライダーの操縦手と空挺隊員がキットに付属している。
模型は老舗のイタレリ製で、デカールも扱い易く、綺麗なカルトグラフ製なので安心して作れます。特に操縦席や機体内部の作り込みは秀逸で、4本のスロットルなども再現され、見えなくなる前に写真に撮りました。グライダー曳航、空挺部隊輸送用のMk4に合わせて、古い金型ですが同じくイタレリ製のCG4Hadrianも作って、以前作って壊れずに残っていた1/72のウイリスジープと合わせてみました。ノルマンディー上陸作戦から映画「遠すぎた橋」で描かれたマーケットガーデン作戦の頃まで使用されたインベイジョンストライプを機体に書いたものを作りました。操縦席を跳ね上げて重装備を載せる場面の機体の説明資料がなかなか見つからないのですが、機体尾部を支柱で持ち上げて搭乗口を低く保つ様が米国の空挺博物館などで展示されているのでそれに倣いました。
Glider tug(爆撃機)と曳航されるGliderを並べてみました。