2022年7月8日、参議院選挙投票の2日前に、奈良県で候補者支援演説中に自民党の安倍元総理が41歳の元海上自衛官(20年前に任期制で採用)、現在無職の山上徹也に自作の銃で撃たれて死亡しました。評判はいろいろでしたが、一人の人間の命が奪われた事は事実であり、ご遺族の方に哀悼の意をささげ、安倍元総理のご冥福をお祈りします。
発砲による白煙。花火用の火薬だろうか、高性能炸薬ではこのような煙は出ない。
I. テロ(襲撃)が目的で死亡は偶発的ではないか
多少銃や銃創について専門的な知識のある自分としては、どのような医学的経緯で安倍元首相が死亡するに至ったかを検証できます。しかし各報道などを見ても、正しく検証しているものを目にしないので敢えて記事にすることにしました。まずは誤魔化しようのない治療にあたった大学医師たちの会見から。
治療にあたった大学医師達の会見
(引用開始)
安倍元首相が死亡、搬送先の奈良県立医大が会見頸部に銃創2カ所、心室と大血管が損傷、輸血100単位以上
レポート 2022年7月8日 (金)
奈良市で演説していた安倍晋三元首相が7月8日、男に銃で撃たれ死亡した事件で、搬送先の奈良県立医科大学病院が会見を行い、対応に当たった救急診療科部長の福島英賢教授が、「頸部に2カ所銃創があり、心臓の心室と大血管を大きく損傷していた。止血を行ったが、残念ながらの結果となった」と説明した。死亡確認は午後5時3分、死因は失血死とみられる。
同病院の外来処置室で、当初は10人以上、最終的には20人以上の体制で対応に当たった。福島教授によると、頸部前面の中央より少し右の部分に、5cmほど離れて2カ所の小さな傷があり、左肩前面に射出口と思われる傷が1カ所あった。銃弾は発見されていない。
救急隊が接触した時から心肺停止状態で、同大に到着時、救命はかなり厳しい状態だったという。外来処置室で蘇生的開胸術を行い、100単位以上の輸血を行ったが、「大量に出血し凝固する力を失っていた。いろいろなところから出血しており、完全に止血できたとは言えない。ある程度大きな血管はコントロールできたが、心拍は再開しなかった」(福島教授)。
(引用終了)
この会見から解る事は、演説台より下方から撃たれた2発目の銃弾(内容6発)のうち2発が後ろを振り向いた安倍氏の頸部に前から当たり、体内で(90度以上)方向を変えて1発は反対側の左肩前面に射出、もう1発が大血管を損傷して心臓に達して致命傷になった、という事実です。何故何かに跳ね返った如く90度以上方向が変わったか、本当は安倍氏が台の下に伏せってから上方から小型の銃器で別の者が撃ったのではないか、といった検証しようがない疑惑については触れないで置きます。
II. たまたま致命傷になったLow velocity wound
銃創には狙撃銃などの長距離射撃(400m以上)に用いる高性能炸薬を用いて、長い銃身(バレル)からライフリング(旋回)しながら発射される弾丸によるHigh velocity woundと、ピストルなど近距離から少ない炸薬で発射された弾丸によるLow velocity woundに分かれます。High velocityの方が、高速で旋回しながら組織を破壊するので射入孔が小さくても射出孔が大きく、致命的です。Low velocityでも近距離から撃たれた場合は致命的ですが、運悪く脳や大血管などを損傷しないと即死には至りません。しかし安倍氏はビデオを見る限り、倒れて直ぐに心肺停止に至ったことが解ります。
弾がどこに飛ぶか分からない様な自作の銃
現場ではAEDが用いられています。誤解している方も多いですが、AEDの大事な機能は心室細動の除細動のみでなく、脈を触れない状態が「心室細動」か「心静止」か、を正確に判断して「マッサージを続けよ」か「除細動を行う」かの指示をアナウンスしてくれる事です。この判断は医師よりも正確と言われています。騒然とした現場で脈も触れない状態であれば「心静止(停止)」か「心室細動」か正確に判断するのは困難で、AEDは極めて有用です。安倍氏に心マッサージを続けている事は「心停止」状態であり、AEDが「マッサージを続けてください」というアナウンスを行っていたことを意味します。周囲に血痕が見えない事から、小さい傷はあるものの、胸部を撃たれていない安倍氏が何故すぐに心停止に至ったのか、あの状況では判断できなかった事が伺えます。だから大学病院で救命手術が行われたと考えられます。
胸部に傷はなく、心停止に至りAEDが用いられた。
私は心肺停止で搬送されて亡くなる死亡例を月に20件以上検討していますが、月1-2例は心臓を出て直ぐの大血管の解離性動脈瘤や動脈破裂によるほぼ即死の例を見ます。多くは死亡後のCTで血胸(胸腔内大量出血)と心タンポナーデ(心膜内出血)で死に至っています。安倍氏は体内で変向した弾丸で、この胸腔内大血管損傷と同じ状態になって自分で台から降りる所までは可能であったけれどもその後直ぐに心停止に至ったと医学的には説明可能です。搬送された病院ではまずCTを撮って何が起こったか診断され、血管修復の手術になったと思われます。撃たれた事と関係のない、心原生の心停止であれば、内科的処置で救命の可能性もありました。血管損傷の修復には体外循環(vaECMO)を回しながら行うとしても、結果的に2万cc輸血した事は理解できます。
III. 襲撃の動機は脅迫?
メディアではやっと統一教会の名称を出しましたが、犯人は「母親の教会活動」による破産が犯行の動機という「まとめ」にしたい様で、繰り返しそう決めつけた報道をしています。統一教会は、教祖の文鮮明が死亡してから、4つに分裂して、激しく内部抗争を繰り返している、と言われています。
安倍晋三氏は祖父の岸信介の代からずっと兄弟分で、所属する 統一教会の主流派の 韓鶴子(ハン・ハクジャ、文鮮明の妻、今の教主)及び3男坊の文顕進(ぶんけんしん)派 のセクトに属している、とされます。一方対立する4男坊、5男坊派はそれぞれに勢力を伸ばしていて、特に5男坊派は武闘派(サンクチュアリ教会)で過激であると言われます。
この5男坊の文亨進(ジョーン・ムーン)のサンクチュアリ教会は、 アメリカの銃のメイカーの大手のひとつ、トンプソン社のオーナーで、母親と3男坊の文顕進派は、大砲の砲弾を作る会社を持っており、もうひとつの、4男坊派、は、ドローンのコントロール・チップの特許を持っているそうです(副島隆彦氏からの情報)。従って、統一教会の一族は米国の政治家達にも有形無形の影響力を持っており、安倍氏とトランプ氏(娘婿のクシュナー氏が統一教会と関係が深い)の早期会談実現を取り持ったのも統一教会であるとも言われます。犯人の山上徹也は少なくとも直系の統一教会の会員ではない(母親は会員と教会も認めた)とされますが、対立する派閥と関係があるかも知れません(ただの推測です)。
しかし殺傷能力が限られている自作の銃器で演説中の安倍氏を襲撃したのは、どこまで本当の殺意か分かりませんが、政治家への脅迫、脅しの効果は十分あったと思われます。今後今まで付き合いの深かった政治家の人達(日米ともに=日は日本会議の面々、米はヒラリー、ジェイク・サリバン、ビクトリア・ヌーランドなど)は、直系の統一教会とは距離を置かざるを得ないのではないでしょうか。