2001年9月11日の同時多発テロから10年が経過し、それに関する記念行事などがアメリカで行われました。テロがイスラム過激派組織アルカイダによって引き起こされたことは動かしようのない真実ですが、アルカイダという組織がどのようなパワーによって動かされているかについては解明されていません。
1945年エンパイアステートビル79階に米軍のB25爆撃機が濃霧のため突入し、火災となって14名が死亡した事故では建物が崩壊することはなかったのですが、貿易センタービルは旅客機が突入した結果、数時間でビルごと地階まで完全に崩壊してしまいました。また飛行機が突入しなかった離れた場所にある第七ビルも地階まできれいに崩壊してしまいました。(第七ビルは2006年にはリニューアル建て替えが済んでビルのホームページによると現在はファッションショー等華やかに使われているようです)
国防総省(ペンタゴン)にも同様に旅客機が突入しましたが、こちらは建物の一部が壊れただけで損傷の大きさも突入した飛行機より小さく済みました。しかしこれらの不自然なできごとについては公には疑問を呈してはいけないことになっており、罪のない一般市民を大量殺戮したイスラム過激派を殲滅するまで西側世界は戦争を続けることを誓い今日に至っています。
ともあれ、あの大きな貿易センタービルが一期に壊れてしまったことは事実であり、精神的な衝撃を受けた人々や、あの凄まじい粉塵をあびながら救助活動や後始末をした人々のその後の健康被害について危ぶむ声がずっと上がっていました。ランセットという有名な医学雑誌がありますが、その9月号に911に係わった人達の疾病や死亡に関する特集が組まれていました。なかなか興味深い内容でしかもしっかりした研究であることから、備忘録を兼ねて概要のみ記しておきます。
「911の短期及び中期にわたる健康への影響(lancet vol378,925-934:2011)」
救助や復興に携わった労働者で、早期から長期間携わった者ほど呼吸器系の疾患にかかる率が高い。また近隣の住民やビルの崩壊を目撃した者はPTSDなどの精神的後遺症が起こりやすく、薬剤使用の例が多かった。
「貿易センタービル救助者と復興従事者の多疾病持続について(lancet vol378,888-897,2011)」
救助や復興に従事した約5万人のうち27449人を対象に9年間経過を追って疾病発病調査した。喘息は27.6%、副鼻腔炎42.3%、逆流性食道炎39.3%、パニック障害21.2%、鬱27.0%、PTSD 31.9%が累積発症率として計測された。これらの発症率は貿易センタービルに暴露されていない集団よりも有為に高かった。
「911に係わった消防士の癌発生率(lancet vol378, 898-905,2011)」
911後7年間における癌の発生について係わった消防士について追跡調査した。係わっていない米国標準を1として年齢調整をすると、911に係わった消防士の癌発生率は1.10と軽度上昇していた。消防士同士での比較では係わった者の癌発生率は1.19であった。ただし白血病、リンパ腫、甲状腺癌、胃。大腸ガン、黒色腫の発症は標準の1.5倍の高さであった。
「911生存者のその後の死亡率(lancet vol378, 879-887, 2011)」
2003年から2009年の間に救助、復興に携わった13,337名のうち156名が死亡していた。また直接復興に携わらなかったがNY在住で健康影響に登録していた28,593名のうち634名が死亡した。救助、復興に携わった者の死亡率はその他の者に比べて低かった。その他の者については貿易センタービル崩壊現場に近い者ほど死亡ハザード比率が高かった(近くない者を1とすると中間は1.22、近い者は1.56)
これらの結果は特にセンセーショナルなものではありませんが、救助や復興に係わった者に呼吸器系疾患の累積発生率が高いというのはビルが粉々になって崩壊したことと関連が深いのだろうと推察されます。ある種の癌の発生が1.5倍というのはやはり何らかの原因物質が崩壊したビルに含まれていた可能性があるでしょう。ただアスベスト関連の中皮腫が高いという報告はなかったようです。