著者の増田直紀氏は複雑ネットワークの数理解析の第一人者だが,同時に何冊も新書版の啓蒙書を出版されている。しかし,新たに新書として出された本書はそれらの改訂版では全くない。本書には増田さんやそれ以外の研究者の最新の研究成果が紹介されており一読の価値がある。
本書のタイトルが示すように,三角形=三者関係の重要性が本書の主な論点である。情報の拡散だけを考えると,ハブから情報を流せば最も効率的だという話になる。しかし,説得・影響ということを考えると,自分の身近にある三角形がどのような状態にあるかが重要になる。
三角形はローカルに観察されるので,ネットワーク全体を知らなくても,個々人の視点で把握できる。それは各個人がネットワーク上での立ち振る舞いを戦略的に考えるうえで便利であるし,膨大なネットワークを分析しなくてはならない研究者にとってもありがたいことである。
本書では,北海道大学で複雑系を研究していた人々が立ち上げたサイジニアというベンチャー企業が,こうしたネットワーク理論をリコメンデーションに応用している例が紹介されている。この方法では,従来の手法よりも多様な商品を推奨することができるという。
本書の最後では,増田氏が日立と共同研究しているテンポラル・ネットの研究が紹介される。ビジネス顕微鏡と称する装置を身につけてもらい,従業員がリアルにどこで誰と接触したかを計測する。そうして把握された時間とともに変化するネットワークの挙動が分析される。
三者関係に関して推奨される方策に単純すぎるように思える箇所がたまにあるが,本書全体の価値を低めるものではない。スポーツチームの勝敗関係に対するページランクなど,他にも面白い話題に満ちている。マーケターがクチコミやコミュニティを考える上で必読の書である。
本書のタイトルが示すように,三角形=三者関係の重要性が本書の主な論点である。情報の拡散だけを考えると,ハブから情報を流せば最も効率的だという話になる。しかし,説得・影響ということを考えると,自分の身近にある三角形がどのような状態にあるかが重要になる。
三角形はローカルに観察されるので,ネットワーク全体を知らなくても,個々人の視点で把握できる。それは各個人がネットワーク上での立ち振る舞いを戦略的に考えるうえで便利であるし,膨大なネットワークを分析しなくてはならない研究者にとってもありがたいことである。
![]() | なぜ3人いると噂が広まるのか (日経プレミアシリーズ) |
増田直紀 | |
日本経済新聞出版社 |
本書では,北海道大学で複雑系を研究していた人々が立ち上げたサイジニアというベンチャー企業が,こうしたネットワーク理論をリコメンデーションに応用している例が紹介されている。この方法では,従来の手法よりも多様な商品を推奨することができるという。
本書の最後では,増田氏が日立と共同研究しているテンポラル・ネットの研究が紹介される。ビジネス顕微鏡と称する装置を身につけてもらい,従業員がリアルにどこで誰と接触したかを計測する。そうして把握された時間とともに変化するネットワークの挙動が分析される。
三者関係に関して推奨される方策に単純すぎるように思える箇所がたまにあるが,本書全体の価値を低めるものではない。スポーツチームの勝敗関係に対するページランクなど,他にも面白い話題に満ちている。マーケターがクチコミやコミュニティを考える上で必読の書である。