Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

箱根駅伝 いかに勝つか?

2012-02-20 09:00:04 | Weblog
年々注目度が上がっている箱根駅伝。参加する大学にとって,そこでの成績が大学受験者数に影響するといわれ,単なる大学スポーツではなくなりつつある。ぼくの勤務先である明治大学にとって,箱根駅伝での3位入賞と受験者数の3年連続日本一は偶然の一致なのだろうか?

箱根駅伝に出場すると大学の知名度アップになるし,人気が出て受験者の増加にもつながる。そうなると逆の因果関係が働き始め,大学の人気が上がるほど優秀な選手を集めやすくなる。その両方が繰り返されると好循環が生まれる。いまの明大はまさにそんな感じかもしれない。

では,箱根駅伝に出場し,上位に入賞しなくてはならないという使命に各チーム,それを率いる監督たちはどう応えていくのか?本書は,どの区間でどの選手を起用するかという戦術論から,人材の発見と育成,チーム作りに絡む組織論まで,多様な話題を掘り下げていく。

駒澤,東洋,早稲田の各監督へのインタビューも興味深い。特に駒澤の大八木監督へのインタビューには意外な印象を持った。テレビ中継では伴走車から選手を激しく叱咤激励するシーンばかり映るので,根性路線の鬼監督だと思っていた。実際はそんな単純な方ではなさそうだ。

箱根駅伝 (幻冬舎新書)
生島淳
幻冬舎

選手の各区への配置は思ったより複雑な問題で,時代による変化やチームごとの考え方の違いもある。各走路の距離や坂道の多さと選手との相性を考えるのは当然。往路ではだんご状態だが,復路では一人旅になりがちなので,どういう状況で力を発揮するかなども考慮される。

もちろん能力の高い選手を集めることが重要になる。ブランド力の点で早稲田が有利に思えるが,一人勝ちにはならない。推薦入学には制限があるし,選手層が厚いと出場機会が減ると考える選手もいる。最近は大学として一定の知名度を持つ明治や青学が台頭しているという。

長い箱根駅伝の歴史を振り返ると,強豪校に栄枯盛衰があることがわかる。強い大学には優れた選手が集まり,さらに・・・というポジティブ・フィードバックは短期では働いたとしても,中長期ではそうでもない。それは偶然のゆらぎで起きるのか,何か必然性があるのか・・・。

組織の成功が持続しないメカニズムがあるとすれば,ビジネスパーソンにとっても興味深いはずである。箱根駅伝の歴史をデータも駆使して分析し,それを解明する。さすがに本書はそこまでカバーしておらず,残された課題である。いつかそういう研究をしてみたいなぁ・・・。

(本稿は facebook における何人かの方との会話がヒントになっています。御礼申し上げます)