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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

衣笠祥雄監督とそのコーチたち

2011-03-06 13:37:32 | Weblog
「衣笠祥雄は、なぜ監督になれないのか?」―カープファンなら誰でも胸にしまってある疑問である。そして多くの人々が想定している答えは,本書が示唆する答えとそう違ってはいない。だが,真実はまだ明らかになっていないし,ある意味で誰にとっても明白な真実は存在しないかもしれない。

衣笠祥雄は、なぜ監督になれないのか?
堀治喜
文工舎

本書はまず,FA で広島を去っていった新井や黒田といった選手を取り上げる。記者会見での発言や報道記事から,彼らが広島カープから去った本当の動機を探ろうとする。その結論は,一度は優勝を経験したい彼らが要請するチームの戦力強化について,球団が真剣な対応をしなかったことにあるという。

著者の批判は,結果を出せない監督への甘い態度,内部出身者で固めたコーチ陣,以前にもまして大物を穫らないトレード,そして13年間Bクラスでも責任をとらない球団経営陣に向かう。シーズン最後にあれだけ黒田を引き留めながら,翌年の開幕戦では熱が冷めていたかのような地元ファンへも・・・。

こうした主張に共感するカープファンは少なくないだろう。著者は最後に,「夢の」監督・コーチ陣を披露する。確かにオールド・カープファンを魅了する顔ぶれだ。そのほとんどが,カープの黄金時代を支え,その後他チームにトレードで移った「反主流派的な」選手である(正田はちょっと違うが・・・)。

監督       衣笠祥雄
ヘッドコーチ   安仁屋宗八
野手総合コーチ  高橋慶彦
投手コーチ    江夏豊
         川口和久
打撃コーチ    江藤智
         金本知憲 引退後?
バッテリーコーチ 古田克也 →敦也?
内野守備コーチ  正田耕三
外野守備コーチ  長島清幸
二軍監督     古葉竹識

だが,高橋はロッテの二軍監督だし,長島も同じくロッテ,川口と江藤は巨人,正田はオリックスでコーチを務めている。みんな指導者としての経験に不足はない。こうしたOBの存在は,本来ならチームの資産といえるはずだ。プロ根性に溢れる彼らが,チームの士気を高めることは間違いない。

だが,それは結局,酒場で語られる夢物語でしかない。仮に球団のガバナンスに問題があるとしても,ではどうすればいいのか,そのあり方が見えない以上,批判は批判として終わってしまう。ソーシャルメディアを使った「ジャスミン革命」・・・なんてことが,ついつい頭をよぎったりする。

もちろんファンの意見は過激になりがちであり,球団にも言い分があるだろう。今年カープがAクラス入りでもすれば,ファンの怒りはたちどころに霧散する。特定企業の広告費に依存せず,独立採算を維持し,地域密着の先駆者であるカープの将来を,実現可能なイノベーションとして構想したい。

つまり,過去のあれこれ,恩讐を超え,未来志向で!