Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

心理学・認知科学の事典2冊

2010-06-08 21:22:46 | Weblog
最近購入した心理学・認知科学の事典を紹介する。まず『感情と思考の科学事典』。監修の海保博之先生と松原望先生は,それぞれ心理学,統計学(いまや計量社会科学といったほうがよい?)の大御所である。そして,個人的なことをいえば,ウン十年前に両先生の講義を受講しており,その後何度かお話ししたこともある(というか松原先生はぼくの修士論文の指導教員の一人でもあった!)。編集者の一人,竹村和久先生には学会で,しばしば貴重な指摘をいただいてきた。

さらにページをめくると,青木幸弘,杉本徹雄,星野崇宏,守口剛といった諸先生が執筆者一覧に並ぶ。星野さんは計量心理学者なので不思議ではないが,他の方々は消費者行動の研究者だ。感情と思考の科学というテーマでこれだけ「マーケ」系の研究者が寄稿していることは慶賀すべきことだろう。それはともかく,感情と思考を並列させている点がこの事典の面白いところだ。テーマごとにコンパクトにまとめられているので,拾い読みするだけで相当勉強になりそうだ。

感情と思考の科学事典
海保 博之,松原 望
朝倉書店

もう一つが『「学び」の認知科学事典』だ。こちらの執筆者はゴリゴリの認知科学者で固められているかのような印象を受けるが,そのなかに池上高志先生の名前がある。担当されている章は「学習における力学系/身体性/意識」と題され,なかなか魅惑的である。なお,こちらの事典のほうがやや小振りで,値段は半額だ。もちろん,カバーしている領域が違うので,比べてもしかたない。消費者行動あるいは行動経済学の研究者にとっても手元に置く価値がある2冊だ。

「学び」の認知科学事典
佐伯 胖
大修館書店