Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

OR は鳩山首相を救えなかった?

2010-06-02 23:07:14 | Weblog
今朝の新聞朝刊あるいはTVのワイドショーで語られていた予想に反して,鳩山首相が辞任した。いろいろ要因はあるだろうが,最後は「やはり」普天間問題が命取りになった。ぼくは以前,鳩山由紀夫氏が専攻していた Operations Research (OR) の観点からこの問題への「愚考」を述べたことがある。結局,OR は鳩山首相を救えなかったのだろうか?

OR は鳩山首相を救うか?
OR は鳩山首相を救うか Part 2

普天間問題の考えられる解の両極は,辺野古沖の埋め立てという「現行案」と,グアムあるいはテニアンへの「国外移設」だろう。鳩山首相は元々「駐留なき安保」が持論で,国外移設を理想と考えていたという説もある。いずれにしても,この両案の間に解がいくつも存在し,そのどこかに最適解があると考えていたのではないだろうか。

ところが,結果としてわかったことは,米国から了解を得ることを制約条件とする限り,実行可能な解は現行案かそのわずかな修正でしかない,ということであった。ただし,その案は沖縄県民の多数が受け入れるという制約条件を満たさない。つまり,この2つの制約条件を満たす解はないのだ。これらが制約として動かせない限り。

鳩山首相は結局米国の要求を優先させた。それに対して沖縄県民はともかく,本土の有権者の支持率もさらに下がったのはなぜか?県外移設を目指してもっと交渉しろということか?交渉の理論は,交渉決裂時に失うものが大きいほど交渉力が弱いことを教える。日本が米国に逆らえないのは,そうしたモデルで説明がつく。

多くの有権者はそのことをよく知っている(でなきゃ社民党はもっと支持されているだろう)。と同時に内心では沖縄県民への負い目も感じている。2つの制約条件の間で葛藤を感じながら,デフォルトとして米国への恭順を選択している。だから,この忌々しい葛藤に自分を巻き込んだ鳩山政権に対して,怨嗟の念が高まったのだろう。

同じような葛藤がメディアにあるだろうか?社説では日米関係強化のため現行案へ戻れと主張しながら,社会面では基地に反対する県民に同情する記事を書く。どちらも鳩山内閣を非難する点では一致するが,解については真反対の立場になる。それについて葛藤を感じている気配もない。それがメディアということか・・・。