Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

集中講義@筑波大学 1日目

2009-12-24 08:39:10 | Weblog
「マーケティングと消費者行動の複雑性」というテーマで,筑波大で集中講義を行った。クリスマスイブ前日の休日という条件ながら,50名近い学生が受講。予定した,選択モデルと基礎と応用,そしていくつかのアノマリーの説明を終える。線形効用関数の話しから始めることは,経営工学や経済学を専攻している大半の学生には問題なかったと思うが,そうではない学生には,なじみにくかったかもしれない。教壇から見た範囲では,居眠りしている学生はごく少数で,それなりに熱心に聴いていただいたように感じる。

標準的な選択モデルの想定が成り立たないケースというのは,理論的には面白いが,実務的にはどうでもいいように見える(そもそも標準的選択モデルすら実務でさほど重要でない,ともいえる)。実はそうでもない,と思うが,そこまでは授業で言及できなかった。もう1つ言い残したことが,属性分解的アプローチの問題だ。遠路東京から参加された,早稲田の院生中川さんがそこを質問してくれたので助かった。といっても,この限界を破る妙案はいまのところない。とりあえずは,交互作用項で対応するしかない。

そのあと,聴講に来た院生や昔の同僚たちと飲みに行く。Tversky や Kahneman らが「発見」してきた再現性の高い意思決定のバイアスは,行動経済学を通じて一部経済政策にも応用されつつある。バイアスのリストはさほど増えることはなく,この学派は成熟期に入りつつあるように見える。その神経科学的基盤を問う研究がさかんになっているが,一方で進化的基盤を問う研究があってもいいのでは・・・という話しを秋山さんたちとする。もちろん,大半はそんなことではなく,若い男女に相応しい(?)話題で盛り上がった。

次回は1月6日,今度は消費者間相互作用やクチコミ・マーケティングの研究を紹介する。あっという間にその日が来そうなので,準備を進めなくてはならない。その前に「年内」(厳密にはいつのことか不明)と約束した原稿を仕上げること。