Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

U な人,H な人

2008-10-15 10:13:54 | Weblog
ここ数日は,デザインやクリエイティビティに関する最近の研究動向を調べるのに「没頭」した。ビジネス界では重要性が増しているテーマだが,マーケティングや消費者行動の学術的研究ではどうかというと,これが思ったよりあるのである。もちろん,様々な分野でデザインを研究している人々は多数いるはずだし,心理学にも多くの関連する理論が存在する。

これからの自分の研究という意味では,属性やベネフィットに関する Utilitarian(功利的)vs. Hedonic(快楽的)という分類法が興味深い。この概念を初めて聞いたのは,何年前のことだろうか …第一印象は,実際に特定の属性をこの二つに分けるのは容易ではないし,属性は属性なんだから一括して扱えばいいんじゃないか,というものだった。

だが,この2つの属性への情動的な反応の違いを知るにつれ,この二分法はけっこう面白そうだと感じ始めた。これらは狩野紀昭氏の「当たり前品質 vs. 魅力品質」概念にかなり近いし,佐々木土師二氏の「合理性 vs. 情緒性」尺度とも関連していそうだ。だから,日本にはすでにある考えだと一蹴するのではなく,むしろ,これらの概念をさらに発展させることのほうが重要だと思う。

それはともかく,U と H の二分法は,様々な現象に適用できそうだ。たとえば政治家の分類。右であれ左であれ,思想性の強い政治家は H な政治家だ。麻生太郎はタカ派といわれるが,これまでの行動を見ても,吉田茂の孫という意味でも,U な政治家ではないだろうか。それに対して小沢一郎は,田中派出身という意味では U なはずだが,「原理にこだわる」点で H にも見える。

H な政治家はしばしば危険だともいわれる。しかし,U なだけではあまりに情けなく,U-H バランスが重要だ。米国をみると,オバマは H な印象で,対するマケインは完全に U だろう。米国民の多くはオバマの H な演説に酔いしれながら,U の能力について値踏みしているに違いない。政権を担うと U にならざるを得ないが,ときに H にふるまうことで支持をつなぎとめることになる。

さて,この二分法をぼく自身の人生に適用するとどうなるだろうか。これまで,あまりに U 過ぎたのではないか,と反省しないでもない。もっと H でなくては,と思う。いや,見方によっては,その逆が真実かもしれない。もっとしっかり U にならないと,そのうち破綻するおそれがあるよ,と。どっちなんだ? やはり,この二分法を使いこなすのは難しい。