Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

学歴で人生は決まるか?

2008-08-23 23:37:09 | Weblog
木曜は人間ドックに行く。生まれて初めて大腸の内視鏡検査を受ける。2時間ほどかけて腸内をまっさらにする。モニタに映る大腸の内側を眺める。胃と同様,酷使に耐えている健気なやつ。一時的にお掃除したことで,すっきりした思いでいるのか,寂しく感じているのか・・・。

金曜は,写真の撮影に行く。モニタ上に鮮明に拡大された自分の顔は,胃や腸以上にくたびれて見える。いつも,この顔を世にさらしているわけだ・・・。お店の人が Photoshop CS3 で顔のシミをとったり,左右のバランスを補正したりしてくれる。もっと・・・とお願いしたくなるが,全く別人になりすますわけにはいかない。

その帰りに買ったのが以下の本。学歴は容姿と同様,人を差別し,人生に喜びと悲しみを与える。学歴が容姿とは違うのは,偏差値という数値まで用意され,客観性を装っていることだ。この本の副題「偏差値と人生の相関」には,人生もまた一次元的な尺度で評価されるという響きがある。

学歴社会の真実 偏差値と人生の相関関係 (セオリーBOOKS)
セオリープロジェクト
講談社

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帯に書かれた「学歴(出身校)は人生を決めるのか?」という問いに,この本は明確に答えてくれるわけではない。東大卒にも勝ち組-負け組はいるという例をあげて,人生いろいろ,といいたそうではある。だが,読者はそんなことはとっくに知っている。知りたいのは「例外」ではなく「平均」なのである。人生に平均など意味はないとしても・・・。

この本の真ん中あたりに,大学のポジショニング・マップが出てくる。縦軸は偏差値だが,横軸はエネルギッシュ対スタイリッシュ。前者の典型が早稲田,明治,法政,関大,立命館・・・などで,後者が慶應,青学,立教,同志社,関学・・・などというのは,ありきたりの図式だが,学校評価に二次元性があることは意外に面白い。

  どういうわけか,この図で中央大が文字通り中央に置かれている・・・

この本に書いてあることを大げさにいうと,A大学を落ちて,それより縦軸でちょい下のB大学に行った人は,A大学にコンプレックスを抱く(逆にAに行った人はBを見下す)。だが,横軸の位置がずれると,そうした感情が起きにくい(いや,KはWを見下している,という説もないわけではないが・・・)。

学歴という差別化装置に,なぜ水平の軸ができるのか・・・ しかもそれは,それ以上多次元化しないように思える。なぜか・・・

学歴の序列を混乱させる要因に,地域差がある。関西では(あるいは他の地方で・・・)一流と評価されているのに,関東ではそもそもよく知られていないということに,関西の「一流大学」出身者は苛つくという。「地元」ではあんなに尊敬されているのに! こういうギャップは,世界レベルでも存在するに違いない。

学歴話は,うまく扱えばジョークとして笑えるが,ちょっと間違うと,地雷を踏んでしまう。だから注意しましょう,というようなことが,この本にも書いてある。深刻な話だが,見方によっては滑稽,だが度を超すと危険,だから隠れた愉しみとして「学歴本」「出身校本」が売れるのだろう。