Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

クロスセリングの深層

2007-06-24 22:53:29 | Weblog

昨日のDM学会で,クロスセリングの研究が不足しているというRust and Chung の議論を紹介したところ,より詳しいことを聞きたいと質問された企業の方がいた。確かに意外に聞こえるかもしれない。「紙おむつとビール」の神話以来,マーケットバスケット分析はデータマイニングの花であったし,アマゾンのリコメンにはぼく自身,しばしば助けられている。だが,現実には・・・このあたりは,ECの現場でも依然としてかなり重要な問題のようだ。

マーケティングサイエンスが,アイテム/カテゴリ横断的な選好を考えてこなかったわけではない。ただ,ぼくが知る範囲の研究は,既存の選択モデルの境界を少しずつ,あるいは恐る恐る拡張しようとするもので(科学としては正しい態度だろうが),ロングテール的状況にはとても対応できないように思われる。この大きなギャップは,選択理論を発展させる重要な契機になるかもしれない。

ぼく自身はこれまで,カテゴリを限定したうえで選好の「個人内」差異と「個人間」差異がどう変化するか,といったことに関心があった。ワインのテイスティング実験では,個人内の選好が一貫性を増していく条件を探ることができた。その一方で,個人間の差異の変化については全く補捉できなかった(選好の個人間異質性はマーケティングサイエンスのマントラであり,その形成過程や変化にについて何かわかれば画期的であるはずだが)。だが,もう一つ「カテゴリ間」という次元についても考えようとしている。破綻への道かもしれないが・・・。