Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

個体群動態の価値

2007-01-27 09:20:26 | Weblog
消費者間相互作用の研究会で,若き数学研究者,河内さんから「個体群動態の観点から見た流言のダイナミクス」を聞く。微分方程式モデルの基礎を理解するため,バクテリアの繁殖という簡単な例から始め,ロジスティックモデル,そして Lotka-Volterra モデルを平易に説明し,数理モデルの効用と限界を議論。最後にいよいよ,彼自身の流言モデルへ進む。

数学が得意でない聴き手にもわかりやすいプレゼンだ。数学的解析の可能性をとことん追求しつつも、セルラーオートマトンやエージェントベース・シミュレーションの価値も認めている。実証分析も視野に入れている。研究対象は生物学や社会学まで広いが,この研究会に熱心に参加されているので,マーケティングも含まれてくるとしたら,うれしいことだ。

個体群動態(population dynamics)は,個体間の相互作用から生じる振る舞いを記述するため,個体の異質性を最低限に抑えて,数学的に扱いやすいモデルを作る(とはいえ,変数を増やすとすぐに解析が困難になる)。現実には集団レベルのデータしかない場合があり,このアプローチはまさにそうした状況で力を発揮する。

クチコミがまさにそうだ。誰と誰の間をどういう情報が流れたかを正確に計測することは,特殊な状況を除き難しいが,世の中にどういう情報がどれぐらい流布しているかは,ネット上でおおまかに推測可能になっている。