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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

SMWS2014@箱根湯本

2014-10-05 21:29:56 | Weblog
ソーシャルメディア研究ワークショップ(SMWS)が、箱根湯本で開かれた。文理様々な分野の研究者や実務家が、ソーシャルメディアについて縦横に議論することを目的に設立され、今回で5回目になる。これまでの歴史を振り返ると・・・

第1回 鳥取大学
第2回 湯村温泉
第3回 松島温泉
第4回 道後温泉
第5回 箱根湯本温泉

  うーむ・・・なぜか温泉ばかりだ・・・



今回の参加者は、マーケティング系5人、社会学・社会心理学系2人、コンピュータサイエンス系3人、物理学系5人、という分布。基本的にはどなたも、データ分析や事例分析を通じて、ソーシャルメディアの諸側面を切り取ろうとしていた。

発表テーマを分類すると、最も多かったのが、何らかの意味で、ソーシャルメディア上の発言の時系列パタンを分析した研究だ。タイトルを列挙すると、以下のようになる。そのほとんどが、物理学系の研究者が取り組んでいる研究だ。

■ソーシャルメディアにおける集合現象
■ソーシャルネットワーク上での話題の拡散を推定する
■ヒット現象の数理モデルによるAKB選抜総選挙予測
■最新アニメ映画のヒット~ソーシャルメディアによるヒット要因分析
■大規模ブログデータを用いた書き込み数の予測手法の開発
■大規模ブログデータからの感情抽出

一方、ネットワーク構造に注目したものには、以下の2つがあり、いずれもコンピュータサイエンスの研究者の手による。ただし、そこでも時系列変化は扱われているし、上のグループに分類した研究でもネットワークを扱ったものはある。

■社会的イベント発生時のソーシャルメディアにおける反応の分類
■ニコニコ動画の創作ネットワークからみえてくるもの

一方、社会学・社会心理学系の発表では、サーベイ調査の分析結果が報告された。物理学者が、データに現れる規則性をできるだけシンプルな数理モデルで表現しようするのに対し、社会科学者は、社会的に有意味な仮説の検証を試みる。

■東日本大震災後の情報環境・情報行動が1年半後の適応に何をもたらすか

別の次元でいえば、今回参加されていた実務家による報告では、ソーシャルメディアに関わるビジネスの現場での問題意識が吐露された。数理モデルの対極としてこういう発表があることも、このワークショップの1つの特徴といえる。

■ソーシャルデータのビジネス環境
■顧客クラスタをベースとしたメールマガジンの出し分けと、その反応(結果)のご報告

狭い意味でマーケティング研究者といえる3人は、今回新たに提案された「自著を語るセッション」に登壇した。華麗なるデータ分析と地を這うような事例研究の狭間で、それらをつなぐ役割を果たすべきなのは、おそらく彼らだろう。

以下が、今回「著者によって語られた」著作:

類似性の構造と判断 --他者との比較が消費者行動を変える
澁谷 覚
有斐閣


キーパーソン・マーケティング: なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか
山本 晶
東洋経済新報社


マーケティングは進化する -クリエイティブなMaket+ingの発想-
水野 誠
同文舘出版


なお、私事になるが、今回で私はこのワークショップの世話人を退任した。自分より百倍優秀な後任を得て、この会の今後の飛躍が楽しみだ。その一方で、自分のソーシャルメディア研究は今後どうなるのか、という問題に直面している。

統計関連学会@東大(本郷)

2014-09-17 12:22:07 | Weblog
昨日は、東大(本郷)で開かれた統計関連学会に参加。「スポーツビジネスの計量分析:プレーヤーとファンの相互作用を探る」というセッションで司会と発表を行った。セッションの構成は以下の通り:

水野 誠(明治大)、石田 大典(帝京大):プロ野球球団と選手に関する選好意識調査とその分析・・・プロ野球チームへの「愛」は、球団-選手-ファンの間の適合性によって生じるという仮説を検証。現状では(残念ながら)本人-球団の適合性の効果のみ見出されている。

三浦 麻子(関西学院大学):ファン心理に関する社会心理学的研究:プロ野球ファンを題材に・・・プロ野球のファン心理をパーソナリティなどさまざまな角度から分析した研究。選手・監督への尊敬心が欠如しているなど、阪神ファン独自の特徴がいくつか浮き彫りにされる。

戸石 七生(東京大):プロ野球選手の生存曲線分析―「生え抜き」選手を中心に―・・・形式人口学の方法論を用い、プロ野球選手の入団から退団にいたる「寿命」について生存曲線が分析される。それを通じ、生え抜き重視か外部補強重視かという編成戦略の是非が論じられる。

稲水 伸行(筑波大)、坂平 文博(構造計画研究所):組織デモグラフィーによるチームのモデル分析・・・上述の研究で得られた選手の生存曲線を踏まえながら、チーム編成戦略の違いがもたらす長期的効果の差を、Axelrodを下敷きにしたエージェントベース・モデルで探る。

これらの報告に対して、非公式ではあるが、あらかじめコメンテータをお願いしていた東大の星野崇宏先生から丁寧なコメントをいただいた。時間の問題もありフロアからの質問・コメントが少なかった分、星野さんから多くの的確な指摘をいただき、誠にありがたく感じた。

(一見閑散としているように見えるのは大教室のせいかと。予想を超えた集客だったと思う)



実は、統計関連学会の大会に出るのは、ぼくも他の発表者も初めてであった。全体には、抽象的な統計理論や経済・ファイナンスのセッションが多く、自分にとっては完全アウェイな感じなのだが、今回はわれわれのものを含め、スポーツ関連のセッションが3つもあった。

同じ教室で午後にあった「スポーツ統計科学の方法論」では、野球やサッカーの詳細な記録を用いた、いわゆるセイバーメトリクス的な研究が報告されていた。画像データから自動的にコーディングするといった話を聞くと、スポーツ・データサイエンスの未来は輝かしく感じられる。

われわれとしては、一球一球の配球とか守備位置とかいった超ミクロを目指すよりは、選手の人事管理やファンとの関係性強化など、メゾレベルの経営的な問題をデータを用いて研究していきたい。それはビッグデータではないが、それなりのデータの蓄積が必要だ。



2014年ゼミ合宿@大原(千葉)

2014-09-15 13:30:12 | Weblog
9月8~9日は千葉県のいすみ市大原でゼミ合宿。とある事情で今年はゼミに2年生がおらず、4年の出席者が2人だけだったので、少人数の合宿になったが、それはそれでこじんまりしていい感じだった。3年は関東学生マーケティング大会、4年は卒論に向けた研究の進捗状況を発表した。

3年は2チームに分かれ、それぞれが「親子」と「恋愛」について研究している。というとまるで社会学だが、一応マーケティングや消費者行動の観点に立っている。4年の発表も含め、問題設定はどれもそれなりに面白い。あとは、その問題をどこまで深く掘ることができるか、だ。

ローデータを眺めてかなり強引に(それなりの)結論を導く学生もいれば、データにいきなり(ロジックをよく理解していない)多変量解析をかける学生もいる。その両方を行うことが必要なのだが、それはなかなか難しい。マーケティングのプロの世界でも、それは同じかもしれない。

いずれもまだ時間はある。いっそう奮起してもらうとともに、こちらの指導もぬかりなく行いたい。


Social Simulation Conference@Barcelona

2014-09-15 09:36:21 | Weblog
9月1日から5日まで、バルセロナ自治大学で開かれた Social Simulation Conference に参加した。会場となった大学のキャンパスは、バルセロナ市内のカタルーニャ駅から電車で約40分という郊外にある。校舎は全体に灰色っぽく、日本のどこかの大学に似ている感じがする。



この会議は European Social Simulation Association (ESSA) とともに Artificial Economics Conference と Simulating the Past to Understand Human History の共催で開かれた。最後のグループは、歴史学や人類学、考古学への Agent-Based Modeling (ABM) の適用を目指す。

冒頭の基調講演は『人工社会』で有名な Joshua Epstein から Rainer Hegselmann に代わっていた。だが、この交代は結果的に正解だったかもしれない。そこで取り上げられたのは、Schelling と同時期に(あるいは先立って)分居モデルと似たモデルを提案した研究者の話である。

その男の名は James Minoru Sakoda といい、日系米国人である。大戦中は米国内の強制収容所に押し込められた経験を持つ。1949 年に提出した博士論文で、すでに Schelling モデルに近いものを提案している。博論の指導教員になかに、グループ・ダイナミクスで有名な Kurt Levin の名前もある。

ただし、ジャーナルへの発表は Schelling が 1969 年(AER)で、Sakoda の 1971年( J. of Math Sociology )よりも早い。Hegselmann によれば、Sakoda モデルは Schelling モデルを部分として包含し、一般性が高い。実際にコンピュータを使って計算した点でも先進的だという。

その後の2人の人生は対照的である。Sakoda はいくつかの大学で教鞭をとると同時に、折り紙の普及で活躍したようだ(彼の名で検索すると、折り紙関係の記事が多数現れる)。そして、Schelling がノーベル経済学賞を受賞した 2005 年、Sakoda は亡くなった。

・・・とまあ、ABM に関心がある人間にとって、こういう学説史的(あるいは歴史こぼれ話的?)な話題は大変興味深いものである。講演の最後を、重大な発明(発見)をしながら無名で終わるためにどうすればいいか、という教訓で締めくくるあたり機知に富んでいる。

Micromotives and Macrobehavior
Thomas C. Schelling
W W Norton & Co Inc

個別の研究発表でもいろいろ興味深い話を聴けたが、最も印象に残った1つが Kenneth Comer の報告だ。zero-intelligence trader model において、エージェントが行動を起こす(活性化される)タイミングをどう定式化するかで、系全体の振るまいが変わる可能性が検討されていた。

ABM のモデリングは往々にして新規性だけを重視し、アドホックになりがちだ。そうではなく、過去の研究の流れを継承し、標準的なモデルをいろいろいじることで頑健性を調べる研究が、ABM が科学に貢献する道である・・・などということを考えさせられた。

日本からの参加者はけっこういて、私が聴いた範囲でも、サービスドミナントロジックに基づく顧客行動、空港でのチェックインの効率化、オンライン・コミュニティの盛衰、金融と実物経済のリンケージ、社会的ジレンマ、沈黙の螺旋など、様々なテーマが追求されていた。

私自身は、ポスターで "Simulating Value Co-Creation in B2B Financial Service: An Application of Empirical Agent-Based Modeling" を発表した。簡単にいえば、顧客満足→収益の変化という動的な計量モデルと、満足度の伝播という ABM を統合することを目指した。

とはいえ、まだ萌芽レベルであり、今後もっと発展させる必要がある。顧客満足や収益に影響する具体的なサービス・ドライバーの組み込み、従業員の意識や満足度の導入、など、まだやるべきことは山のようにある。Comer 氏が行ったような頑健性テストも必要だ。

以下の写真は本会議のディナー会場となったレストランから見える風景。隣りに座った、マドリードの北西方向にある小都市から来たという研究者と話すなかで、バルセロナの独立志向について話題にしたが、現時点で思えば、適切ではなかったかもしれないと反省。


最先端の「構造推定」について学ぶ

2014-08-30 10:59:11 | Weblog
最近、米国のマーケティング・サイエンスで1つの大きな潮流になりつつあるのが、構造モデリング、あるいは構造推定である。その分野で国際レベルで活躍されている、ニューヨーク大学スターンスクールの石原昌和先生を、昨夜のJIMS部会にお迎えし、話を伺った。

前半は構造推定に関するチュートリアル、後半は石原さんの最新の研究をご紹介いただくという構成でのセミナー。120分強の時間を、熱く語っていただいた。米国で学位を取り、教鞭をとられている石原さんにとっては、初めての日本語による講義、ということであった。



構造モデリングというと、心理系の研究者がよく使う SEM (Structural Equation Modeling) を思い浮かべる人もいるだろうが、別物である。構造推定は計量経済学で発展してきた手法で、産業組織論などで活用されている。ここで重要なのが「構造」という概念である。

「構造」をどう定義するかで、何が構造推定なのかの見方が分かれると石原さんはいう。私の理解した範囲では、分析したい行動主体の目的関数を明示的に定式化し、その最適化行動として実際のふるまいを記述していることが、「構造」を持つかどうかの分岐点のようだ。

経済学における構造推定では、さらに経済主体間の均衡が仮定されるが、マーケティング分野の構造推定では必ずしもそうではない。消費者側だけモデル化し、企業行動については、シミュレーションを通じて最適戦略を提案するアプローチがけっこうあるという。

また、消費者のモデルに心理学・行動経済学などで発見されたバイアスを導入する、といった研究も、もはや珍しくないようである。そこでは主体の合理的行動を仮定しているとはいえ、限定合理性を取り入れるという柔軟さを発揮して、現実への適合性を高めている。

多くのモデルが時間を超えた意思決定、つまり動的最適化を扱っているが、それすら必須ではないようだ。古典的な選択モデルでは、一時点の意思決定を最適化行動としてモデル化している。見方によっては、そういったモデルも「構造」モデルといえるかもしれない。

今回認識したこととして、変数の内生性 (endogeneity) を扱うことと構造推定を区別しなくてはならないことだ。内生性を扱わない構造推定もあれば、構造推定以外の内生性へのアプローチもある。上述の均衡云々もしかり。このあたりを混同して議論してはいけない。

さて、構造推定と Agent-Based Modeling を比較してみよう。対極にあるように見える両者だが、主体の意思決定について「構造」を仮定する、という点では共通している。大きな違いは、主体の行動を最適化の枠組みで捉えるか、stupid, simple に捉えるかにある。

ABM の強みは主体間の相互作用を明示的に扱える点だが、構造推定の強みはデータを用いた検証にある。それぞれ得意な適用領域が違うことを踏まえつつ、両者を架橋する試みがあってもいい。もちろんそれは、双方の研究者に歓迎されないことかもしれないが(笑

組織の世代交代~夏のカープ本から

2014-08-14 11:47:13 | Weblog
研究助成を受けたプロ野球球団研究の一環として、昨夜、研究仲間と軽いワークショップを開いた。私が属するグループはファンの意識調査の結果を分析、もう1つのグループはチーム編成のダイナミクスをエージェント・モデル化している。

後者の研究で、組織文化の伝承と適応、といった話題が出てきたが、もちろんこれを測るのは難しい。ただし、選手への取材や回顧録から、そのあり方を定性的に知ることはできる。その参考になりそうな、最近出た本を紹介しておこう。

まずは、巨人を中心に長年プロ野球を取材されてきたジャーナリスト、赤坂英一氏の新著。著者は広島出身で、生粋のカープファンでもある。かつて取材中に、カープベンチから「わりゃあ、どっちの味方や」と声をかけられたとのこと。

その赤坂氏が、古葉竹識、山本浩二、大野豊、達川光男から前田健太まで、新旧の監督や選手を取材(「敵側」として川相昌弘も)。興味深い話が満載だが、そのなかで特に強調されているのが、チーム内の世代間ギャップの問題である。

チーム最年長の横山竜士とマエケンの間に存在する、意識のギャップ。それは、昔からのカープファンと、最近球場を賑わせている新しいファンとの意識の違いにも対応する。組織文化という点では、一定の断絶があることになる。

広島カープ論
赤坂英一
PHP研究所

横山竜士は、かつてカープには他球団の選手が遠巻きにするような「怖さ」があったという。高橋慶彦は、それについて語る最適任者の一人だろう。彼は『赤き哲学』と題する自著で、強い時代のカープのプロ意識について熱く語っている。

ヨシヒコは、常軌を逸した練習量でスター選手の座を獲得する。彼の目からは、現在のカープの選手は歯がゆく見える。ファンのなかには、彼にベンチ入りしてほしいという声があるが、強かった時代の組織文化の再興を願ってのことだろう。

赤き哲学
高橋慶彦
ベストセラーズ

高橋慶彦が移籍したあとのカープは徐々に優勝から遠ざかり、いつのまにかBクラスが定位置になる。栄光の時代と現在をつなぐ時代に苦闘した一人が、前田智徳だ。彼が同じ世代の石井琢朗、トレーナーの鈴木卓也と3人で鼎談している。

天才と称賛された前田が味わったアキレス腱断裂後の苦闘は、想像を絶するものだ。本人は自ら多くを語りたがらないが、トレーナーであった鈴木や最後の数年同僚になった石井との対話によって、様々なエピソードが引き出される。

過去にあらがう
前田 智徳、石井 琢朗、鈴川 卓也
ベストセラーズ

もしアキレス腱の断裂がなかったらどうなっていたと思うか、という質問への前田の回答は秀逸だ。天才打者として野球人生を終えることの代償に彼が得たものの価値が、そこからほのかに見える。もちろん、私の主観的解釈として。

壮絶な練習とプロ意識に支えられた強くて「怖い」時代があり、個人としてもチームとしても苦闘した「辛い」時代があり、若手選手を中心に新たな人気を獲得した現在がある。そこに組織として、どんな流れと断絶があるのか。

戦うための組織として、ある意味で極限化されたかたちをとるプロ野球チームの内部変化を、数十年というタイムスケールで眺めることは、他の組織のマネジメントを考えるうえでも、示唆に富んでいると思う。それに、面白い。

北の大地で触れた社会心理学

2014-07-30 10:10:29 | Weblog
土日に北海道大学で開かれた社会心理学会大会に参加した。心理学会はもちろん、社会心理学会の本大会を聴講するのは初めてだ。マーケティングおける社会心理学の役割を考えると、遅すぎたといえる。

実際、マーケティングや消費者行動の研究は、認知的不協和理論や精緻化見込みモデルなど、社会心理学からさまざまな概念を借用してきた。実務面でも、マーケティング・リサーチの確立に社会心理学者が果たした役割は大きい。

様々な口頭・ポスター発表を聴いて感じるのは、そのテーマの多くが誰にとっても身近な現象を扱っていることだ。それにはいい面と悪い面がある。悪い面とは、自分には関係ないテーマだと「逃げる」ことができないことだ。

「政治行動」のセッションは、昨年来、経済政策と世論に関する研究に関与しているので、大変興味深かった。たとえば三浦麻子、稲増一憲両先生の発表では、「保守-革新」の測定の問題について、いろいろ考えさせられた。

最近の若者には、保守=共産党、革新=維新の会、という知覚があるという。マーケティングの立場、というか少なくとも自分の場合、人々がそう思うことを素直に受け取る。しかし、社会心理学者は、そう素直ではないようだ。

歴史的に形成された「保守-革新」の概念を、現在の若者がどこまで理解しているかが分析される。そうした方向の研究を新鮮に感じつつ、自分なら新しいイデオロギーの出現という方向で話を進めるだろう・・・などと考えていた。

朝8時から始まったキーノートスピーチに、時間を勘違いしていて5分遅刻。しかし、下條信輔先生の「社会脳」に関する講演は、いつもながら刺激に満ちていた。社会心理学への叱咤と激励が混じったメッセージと受け取った。

視覚のような、ほぼ生理的に見えるメカニズムにも、社会的交互作用が進化プロセスを通して与えた痕跡が読み取れる。つまり、広範な心理現象はほぼすべて社会的なのであり、社会心理学は心理学の一応用分野ではない、と。

それを受けて自分が勝手に妄想したのは、まず自律的な個人の意思決定があって、そこに社会的相互作用を加味するのではなく、そもそも社会のレベルに一体性があり、そこに裂け目が入って個人が生まれるというストーリーだ。

午後のワークショップでは、杉谷陽子先生の発表が興味深かった。ブランドの強さを悪いクチコミに態度が影響を受けにくいことと定義、ブランドへの態度を機能性と感情、感情をさらに憧れと親しみに分けるという枠組みである。

指定討論者の北村英哉先生が指摘されたように、憧れ-親しさの2因子は、下條先生がおっしゃっていた選好を規定するNovelty-Familiarityにも関連しそうである。ということは何か「進化的な基盤」がある話なのかな・・・と妄想。

杉谷さんは、製品の身体経験が、とりわけ親しさの因子を通してブランドへの態度に影響すると予想したが、実はすべての因子に影響したという。いずれにしろ、いま取り組んでいるプロ野球のファン研究にも参考になりそうだ。

最後に聴講した「文化進化」のセッションでは山本仁志さん、小川祐樹さんによる、アクセルロッドの文化伝播モデルに関する研究を除き、いずれも初耳。そんな研究があるのか、と社会心理学のスコープの広さに驚かされた。

技術の淘汰を伴う伝播を再現する被験者実験とか、集団主義の成立を国別の集計データを使って論じる分析とか、いずれも大胆な研究で、非常に面白かった。学の世界は広い。やはりときどき、他学会を覗くという旅が必要だ。

学会ではどうしても、自分好みの話ばかりつまみ食いして、栄養の偏りが出てしまうかもしれない。社会心理学について、一度きちんとした教科書を読み通す必要があると思いつつ、時間だけが経っていく・・・

社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
池田 謙一、唐沢 穣、工藤 恵理子、村本 由紀子
有斐閣

サービスは人間科学の触媒になるか

2014-07-25 13:13:37 | Weblog
最近、金融サービスの顧客データ分析に関わったり、プロ野球球団の研究を始めたりするなか、ブランド-顧客、企業-消費者という枠組みだけでは不十分だと認識している(サービス研究者からは「いま頃?」といわれそうだが)。

そんなとき、同僚の高橋昭夫先生から新著をいただいた(*)。「インターナル・マーケティング」に関する研究の過去と現状が包括的にまとめられた研究書だ。上述のような状況にある私の立場からして、導きの糸になりそうな書物である。

インターナル・マーケティングとは、組織内の人的資源管理(HRM)にマーケティングを適用したものだが、逆にみれば、マーケティングに HRM や組織論の視点を取り入れたものともいえる。つまり、一種の学際的融合分野であると。

インターナル・マーケティングの理論と展開―人的資源管理との接点を求めて
高橋昭夫
同友館

もちろん、実務家はマーケティングと HRM の意思決定をシームレスに行っているかもしれない。だとすると、そうした境界の設定にたいした意味はないことになろう。どちらの分野も、人間を研究するということでは同じなわけだし。

最近提唱されている「サービス・サイエンス」が、このような意味で、新たな人間科学の触媒になろうとするものなら、大変面白いことになる。果たしてどうだろう?

* 実際にいただいてから、多少時間が経っております^^;




この夏のマーケティング専門書

2014-07-24 14:06:54 | Weblog
最近ブログ更新をサボりがちであったが、夏休みを直前に迎え、ここ数ヶ月の間にご恵贈いただいたマーケティングの専門書を一気に紹介したい。

まずは、学習院大学の上田隆穂教授の還暦を記念して編纂された論文集。上田さんといえば「価格」の研究が思い浮かぶが、本書のタイトルは「リテールデータ分析」とされている。寄稿されている上田門下生の顔ぶれを見ると、その理由がわかる。

上田さん(「先生」と呼ぶと怒られるので、あえてそう呼ぶ)は最近、モンゴルを始めとするアジア地域の調査や、フードビジネスの研究でも活躍されており、守備範囲は本書を超える。いずれそちらの成果も出版されるに違いない。楽しみである。

リテールデータ分析入門
中央経済社

法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書として出版された『リレーションシップのマネジメント』は、同大学の社会人院生たちの修士論文を竹内淑恵先生が編纂されたもの。ブランド、サービス、地域活性化などを取り上げている。

ざっと拝見して、レベルの高さに驚かされる。最近、社会人大学院が増えているが、そこで修論を書く人々にとってベンチマークにすべき本ともいえるだろう。個人的関心でいえば「劇場」「シモキタ音楽クラスター」あたりの章に注目した。

リレーションシップのマネジメント
(法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書)
竹内 淑恵(編著)
文眞堂

法政大学といえば、そこで長年教鞭をとられた木戸茂先生が、小川孔輔先生を監修者として『消費者行動のモデル』を刊行された。マーケティング・サイエンスや消費者行動の主要なモデルが、一般的なソフトでの実行指南付きで紹介されている。

随所に木戸さんの研究成果も盛り込まれており、単なる概説書にはとどまらない個性的な本になっている。ぼく自身、マーケティング・サイエンスの「発展」を独断と偏見で振り返った本を出したばかりなので、本書は気になる存在である。

消費者行動のモデル (シリーズ・マーケティング・エンジニアリング)
小川孔輔、木戸茂
朝倉書店

・・・ということで、先月上梓した拙著もリンクしておこう^^;

マーケティングは進化する
-クリエイティブなMaket+ingの発想-
水野 誠
同文舘出版


エージェントは実験によって命を得る

2014-07-16 19:49:58 | Weblog
1週間ほど時間が経ってしまったが、先週、フランスはエクス・マルセイユ大学の花木伸行先生をお招きして、JIMSマーケティング・ダイナミクス部会を行った。台風が懸念されるなか、様々な分野の研究者が聴講に訪れた。

花木さんは、コロンビア大学の経済学研究科に留学されたが、実質的な指導教員は、スモールワールド・ネットワークの提唱者で有名なダンカン・ワッツであったとのこと。当時ワッツは、この大学の社会学部に籍をおいていた。

ワッツと研究を進めながら、花木さんは経済学部のなかでも理解ある教員たちに、自分の学位審査に加わってもらう。経済学に複雑ネットワークを持ち込む先駆的な研究によって、同大学から経済学の博士号を取得された。

その後、筑波大学で教えたのち、高名な数理経済学者であるアラン・キルマンの誘いで、現在の大学に移る。キルマンは若い頃、正統派経済学での業績で名声を得るが、その後、複雑系経済学に転じた異端の経済学者である。

Complex Economics: Individual and Collective Rationality (The Graz Schumpeter Lectures)
Alan Kirman
Routledge

さて、今回のセミナーの前半は、カウフマンのNKモデルを下敷きにした組織学習のモデルの発表である。想定されているのは、製品開発組織とのこと。各成員が知識を生成し、一部が組織知に組み込まれていくという設定。

自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)
スチュアート・カウフマン
筑摩書房

各成員は、自ら知識を探索(Exploration)するか、組織知を利用(Exploitation)する。その確率を変えたときの開発効果を見ると、タスクが複雑だったり、環境が頻繁に変化したりする場合、非線形なパタンを示すことになる。

具体的にいえば、複雑で流動的な条件下では、探索と利用の両極で、成果が高くなるのだ。つまり、知識創造型の組織は、(自分流にいえば)ボトムアップかトップダウンか、どちらかに徹すべきだということになる。

やはり、こういう非線形性が現れてこその複雑系でありエージェントベース・モデルだとつくづく思う。モデルの前提を変えたらどうなるか、別の解釈ができるのではなど、最後に来て参加者たちの議論も活発になった。

後半は、バブル発生の被験者実験の話で、以前、石川竜一郎さんに報告していただいた研究と同じ線上にある。今回は、バブルの原因にトレーダーの限定合理性と戦略的不確実性があることを示すのが主眼である。

この実験は、有名な実験経済学者バーノン・スミスまで遡る。彼はそこで戦略的不確実性説を唱えたが、その後の実験は、必ずしもそれを支持していない。花木さんたちは、周到な実験でその論争に決着をつけようとする。

花木さんはキルマン同様、伝統的な経済学が仮定する主体の合理性に否定的だ。ただそれは、実験によって明確に実証しない限り説得力を持たないという。そうした基盤の上に、エージェントモデルを構築すべきだという。

実験・行動経済学とエージェントモデルの相性のよさは前から感じていたが、それを自ら実践する最先端の研究を聞いて、改めて認識することになった。もう1つ感じたのは、「敵」に相応しい理論を持つことの重要性だ。

プロ野球ファンクラブ比較研究

2014-06-30 09:09:25 | Weblog
面白いことを考える人がいるわけで、本書の著者は、日本のプロ野球全球団のファンクラブに入り、その特典やファンとのコミュニケーションを比較するという偉業を10年にわたって実行した。本書はその集大成である。

各球団の CRM 活動としてのファンクラブは、球団によって異なるし、年々変化してもいる。そこで垣間見える各球団の戦略のちがいが面白い。球場で応援するのとは別の楽しみが、ファンクラブ加入によって得られる。

著者は東京生まれだが長年ヤクルトを応援している。しかし、全球団のファンクラブに入ることで、各球団へそれなりの親しみがわいてくる。巨人の金満的なファンサービスも、受益者になると好意へとつながっていくようだ。

プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた! ~涙と笑いの球界興亡クロニクル~
長谷川晶一
集英社

「わが」カープについては、一般向けのファンクラブの設立が他球団より遅かったり、特典がアイデアに満ちているがややプアであったり(著者はこれを「カープ・クオリティ」と呼ぶ)、あまり高くは評価されていない。

しかし、先ほどいったように、各球団のファンサービスはめまぐるしく変わっている。ファンクラブが相互に比較されることで、各球団のファンサービスの質が高まっていくなら、日本のプロ野球全体の発展につながる。

・・・とまあ、肩肘を張らなくても、プロ野球好きには十分楽しめる本である。


【拙著のご紹介】
マーケティングの基本的枠組みを押さえつつ、最新の実践や研究を紹介する入門書です。自分なりに、現在のマーケティング研究の最前線と課題を整理しました。

これからマーケティングについて本格的に学びたい方、すでに知識や経験を持つ実務家、マーケティングとの境界領域の研究者にも読んでいただきたいと願っています。

マーケティングは進化する
-クリエイティブなMaket+ingの発想-
水野 誠
同文館出版


JIMS@関西学院大学

2014-06-23 14:09:01 | Weblog
21、22日は関西学院大学で開かれた日本マーケティング・サイエンス学会(JIMS)研究大会に参加した。美しいキャンパスの広すぎる教室に、ぱらぱらと聴衆が座っている。そのアンバランスに、一抹の寂しさを感じる。

時刻を間違えて遅刻したが、今回の目玉の1つは、筑波大学の西尾チヅル先生の「環境マーケティング」に関するチュートリアルだろう。正しいテーマを選び、一貫して追い続ければ、価値の高い研究が生まれることを教えられた。

自分はといえば、2日目の朝一番、阿部誠、新保直樹両先生との共同研究を発表した。Twitter 上の影響伝播を分析したもので、昨年長崎で発表した内容を発展させたもの。今回はフォロワーに焦点を当ててモデル化している。

この研究で面白いのは、インフルエンサーの影響を受けるフォロワーの比率は限られるが、初期に活性化させるインフルエンサーの選択(seeding)を適切に行うと、かなり大きな効果が得られるという結果にある。

それはさておき、今回、ビッグデータということばをあちこちで耳にした。そして、ビッグデータの興隆は、マーケティング・サイエンスにとって好機であるとともに、脅威であるとということを考えさせられた。

ビッグデータを強く意識した発表としては、東北大学の石垣司先生らの「変分ベイズ法」を用いた研究があった。MCMC などより高速に計算できるので、ビッグデータの分析に相応しい手法だということである。

ただ、討論者の中島望先生は、選択モデルの枠組みを踏襲していないこと、コメントに立った星野崇宏先生は、変分ベイズ法に一致性がないことが統計学者に不評で、代替的手法が検討されていると指摘されていた。

中西正雄先生の「個人データによる小売吸引力の測定」に対する片平秀貴先生のコメントで、個人の移動や買物行動を捕捉したビッグデータが、新たな研究フロンティアを生み出していると指摘されたのも印象に残る。

そこで気になるのが、こうしたデータに、既存の確率モデルなり選択モデルをうまく適用できるか、だ。そうしたモデルは、限られたデータしかない時代に、強い仮定をおいて情報を汲み取ろうとする工夫のようにも思える。

不完全だが詳細なデータが溢れる時代には、モデルを緻密にすることより、Googleの自動翻訳技術のような、データ量を生かした力業が効果を発揮するかもしれない。自分流には、それも一種のボトムアップなアプローチである。

つまり、豊富な事例に「自ら」語らせるというアプローチだ。結局は、データやモデルに何を期待するか次第だが、大きな発想の転換を求められているのは確かだろう。ともかく、具体的に何をやってみるしかない。


Marketing Science Conference@Emory

2014-06-21 10:31:03 | Weblog
本日から日本マーケティング・サイエンス学会が関西学院大学で始まるが、先週参加した国際学会、INFORMS Marketing Service Conference のことを書いておこう。場所はアトランタの郊外にあるエモリー大学である。

実は、何年か前にも、この大学でこの会議が開かれている。そのときは、ランチがリンゴとパンだけだったとか、ホテルから炎天下歩いて行くのが大変だっとか、いい思い出がない。しかし、今回は気候も食事も問題なし。

下の写真のような回廊で各フロアを移動しながら、マーケティング・サイエンスの最新の研究動向を、主に social media、social influence というテーマを中心に拝聴した。このテーマ、例年のごとく、大変人気である。



この学会では、特に若手研究者は(必要以上にかどうかはともかく)自分が超高度な手法の使い手であることを競いがちなのだが、そうしたなかで(自分の個人的嗜好で)清涼剤のように爽やかな発表に出会うこともある。

それは、適切にしてシンプルなモデル・手法を使って、データから明快なパタンを導き出したような研究だ(自分の研究については棚に置く)。あるいは、現状は到達していなくても、大きなビジョンを掲げた発表とか。

ピッツバーグ大学のステファン氏の「フェイスブック・ゲノム・プロジェクト」は、ブランドページを大量に収集してエンゲージメントに影響を与えるパタンを見いだそうとするもの。タイトルが野心的で素晴らしい。

分析結果は、いろいろなパタンがありそう、というもので、そんなに明快ではない。進行中の研究でもあるし、今後に期待したいところ。一方、大量データを用いて、それなりに面白い発見をしている研究もある。

ペンシルバニア州立大学のリン氏の「ファッション学」という発表では、デザイナーブランドのウェブページを大量に集めて記述の類似性からネットワークを作り、掲載の時間的順序で「影響」の方向を推定している。

そうして作られた巨大な有向ネットワークから、最も影響力のあるデザイナーを推定、それはラルフ・ローレンだという。発表者はコンピュータ科学者だが、モデルの経験もあって、このテーマで研究しているという。

こうしたデータリッチな研究がいくつかあるものの、全般にはモデルリッチな研究が多い。自分の偏見を抑制すれば、それはそれで素晴らしいものがあって、そんな手法があるのかと勉強になったことは確かである。

最近、この学会の楽しみの一つは、米国で活躍する日本人研究者にお会いすることだ。今回は NYU の石原さん、バークレイの鎌田さん、あまりお話はできなかったがイェールの上武さんとお会いすることができた。

いずれの方も、バックグラウンドは産業組織論だったりゲーム理論だったり、つまり最先端のミクロ経済学だ。こうした分野からのマーケティングへの参入、あるいはモデルの輸出は、今後いっそう進むだろうと思う。

最後の時間に、慶応大学の院生である郷さんたちの発表を聴いたが、堂々たる発表で、日本の若手研究者の将来に不安はないことを実感した。問題は・・・そろそろ国際学会に疲れ気味の、自分のなかにあるようである。

この学会は、来年はジョンスホプキンス大学、再来年は何と上海復旦大学で開かれる。中国系の研究者の多さを考えると、上海での開催は不思議ではない。日本からの参加者は、そのときはいつもより多いのだろうか・・・。

クチコミ研究の「キーパーソン」

2014-05-19 14:40:51 | Weblog
マーケターにとって、クチコミやソーシャルメディアをどう活用するかは喫緊の課題である。学術的な研究が蓄積されつつあるとはいえ、実際のところ、役に立つような知識はあるのだろうか?この疑問に答える最適任者といえるのが慶応ビジネススクールの山本晶さんである。

山本さんは、さまざまな分野のアカデミックな研究者たちと研究を進める一方、企業との共同プロジェクトも積み重ねてきた。そこで接した実務家からの質問に対して、ご自分のそれを含む既存研究を踏まえながら、なるべく平易なことばで答えようとしたのが本書である。

本書には「キーパーソン」はもちろんのこと「共感フィルター」「メジャー感」「メディア縁」といった、著者独自のキーワードが登場する。これらは、実務家にはピンと来る、刺さることばであるに違いない。だから、本書の売れ行きが好調だというのは、納得がいく。

キーパーソン・マーケティング
: なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか
山本晶
東洋経済新報社

実は、来月末に開かれる学会で、現在進めている Twitter の研究について、著者にコメントいただくことになっている。そこには本書の主張と必ずしも一致しない結論が含まれる可能性があるので、フルボッコされないか、いまから戦々恐々である(むしろ楽しみにしている?)。

ご恵贈いただいた著者に御礼申し上げます。



「赤い研究」が始まる

2014-04-07 10:19:11 | Weblog
プロ野球が開幕。セ・リーグでは大方の予想通りジャイアンツが断トツのパワーを発揮しているが、カープも頑張って現在同率首位。明日からの3連戦で3連敗すると3ゲーム差になるが、1敗だけなら1ゲーム差で済む(3連勝なら大歓迎だw)。どうなることか ...

今年から、自分にとってプロ野球は個人的応援対象から本格的研究対象になる。親しい「カープ研究者」を糾合し、選手やスタッフのデータに対する組織論的研究、ファンのデータに対する消費者行動論的研究を秋の某学会で発表する準備が整った。あとはやるのみだ。

研究となると、情熱は秘めつつも客観的なスタンスが求められる(Cool head but warm heart …)。敵チームを応援するファンの心情を理解し、その球団の経営力のよい点を認めることが必要だ。そのことは苦痛だが、より高次の野球の楽しみ方を覚える契機になる。

また、学術的研究のつねとして先行研究のレビューが欠かせない。メンバーに集めていただいた論文はすでに膨大な数にのぼっている(スポーツ経営やスポーツ心理という従来からある学問の存在に加え、最近、スポーツの計量的・数理的研究は増える一方なのだ)。

そういう意味での必読文献ではないが、素のファンに戻ったとき、以下のような特集が出版されるカープの勢いに後押しされる。カドカワさん、ベースボールマガジンさん、ありがとう!

別冊カドカワ
総力特集 広島東洋カープ 2014
KADOKAWA/角川マガジンズ

週刊 ベースボール
2014年 4/14号
ベースボール・マガジン社