キッチンスタッフで一番の腕利きヘッドシェフ、クトゥさんが出勤して来ない
彼女が時間を守らないことはめったになくて、万が一遅れる時は必ず電話してくるか、別のキッチンスタッフとシフトをチェンジ済ませてる
「クトゥさん来ないね、どーしたんだろーね?」
もうすぐランチだから忙しくなるんだけどなー
他のスタッフとフロア越しに道路を眺める
「プン、クトゥさん事故にあったらしいから、今から病院行ってくるわ」
勤めて冷静に告げるダンナ…
「え!」
私は「事故」って2文字が頭をぐるぐるかけめぐり、もうすっかり取り乱してる
数日前にあんな事故現場を見たばかりだもん、冷静でいられるわけがない
「で、どんな状態なのよ、ど、ど、どうして?何があったの?」
「通勤途中にトラックに巻き込まれたらしいんやけど、細かいことはわからん」
トラック?
巻き込まれた?
めまいがした
バイクとトラック…勝ち目はない
「意識はあるらしい」
意識があったって、どーなのよ!
でも私自身、こんな時の自分の習性は良くわかってる
怪我している相手を前に、涙が止まらなくなって、当人に気遣いをさせちゃうんだから…
「わかった…私が病院に行ったら大泣きするから、行ってきて…」
キッチンスタッフの新顔プトゥラの案内でダンナが、ギャニャール県で一番大きな総合病院へ向かう
総合病院っていったって、外国人向けではない病院のレベルは知ってる
ちゃんとした診察、治療が受けられるのかなぁ…
クトゥさんは、出勤途中に大きなトラックと接触して、顔から地面に叩きつけられたものの、幸い頭部への被害はなく命はとりとめた
腕や足は強打のうえに、衝撃でヘルメットが脱げたため、顔にもひどい打撲と擦過傷が…
「クトゥさんか誰だかわからなかったです」
プトゥラが辛そうに言う
「顔半分パンパンやぁ、痕にならなかったらええんやけど…」
クトゥさんは少し前に彼ができたばかり
自分よりもカーストが高い男性で、大きな体と優しい性格なのを自慢してた
夜のシフトの時にはバイクで迎えに来る
仕事のときは皆のお姉さん的存在のクトゥさん
気がつけば、私も彼女だけはさん付けで呼んでいるくらい頼りになる
でも彼の前ではカワイイ一人の女性
健康そうに日焼けした、大きな彼の背中につかまりながら、笑顔で手を振っていた…
この事故で万が一彼女の顔が変わってしまうようなことがあっても、彼女を捨てないで欲しい!
幸せそうなクトゥさんの、あの笑顔を壊さないで…
「相手の運転手は逃げてしまったらしくて、今みんなで探してるんやて」
ぬあんだとーーーーーー!
逃げたぁ~?
許せん!卑怯モノめ!
私の怒りは頂点に達していたけど、だからって犯人逮捕ができるわけも無く、その時の私達は、彼女の若い細胞が損傷修復に頑張ることを祈ることしかできない…
彼女が時間を守らないことはめったになくて、万が一遅れる時は必ず電話してくるか、別のキッチンスタッフとシフトをチェンジ済ませてる
「クトゥさん来ないね、どーしたんだろーね?」
もうすぐランチだから忙しくなるんだけどなー
他のスタッフとフロア越しに道路を眺める
「プン、クトゥさん事故にあったらしいから、今から病院行ってくるわ」
勤めて冷静に告げるダンナ…
「え!」
私は「事故」って2文字が頭をぐるぐるかけめぐり、もうすっかり取り乱してる
数日前にあんな事故現場を見たばかりだもん、冷静でいられるわけがない
「で、どんな状態なのよ、ど、ど、どうして?何があったの?」
「通勤途中にトラックに巻き込まれたらしいんやけど、細かいことはわからん」
トラック?
巻き込まれた?
めまいがした
バイクとトラック…勝ち目はない
「意識はあるらしい」
意識があったって、どーなのよ!
でも私自身、こんな時の自分の習性は良くわかってる
怪我している相手を前に、涙が止まらなくなって、当人に気遣いをさせちゃうんだから…
「わかった…私が病院に行ったら大泣きするから、行ってきて…」
キッチンスタッフの新顔プトゥラの案内でダンナが、ギャニャール県で一番大きな総合病院へ向かう
総合病院っていったって、外国人向けではない病院のレベルは知ってる
ちゃんとした診察、治療が受けられるのかなぁ…
クトゥさんは、出勤途中に大きなトラックと接触して、顔から地面に叩きつけられたものの、幸い頭部への被害はなく命はとりとめた
腕や足は強打のうえに、衝撃でヘルメットが脱げたため、顔にもひどい打撲と擦過傷が…
「クトゥさんか誰だかわからなかったです」
プトゥラが辛そうに言う
「顔半分パンパンやぁ、痕にならなかったらええんやけど…」
クトゥさんは少し前に彼ができたばかり
自分よりもカーストが高い男性で、大きな体と優しい性格なのを自慢してた
夜のシフトの時にはバイクで迎えに来る
仕事のときは皆のお姉さん的存在のクトゥさん
気がつけば、私も彼女だけはさん付けで呼んでいるくらい頼りになる
でも彼の前ではカワイイ一人の女性
健康そうに日焼けした、大きな彼の背中につかまりながら、笑顔で手を振っていた…
この事故で万が一彼女の顔が変わってしまうようなことがあっても、彼女を捨てないで欲しい!
幸せそうなクトゥさんの、あの笑顔を壊さないで…
「相手の運転手は逃げてしまったらしくて、今みんなで探してるんやて」
ぬあんだとーーーーーー!
逃げたぁ~?
許せん!卑怯モノめ!
私の怒りは頂点に達していたけど、だからって犯人逮捕ができるわけも無く、その時の私達は、彼女の若い細胞が損傷修復に頑張ることを祈ることしかできない…