ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/01/19 新春浅草歌舞伎第二部②愛之助×七之助の「切られ与三」

2008-01-24 23:58:15 | 観劇

「切られ与三」を観るのは3回目。以下、過去2回の感想。そして今回は前評判も上々の愛之助×七之助!
仁左衛門×玉三郎 海老蔵×菊之助
【与話情浮名横櫛】
あらすじは上記の記事にあるので省略。
今回の主な配役。
与三郎=愛之助 お富=七之助
鳶頭金五郎=獅童 蝙蝠安=亀鶴
和泉屋多左衛門=男女蔵 番頭藤八=松之助
「木更津海岸見染の場」
浅草公会堂の3階席は花道がかなり見えるのが嬉しい。七之助のお富の登場で客席がどよめく。私の視界にも入ってきた!美しい~!!菊之助も綺麗だったが健康的な美しさ。七之助の方がお水っぽい美しさのような気がする。侠客に身請けされて妾になっているという女にふさわしい仇っぽさ。小山三が下女としてついてきているのが嬉しい。小さな頃から世話をしてきた七之助がこんなになって小山三もさぞ嬉しいだろうなぁとか勝手に思いながら見てしまう。
七之助は玉三郎に教わってつとめているというが、雰囲気が玉三郎そっくりだ。七之助の女方を初めて見た時からそう思ってきたのだが、玉三郎の若い時はこんな感じだったのかもという気がして仕方がない。女方としての色気が増しつつある七之助、本当にいい若女方になったなぁと思った。これなら与三郎が見とれて羽織が落ちても気がつかないほどというのも無理がないと思える。

愛之助の与三郎が獅童の鳶頭金五郎とともに登場すると二度目のどよめき。愛之助の台詞回しは仁左衛門そっくり!大店の若旦那らしい軟らかさが出せるのがいい。海老蔵の時はやっぱり無理かぁだったが、二人のニンの違いだろう。
花道の七三で浜から来た男とぶつかって「誰かに似ているねぇ」~「よっ松嶋屋」とかのやりとりがあるのだが、ここで羽織の片方の襟がぐっと下がりすぎた。そこで初めてここで下げておく段取りなんだとあらためて気づいた。下がりすぎが私は気になりつつだったが、直さずに舞台へ。
与三郎とお富が浜で偶然ぶつかって、目が合っての一目ぼれ。仁左衛門×玉三郎の時とは違って、なんとも可愛らしい恋の芽生えって感じがいい、可愛いぞ可愛いぞ。この可愛さは愛之助の和事の立役のなんともいえない可愛さがあるからだと思う。何度「可愛い」って書いてるんだろうか(^^ゞ
この可愛さに心引かれた七之助のお富が立ち止まり、下女とのやりとりの中で「いい景色だねぇ」とごまかす。七之助の声がいい(若手の女方の声では菊之助と並んで美しい)。それとこの場面は「梅ごよみ」の仇吉が船べりに立って丹次郎を見初めた時と似ているんだなぁと気づく。歌舞伎って受ける場面は使い回すんだなぁ。

舞台で見とれている与三郎。なで肩に引っかかっていた羽織がするすると滑り落ちる。この肩は女方を長くつとめた愛之助ならではという気がする。金五郎に羽織を拾われて指摘されて「知ってるよ」という声の可愛さ。しっかり裏返しになっていても見とれ続けるという茫然自失。やっぱり愛之助、可愛い。ミーハーモード全開でごめんなさいm(_ _)m
獅童の鳶頭も好演。
「源氏店」
お富の風呂帰り姿も一層色っぽい。番頭藤八とのやりとりはポンポンときっぱりしていて元深川芸者というのがわかる。藤八にせがまれて塗った白粉は玉三郎の時は「資生堂なんですよ」と言っていたが、今回は「芝居用の白粉なんですよ」だった。こっちが台本通りなのかな(笑)
亀鶴の蝙蝠安と連れ立って愛之助の傷だらけの与三登場。流し目のカッコいい亀鶴がきったな~いこんな役じゃ勿体ないよ~と思いつつ、上方歌舞伎役者どうしの共演が多いのか息が合っているのはいい。

「ご新造さん、おかみさん、イヤサお富、久しぶりだなぁ」~の与三の名台詞。愛之助は若手なのに音の上げ下げを伴う台詞回しも安心して聞くことができて、惚れ惚れした。これを楽しみに夜の部だけ観に来たのだ。満足~。
多左衛門が登場。父の持ち役をつとめる男女蔵。世話になっている多左衛門の前で与三を兄だといいつくろうお富。多左衛門が出かける間際に渡した守り袋?で兄妹とわかり「お前が兄さん!」。その真実をお富は与三郎に告げ、二人は多左衛門が出て行った方向を向けて拝むようにしながら、晴れて成就した恋の喜びが湧いてくる。

そうか、幕切れはこういうことだったんだ!これまで2回とも面白くない芝居だと書いてきたが、3回目にしてようやくこの芝居の面白さがわかったぞ。歌舞伎って何回も観るうちに面白さがわかってくる演目が多いのだが、これもそうだった。

「金閣寺」もこれも予想を上回る充実度!筋書は買わなかったが、雪姫の亀治郎と七之助と小山三のツーショットの2枚の舞台写真を買う(愛之助の可愛さが舞台写真では味わえずに見送り)。
るんるんと浮き立つ気分で帰る。芋の菓子屋さんで1個まるごとの焼きリンゴにスイートポテトを詰めた「アップルポテト」を思わず娘への土産に買ってしまった。私は観劇時には基本的には家族への土産を買わないのだが、ここまで浮き立った浅草歌舞伎だった。

写真は公演ポスターを撮影。チラシはヨコ版でこちらはタテ版。写っているみんなの表情・ポーズが少しずつ違うのがいい。誰はどっちの方が写りがいいとか楽しめる。いいんじゃない?!
第二部①亀治郎の雪姫+亀鶴の挨拶