この冬の私にとっての初雪。雪だから浅草歌舞伎の雪姫の感想を書こう。
「金閣寺」を観るのは4回目。雪姫は雀右衛門→福助→玉三郎、そして今回の亀治郎だ。感想を書いてあるのは玉三郎の時だけなのだが、今回は書く気十分!
2007年1/23歌舞伎座夜の部「玉三郎の雪姫」の記事はこちら
【祇園祭礼信仰記 金閣寺】
あらすじは上記の記事にあるので省略。
亀治郎の雪姫以外の今回の主な配役は以下の通り。
松永大膳=獅童 此下東吉=勘太郎
狩野之介直信=七之助 十河軍平実は佐藤正清=男女蔵
慶寿院尼=亀鶴 松永鬼藤太=いてう
獅童の大膳は初日あたりの評判が今ひとつようだったが、この日はなかなかどうして立派だった。国崩しの王子の鬘と悪役の拵えがよく似合う。獅童は大敵役を精進すると大歌舞伎の中で成功しそうな気がする。台詞回しも時代物風ではなかったけれどしっかり聞き取れた。私が一番最初に観た雀右衛門の雪姫の時の幸四郎の大膳よりもはるかに聞き取りやすかった。歌舞伎絵のようなメイクが映える顔だと思うし、もっと歌舞伎を本腰を入れて頑張って欲しい。
弟鬼藤太役のいてうは弟子らしいが、兄弟の囲碁の場面のやりとりも予想よりはかなりよくて、いい感じのすべりだし。
さて、いよいよ上手の屋台の障子が開いて亀治郎の雪姫が現われる。うっ、美しい~。それと雀右衛門そっくり!3階席から双眼鏡でしっかり見たが、目に入れた朱の形がおんなじだぁ。今回は雀右衛門に教わってつとめるとのことで、楽屋に雀右衛門の写真も飾っているという情報も聞いていたが、亀治郎の凝り性に感動。雀右衛門の雪姫は一回しか観ていないのに、亀治郎の雪姫のしぐさや動き方でふっと雀右衛門を思い出す。丸々そっくりなのだ。ここまで写してくるとは思わなかった。雀右衛門から亀治郎へという伝承が目の前でこの雪姫として動いている。そのことに胸が熱くなりながらの観劇。
勘太郎の此下東吉が生締頭、瓢箪柄の裃姿で出てくると、これも立派になってと感慨深い。吉右衛門の此下東吉の立派さにこの役の良さがわかったのだが、この座組の中で勘太郎は負けていなかった。「遅れをとること大嫌い~」が心地よく響く。
男女蔵の十河軍平実は佐藤正清も立派でよく、東吉と大膳の囲碁を軍平が見守り、雪姫が後ろ姿でうなだれているという場面も、これが浅草歌舞伎なのかという充実感でいっぱい。
大膳が倶利伽羅丸を取り出して滝に竜の姿を浮かばせるので、大膳こそ父の敵と知れて討とうとするところの凛々しさもいい。雪姫ってやっぱり三姫の中でも一番私好みかもとか思ってしまう。しかしながら非力。大膳に足蹴にされる姿もしっかり極まる~。
そして雪姫が縛られるのは玉三郎の時(文楽通り)と違ってやっぱり上手の桜の樹。雪姫が夫直信を意識して見ていた上手から縛られた七之助の直信が出てくるところは、上手どうしだとちょっと不自然だなぁと思いつつ、まぁ歌舞伎で定着してしまった型だからありかなぁと我慢。それよりも黒の着流し姿では七之助のあまりの華奢さが目だってしまい、ちょっと可哀相な気がした。
ドカ雪のように桜が散るのは雀右衛門襲名披露公演の時からだと『サライ』の雀右衛門の記事にあった。それがもう当たり前になってしまっているのねぇと妙に感心。
爪先鼠のくだりの亀治郎の身体の動きはすっきりしない感じがしてしまう。差し金の先についた鼠が縄を食い切ると身体が割れて中から花びらがまた盛大に撒かれるのを見てうまい仕掛けだなぁとあらためて感心。そういえば今年の干支だし、正月の演目にぴったりだと思った。
陣羽織姿にあらたまった東吉に促され、刑場に向かった直信を追っての花道の引っ込みでは刀が鞘走ったことに気づいて刀身で身づくろいをする型。玉三郎は大事な刀をしっかり袋にしまわずに走り出すことはありえないという解釈。その差もしっかり味わえるようになったのが嬉しい。
勘太郎の東吉は金閣寺の楼上へと下手の桜の樹を登る。その身の軽さが好ましい。姿を現した亀鶴の慶寿院尼。2年前の「御所の五郎蔵」でも留女をやっていたことを思い出す。
浅草の間口の狭い舞台でも金閣寺の大道具がちゃんと下がり上がりして、贅沢だなぁと嬉しくなる。再び階下になると東吉の軍勢に踏み込まれて槍を振り回して抵抗する大膳が登場。軍平も実は東吉がスパイとして送り込んでいた佐藤正清として花道から登場し、立役3人が絵面に極まっての幕切れとなる。獅童・勘太郎・男女蔵ともしっかりと拮抗していて、満足~。
先に昼の部を観た玲小姐さんから「浅草はもう新人公演じゃないよ(2年前は宝塚の新人公演みたいだとしゃべっていた)」と興奮冷めやらぬ報告があったが、納得の舞台だった。
【お年玉(年始ご挨拶)】=中村亀鶴
亀鶴の切れ長の目はかなり魅力的。「盲長屋梅加賀鳶」で亀鶴の御守殿門次のアップの舞台写真にクラクラして買ってしまったことを書いたが、今回も袴姿にニマニマしてしまった。大阪での歌舞伎鑑賞教室とかで慣れているような感じで、客席を巻き込んで拍手の仕方教室を始めてしまった。大道具のツケ打ちさんも紹介。ツケが打たれるところで拍手すれば間違いないという初心者向けのレクチャー。客席に降りるようで階段に向かったと思いきや、袴姿でトンボを切って降りたのでビ、ビックリ~。ご贔屓度なおさらアップ。
着物姿のおばさまを指名して見得も伝授。大きな封筒に入ったプレゼントを渡してた。サイン入り色紙かなぁ。いいなぁ、最前列(^^ゞ
写真は公式サイトからの公演チラシの画像。
第二部②愛之助×七之助の「切られ与三」
2001年に観たっきり、去年まで全然興味なかったんですけど(笑)
今年はお得感満載でした。
「金閣寺」は偶然、大阪で文楽を観て来たので、
”違いチェック”をいい加減にやってみたりして、楽しみました。
亀ちゃんの雪姫を、まさか観られるとは思ってなかったので嬉しかったです♪
亀ちゃんは、メイクがジャッキーだったのですね!
でも、雀右衛門はあんなに動かないけど(笑)
ハートはまさしく京屋譲りとみた!
次の木更津~愛之助だと全く江戸者に見えない、関西の海辺?むずかしいのねこの狂言は・・・
亀治郎の雪姫は雀右衛門に生き写しでしたね。声は低音のところがやっぱり伯父さんに似ていると思ってしまいますが、姿はもうビックリでした。
雀右衛門の雪姫、一回しか観ていないのに目の前に彷彿としましたもん。メイクもすごく似せていて、凝り性の亀ちゃんらしいと思いました。こうやって先輩たちの型をなぞりながら、やがて自分のお役にしていくんだなぁと胸が熱くなりました。
ドカ雪じゃない桜も襟の中にもドバっと入っているのが見えましたが、雀右衛門の襲名公演以来の伝統らしいですね。
他のメンバーもすごくよくて、浅草歌舞伎は新人公演の域を超えたなぁって感慨深かったです。
(注)かしまし娘さんの記事は名前をクリックすると読んでいただけますのでご紹介m(_ _)m
★さちぎく様
まさに雪の日に雪姫観劇だったんですね!
>なんか歌舞伎座より面白かったわ......昼の部は吉右衛門の「一条大蔵卿」面白かったですけど、5演目というのでなんか長くて疲れました。浅草は2演目でどっちもよかったから確かに満足度が高かったです。
>花道脇に補助席......これは劇場の構造からかなぁと思ってます。花道を設置するためにはずさないといけない固定席が多すぎて、パイプ椅子席つくらないと席が減りすぎて勿体ないからじゃないかという推測です。勝手に推測してますけど(笑)
>愛之助だと全く江戸者に見えない......うーん、そのあたり、今の役者で江戸者に見せられる役者は誰だろう。仁左衛門はちゃんと見えてますよね。愛之助は江戸弁が難しいって自分でも言っているから、自覚はしているでしょう。日本語のバイリンガルめざして頑張ってもらいましょう。
TB一旦は不調で出来ませんでしたが、今度はうまく行きましたので、二本うちました。
今年は亀治郎さんが復帰したこともあったと思うのですが、大変充実した演目揃いでしたから、本当に歌舞伎座より熱気溢れる舞台だったと思います。
亀治郎さんの雪姫は期待以上の出来で、よくあれだけ雀右衛門さんの教えを吸収したものだと感心しました。
勘太郎、七之助のお二人も大変レベルの高い演技でした。愛之助さんはたしかに江戸者に見えない点はありますが、仁左衛門さんに似ている部分を克服して行くことによってこれからますますよくなって行くと思いますね。
亀治郎は驚くほど雀右衛門生き写しの雪姫でした。さちぎくさんご紹介の葵太夫さんのブログの情報によると、亀治郎は楽屋に雀右衛門のお写真を祀ってという徹底ぶりだったということだったので、きっと若い頃の雀右衛門の雪姫の映像とかもあるだけ全部チェックして直接の稽古にのぞんだんじゃないかと推測してしまいました。
勘太郎の東吉も立派でしたし、男女蔵も好演でした。
次の「切られ与三」へもTB成功で有難いです。今年の浅草歌舞伎は予想以上の充実した舞台で、しっかりと堪能できて大満足でした。