ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/06/26 歌舞伎座千穐楽夜の部②「盲長屋梅加賀鳶」

2007-06-27 23:59:27 | 観劇

「盲長屋梅加賀鳶」は2003年7月の猿之助主演の公演を幕見で観たのが初見。河竹黙阿弥の人気作だというが、本格的に歌舞伎を観始める前だったし、イヤホンガイドも使わなかったしで、なんだかよくわからなかった。花道での勢揃いも姿は一人目くらいしか見えないし何を言っているのかさっぱりききとれなかった。後半の按摩道玄の話はわかったけどあまり面白くなかった。今回はしっかりイヤホンガイドも利用。いろいろ読んでいったらまぁ同じ話と思えないほど「なぁるほど~」状態でけっこう面白かった。
たとえば「歌舞伎美人」サイトで「大名火消し」とは
【盲長屋梅加賀鳶】
本郷木戸前勢揃いから赤門捕物まで
今回の主な配役は以下の通り。
(加賀鳶のツラネの順)春木町巳之助=歌六、昼ッ子尾之吉=愛之助、魁勇次=歌昇、虎屋竹五郎=高麗蔵、盤石石松=松江、数珠玉房吉=男女蔵、御守殿門次=亀鶴、妻恋音吉=種太郎、天狗杉松=市蔵、御神輿弥太郎=友右衛門、雷五郎次=芦燕、日蔭町松蔵=吉右衛門
竹垣道玄/天神町梅吉=幸四郎  女按摩お兼=秀太郎
女房おせつ=鐵之助  家主喜兵衛=錦吾
小間使お朝=宗之助  伊勢屋与兵衛=家橘
      
冒頭の場面、町火消しとの間に喧嘩が勃発して加賀藩お抱えの大名火消し加賀鳶たちが本郷木戸前で勢揃い。花道に並んでひとりひとりがツラネで名乗りを上げるところも今回は冒頭の数人の姿は見えて台詞もある程度聞き取れる。イヤホンガイドと聞き覚えのある声で誰だかわかるし、ぐっと身近に感じられる。さぁ乗り込もうというところへ頭分の梅吉がやってきて喧嘩を預かるという。言うことがきけないなら「俺を殺してから行け」という。以前わからなかったのは梅吉と松蔵をはじめとする他の加賀鳶との関係。相手の様子を見に行っていて仲人にたった人物からの仲裁を引き受けてきたというのがわかったのでスッキリした。喧嘩もいろいろ作法があるらしい。

そして、先月の「め組の喧嘩」は町火消しの喧嘩の前の勢揃いがあったが、今回の加賀鳶は大名火消しの格を見せ、火事装束も稲妻模様の半纏姿、加賀髷と名のついたまさかり銀杏のような髷で揃えているのが見所なわけだ。加賀鳶の話はここまで。
主役に二役以上をさせるのがこの頃の作劇の条件だったということで、松蔵をやった役者に按摩道玄もやらせてその演じわけを見せるというのが眼目なのだ。

元は医者だという竹垣道玄は目明きのくせに按摩になりすまし、本郷菊坂の盲長屋に住んで悪事三昧の暮らし。先日も御茶ノ水(背景に見える水道橋は上水をひいた水道の橋だとイヤホンガイドできいてこれもガッテン!)で行き倒れを看病のもみ療治とみせかけて懐をさぐって金を奪っての殺しとなる。暗闇の中で煙草入れを落として松蔵に拾われる。殺した相手の妹を女房にしたのもとことん絞りとるためだった。情婦の女按摩のお兼とおせつの姪お朝を売り飛ばす算段をすすめている。そのお朝が主人の伊勢屋にお金をめぐんでもらったのを手篭めにされたことにして強請を計画。質店の伊勢屋の店先で偽の書置きを証拠に凄んでみせる。小僧が機転をきかせて出入りしている鳶の松蔵を呼んでくる。そこで煙草入れをつきつけられて万事休す。
長屋に戻れば殺しの返り血のついた布子が土中から犬に掘り出され、大家がお上に届け出ると言う。お兼とふたりで高飛びしようとするがすでに捕り手に囲まれてまずはお兼が御用となる。道玄は加賀藩の御守殿門=赤門の前まで逃げてくるが暗闇の中の立ち廻り捕物の立ち廻りの末についにお縄になっての幕切れ。

とにかく吉右衛門の松蔵の存在感で2つの世界がつながって歌舞伎味が一貫する。幸四郎の道玄はすごく面白いのだが、どうにも歌舞伎にみえない演技。歌舞伎も演劇の1ジャンルという考え方で今の時代に合わせての工夫にうちこむ幸四郎の意気は買いたいが、どうにも歌舞伎座にあわない気がしてしまう。好みの問題かもしれないが。
秀太郎初役の女按摩お兼。「御浜御殿」の江島と同じ人と思えない悪い女。私には夜の部のこの2役の演じわけの方がすごいと思ってしまった。悪い女だが道玄には惚れているという可愛げがちゃんとある。やっぱり秀太郎は大好きだなぁ。

道玄の強請場でお朝が14歳だということから引き合いに出される「桂川連理柵」のお半長右衛門の芝居も観たことがないけれど予備知識に入ってきているのでハハァということになった。江戸時代のお客は皆様「ご存知!」という話だからこういう風に話が運べるのかぁとわかったというのもこの数年の修行のおかげか(^^ゞ河竹黙阿弥の人気作をようやく楽しめるようになってきたのも嬉しいと思った。

そうそう今回舞台写真を買ったのは亀鶴の御守殿門次。こんなに大きな顔のアップはめったにないと思える写真で切れ長の目に見惚れた(俳優祭の模擬店タイム以来)。その「御守殿」ということについて書くと、大名が将軍の娘を御台所に迎えるためにはお屋敷をつくらなければならず、その屋敷が「御守殿」。その門が御守殿門=赤門というわけだ。だから忠臣蔵で塩冶家の屋敷の門が赤いのは本当は間違いだが、見栄えのためにお江戸の舞台では赤にしているらしい。こうやって薀蓄が増えると嬉しいというオタク道を邁進している(笑)

写真は、公式サイトよりこの公演のチラシ画像。
以下、この公演の別の演目の感想
6/10昼の部①「侠客春雨傘」染五郎長男の初お目見得
6/10昼の部②「閻魔と政頼」
6/10昼の部③ずっと観たかった「吉野川」
6/26千穐楽夜の部①染五郎の「船弁慶」
6/26千穐楽夜の部③絶品の「御浜御殿綱豊卿」


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
亀鶴さん (スキップ)
2007-06-29 03:00:56
ぴかちゅうさま
千穐楽ご観劇とはまたうらやましい。力の入ったレポ、ありがとうございます。

>今回舞台写真を買ったのは亀鶴の御守殿門次。
>こんなに大きな顔のアップはめったにないと
>思える写真で切れ長の目に見惚れた

そんなにアップの写真が出てたのですか。私も欲しかったなぁ。俳優祭模擬店の亀鶴さん、女連の姿のままで流し目(?)も色っぽかったですよね。笠につけたディズニーの飾りとのアンバランスが絶妙でした(笑)。
私も4月の浪花花形歌舞伎で「夏祭浪花鑑」の一寸徳兵衛を演じた亀鶴さんの色っぽい目つきにヤラれて以来、かなり気になる存在です。

「船弁慶」のご感想もとても興味深く読ませていただきました。最後にとっておきの「御浜御殿」。楽しみにしていますよ~。
返信する
★スキップさま (ぴかちゅう)
2007-06-29 22:07:30
>俳優祭模擬店の亀鶴さん、・・・・・・笠につけたディズニーの飾りとのアンバランスが絶妙
実は松緑の立飲み屋(?!)の前でいきなり遭遇してその目の迫力にタジタジとなったんです。この私が!しかしその白雪姫の飾り!!に感動して思い切って「写真撮らせてください」ってお願いして撮影したアップ写真がうまく写っているんです。その体験から今回の横顔アップ写真、絶対GETだったというわけなんですよ~。
大阪ではけっこういいお役がつくのに歌舞伎座だとどうしてもお江戸の役者にもってかれますよね。でもこれからを楽しみにしたいと思ってます。

返信する
楽しいです♪ (ムンパリ)
2007-06-30 00:57:27
ぴかちゅうさん。こちらを読ませて頂くの楽しいです。蘊蓄どんどん増やしてくださいまし(笑)。
イヤホンガイドからの引用+独自の解説付きなので、こちらのほうがおトクですよ~♪(by 関西人)
大名火消しと加賀髷のとこ、装束にも意味があるんだと今頃納得しました。
松蔵が全部のエピソードのつなぎ役で、重要な役どころなんですね。幸四郎さんと吉右衛門さんが好対照の舞台で、吉右衛門さんがブレない分、幸四郎さんがあえて自由に遊んでるのかな~なんて思って見てました。
黙阿弥、これからは私もチェキラウ!!です。
ファン目線バレバレだし、歌舞伎なので迷いましたが、勇気を出してTBさせて頂きました(笑)。
返信する
★「星月夜に逢えたら」のムンパリ様 (ぴかちゅう)
2007-07-02 01:14:32
せっかくの歌舞伎座デビューの記事だし、よろしかったらとお願いしたTB返しも有難うございますm(_ _)m
さんちゃに私も行ってきました。1階のシアタートラムの「THE BEE」の上でやっていた野村萬斎主演の「国盗人」です。狂言の方法を取り入れたシェイクスピアの「リチャード三世」でしたが、古典芸能のもつ力をここでも見せつけてもらってとても面白かったです。
>吉右衛門さんがブレない分、幸四郎さんがあえて自由に遊んでるのかな~なんて思って見てました。
これは本当にそんな感じでしたね。そういう兄弟の力を頼みにして自分が新しい演じ方をしてみるという共演があってもいいのかなと思えて嬉しいご指摘でした。
>ファン目線バレバレ......大歓迎です。それに私も愛之助さんは贔屓です。このブログ内の検索すればおわかりになるでしょう(^^ゞ
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

返信する

コメントを投稿