ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/03/11 ミュージカル亜門版『ファンタスティックス』

2005-05-17 23:58:39 | 観劇
宮本亜門はブロードウェイでの『太平洋序曲』の上演でトニー賞候補にノミネートされている。日本人による上演も話題になったようだが、今回は現地キャストによる上演だった。賞がとれるといいけれど...。新橋演舞場でスーパー歌舞伎を観た時に前にある彼の父親の喫茶店「エリカ」でお茶をして、亜門パパに頼んで写真に一緒に写ってもらった。『キャンディード』を観る予定と話すと、亜門パパ本当に嬉しそうに笑った。店内もポスター貼ってあるし、息子が可愛くて仕方ないといった様子。パパの好印象で亜門さんのファン度がアップしたのだが、実はその『キャンディード』再演が亜門演出を見るのが初めてだった。中川晃教ファンである私だったが、残念ながらオペラ陣との歌い方の違いが大きすぎて違和感がすごかった。バーンスタインのメッセージを今の観客に伝えたかった亜門の志や良し。キャストも熱演だった。私はまあまあ観た価値を感じたが、2回目はもういいやという感じだった。

そこで今回の小作品で、もう一度亜門演出に挑戦した。
登場人物は、以下の8人だけ。
青年(マット):19歳。無垢な若者=井上芳雄
少女(ルイーザ):16歳。夢見る理想主義者=大和田美帆
少女の父(ベロミー):ボタン商。庭いじりにはうるさい=斉藤暁
青年の父(ハックルビー):元海軍兵。庭いじりに凝っている=沢木順
俳優(ヘンリー):年老いて、盛りを過ぎた悲劇役者=二瓶鮫一
死ぬ男(モーティマー):ヘンリーのトンマな相棒=なすび
黙者(ミュート):見つめ、"壁"などを演じる=水野栄治
ナレーター(エル・ガヨ):30-40代。放蕩者。ハンサムなしゃれ者=山路和弘

ストーリーを亜門版『ファンタスティックス』公式サイトから抜粋すると...。
幕開けの音楽とともに、一同が舞台に入ってくる。それはあたかも旅芸人の一座が町にやってきて寸劇を演じるような趣向。演じる役は、可憐な少女(ルイーザ)、すがすがしい若者(マット)、その父親たち(ベロミーとハックルビー)・・・そして黙人(ミュート)が芝居のなりゆきを常に見守り、必要に応じて自ら壁や木などに扮して芝居に必要な設定をお膳立てする。やがて旅芸人たちの座長と目される魅力的な男性が最後に登場し、主題を歌う(「トライ・トゥ・リメンバー」)。この男性(エル・ガヨ)がナレーターとなって物語は展開する。
キャスト評
井上芳雄は初演に引き続きということだが、かなり芝居も上手くなっているし、いろいろな感情をこめて歌えるようになっていて成長を感じた。青年役を好演。大和田美帆は裏声に切り替わるところが不安定。声域が合っていない。井上くんとのバランスもよくないので、要修行。
斉藤暁はかなり前にTVで『踊る竜宮城』?という子ども向け番組でカメさん役で出ていて、カッコはよくないけど可愛いし個性的だなあと思っていたが、歌も上手く庶民的な役で貴重。沢木順は二枚目なんだけど、これまでは一本調子で苦手だった。今回の父親役はけっこう力が抜けていていいかもと思ったら、やはりその辺が初挑戦だとパンフにあった。若いときはマット役を演じたとも書いてあった。二瓶鮫一の老役者となすびの死ぬ役だけが得意な相棒もそれぞれ存在感があって面白かった。水野栄治は全く台詞がない役だったが、スピーディーでしなやかな動き。最後の魔法の粉(いろんな色の紙や銀紙を切ったもの)を振り撒くところが夢のような今回の作品をうまく締めくくった。
さて、一番魅力的な役はエル・ガヨ。ルイーザに大人の男の魅力を見せつけて背伸びさせ、若いふたりを成長させるべく憎まれ役も引き受ける役回りだ。パンフでは山路和弘が枯れて演じたいと言っていたが、今回くらい色気が漂っていいと思う。昔の東宝版での上演の時は、宝田明がエル・ガヨを演じたとパンフに書いてあった。それって、すごい、かなり気障っちくてカッコよかっただろうなあ。と想像するだけで垂涎してしまいそうだった。
宮本亜門演出は、この作品では生きていたと思う。シンプルで無駄のない舞台に登場人物を活き活きと浮き上がらせる。次も作品を選びながら観たいと思った。

以下、あらすじ(読みたい方だけどうぞ)
隣同士に住む思春期を迎えたルイーザとマットは恋に落ちているが、父親同志の仲が悪く、家の間に壁を建てている。ところが父親同志は実は大の仲良しで将来は二人を結婚させようと、親の大反対こそが二人の絆を深めるとの計略で不仲を装っているのだ。父親たちはこの計略を知られずに仲違いを止めるために、旅芸人の一座の座長エル・ガヨに、狂言をうってくれるよう頼みに行く。ルイーザ誘拐の狂言だ。段取り通りことが運び、エル・ガヨがマットにぶちのめされたところに二人の父親が現れ、和解したことになる。
壁もとりはらっていつも一緒にいるようになったマットとルイーザ、ベロミーとハックルビー。現実は何だか色あせてみえ、お互いのいちいちが気に障るマットとルイーザ。親の気持ちをそっちのけの二人に、ハックルベリーは真相をぶちまけてしまう。傷つき、お互いに背を向けるルイーザとマット。父親同志も反目しあい再び壁を築く。割って入ったエル・ガヨに飛びかかるマットだがこともなくエル・ガヨに組みしかれる。傷つくマット。そんな彼を見下し、エル・ガヨに恋するルイーザ。マットは旅に出てしまう。子供はどう育つか分らないが、カブは植えれば素直に育つ。野菜の方がずっとかわいいと歌って仲直りする父親二人。諸国を遍歴して苦難の道を歩むマット。一座が町を出て行く時が来て、一緒に家を出てついて行く決意をするルイーザ。彼女は荷物をまとめようと家に戻るが、その間に一座は去り、騙されていたと知るのだった。町へ戻ってきたマットとルイーザの再会。二人とも少し世界に触れて傷ついた。お互いをもう一度見つめ直し、歩み寄る二人。二人が戻ってきて歓声をあげ、父親たちは壁を壊そうとする。エル・ガヨが「壁はそのままに。忘れないために」と諭す。最後に「トライ・トゥー・リメンバー」で幕。
写真は、オフィシャルサイトより→http://www.fantasticks.jp/

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3 コメント

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宮本亜門 (paru)
2005-05-18 13:37:04
宮本亜門作品は、「香港ラプソデイー」あたりから「狸御殿」くらいまで気に入って見てました。

今は歌舞伎で財布の中身が厳しいので、なかなか行けないのですが^^;

機会があればまた見たいと思っています。

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DEEP EMOTIONのparu様 (ぴかちゅう)
2005-05-18 15:52:46
5月歌舞伎夜の部へのTB返し、ありがとうございました。

昨年の『イン・トゥ・ザ・ウッド』はかなり心が動いてたんですよ。結局賞をとったみたいだし、観ればよかったかと...。再演があったら次は行きます。オペラの亜門演出も一度観たいと思ってますし、ああ欲張り。

まさか、歌舞伎の演出までは進出しないですよね。これからはそれもわからないかな?
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そういえば・・・ (あいらぶけろちゃん)
2005-05-19 08:20:05
あらすじを読んでそんな話だったようなとおぼろげな記憶をたどりました。外国のカンパニーが来たときに見たんですが(名古屋の芸術劇場?)その時の私には高度だったのか、疲れてたのか「もう一度」と思わなかったのは確かです。「トライ・トゥー・リメンバー」はよかったな~
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