Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

新国立劇場「ホフマン物語」楽日批評(No.2653)

2023-03-23 14:30:32 | 作曲家 : シャブリエ & オッフェンバック
私高本が好きなオペラ作曲家ベスト3 = オッフェンバック、ビゼー、シャブリエ である。「オッフェンバックと直接影響を受けた2人」である。


オッフェンバック「ホフマン物語」の楽譜の版について、新国立劇場「ホフマン物語」プログラムノートは少々言葉足らず。ホフマン物語(版の経緯)|フランスオペラの楽しみを参照すると、以下になる。(ベルリンコーミッシェオーパー フェルゼンシュタイン演出を加えた)

  1.  1907 ガンズブール版(シューダンス社)
  2.  1958 ベルリンコーミッシェオーパー フェルゼンシュタイン演出
  3.  1977 エーザー版(アルコーア社)
  4.  1980 エーザー版とガンズブール版折衷楽譜上演(レヴァイン指揮・ポネル演出・ザルツブルク音楽祭)
  5.  1984 ケイ版(ショット社)
  6.  1993 ケック版(ブージー&ホークス社)
  7.  2003 アルロー演出・阪哲朗指揮 新国立劇場「ホフマン物語」初演
  8.  2006 ケイ&ケック版(貸し楽譜のみで市販楽譜は無し? or 1984ケイ版 + 1993ケック版使用)

1980ポネル演出を手本の台本と考察される。初演指揮=阪哲朗は「ベルリンコーミッシェオーパー専属指揮者(1998~02年)」の看板背負って新国立劇場「ホフマン物語」初演指揮に抜擢された。日本を代表する「オペラ指揮者」であり、次期「びわ湖ホール」芸術監督内定である。

阪は「ベルリンコーミッシェオーパー時代はエーザー版で全て振った」明言しているので、1975フェルゼンシュタイン没後以降だろう時期にベルリンコーミッシェオーパー「ホフマン物語」は ガンズブール版 → エーザー版 になった。エーザー版は「校訂楽譜」では無く「補筆完成楽譜で追加作曲あり(← 第5幕フィナーレなど)で戦勝国著作権60年(← オッフェンバックはフランス国籍取得)」の為、IMSLPは掲載出来ない。オイレンブルク版にも収録されていないので、指揮者は研究がキツい><


阪哲朗が語る「エーザー版」は『ブルックナー交響曲第3番旧全集校訂(1950)』の音楽学者である。今尚、エーザー版楽譜で第3番振る指揮者がいるのは

◎ブルックナー旧全集は「楽譜買い切り」で演奏の度には一切費用が発生しないが、ブルックナー新全集ノヴァーク版だと「パート譜貸し楽譜のみ」で毎回費用発生する

が原因である。ブルックナー交響曲第3番第2稿=1877年稿演奏するなら、ほとんど差が無い。これが理由で、ブルックナー交響曲第3番は第2稿演奏が未だに多いことは知られていない。ブルックナー第3番各版比較
第2稿演奏ならば、使用楽譜明記しないでチラシ&プログラムノート記載すれば良い。第1楽章2小節と第3楽章コーダ41小節は必要あれば、楽譜係が作成してパート譜に付ければ済むのである。アマチュアオーケストラは基本この路線である。新ブルックナー全集交響曲第3番第2稿ノヴァーク版 は、旧ブルックナー全集第3番エーザー版をほとんどそのまま印刷して、第1楽章2小節追加や、第3楽章コーダ追加などを加え、ページを振り直した楽譜なので、新規作成の第1稿や第3稿に比較して「古い」印象が強い楽譜であるw
 ブルックナー新全集は「スコアは指揮者サイズは自社、小型サイズはオイレンブルクから廉価版で」出版されていて、この状況。オッフェンバック「ホフマン物語」は小型スコアが皆無なのである><

 オペラ座付き指揮者で無いと「研究」の段階で難しい曲なのである。(自費で大型フルスコア購入で、エーザー版、ケイ版、ケック版揃えると、6桁中盤越すと推定だから)
 新国立劇場でさえ、オッフェンバック上演として名声高い ベルリンコーミッシェオーパー芸術監督経験の 阪哲朗 を頼っての初演であった。民間オペラでは、まず無理、と感じる次第である。

 ケイ&ケック版は、パート譜使用代金についても不明である。

「フランスオペラの世界」HPを紹介する。ホフマン物語関連をもう1つ。。ホフマン物語についてモノ申す: ロベルト・アラーニャ@スケジュール

  1. 「フランスオペラの世界」は、ケイ&ケック版推奨
  2. 2003年新国立劇場「ホフマン物語」初演時、ケイ版単独とケック版単独は出版済み
  3. 2013年3回目上演時はケイ&ケック版発表済み

これを念頭に本日批評はご覧頂きたい。


アルロー演出を十全に発揮させた レトーニャ指揮 + 大隅智佳子ジュリエッタ


  アルローは「エーザー版 + ガンズブール版の曲だけ」でオッフェンバック「ホフマン物語」演出することを了承した。「ジュリエッタ幕」にも重点を置くために、ガンズブール版合唱付き6重唱フィナーレを使用したが、ケイ&ケック版で2曲以上あるジュリエッタのアリアは、評判低い「エーザー版」をカットした。ジュリエッタ役はアンサンブルだけである。その結果、ソプラノに自由に選ばせると

◎オランピア → アントニア → ジュリエッタ

になってしまったのが、過去4回。今回は、前回公演で評価高かったオランピア役=安井陽子 は留任で、新国立劇場主役実績多い 大隅智佳子=ジュリエッタ役に配した。異例の配役である。
ヨーロッパ大劇場でオッフェンバック「ホフマン物語」指揮経験ある指揮者アルロー は、第4幕フィナーレでピークを作り上げること可能を確信し、48名合唱を充分に鳴らし、大隅智佳子・カパルボ・シリンス 3名の声が合唱を突き抜け、掛け合いとなる。2003年初演時は60名の更に大人数の合唱であったが、「しょぼい舟歌の変奏曲」に聴こえた曲が「大合唱を従えた主役3名の掛け合いが映える舟歌」に聴こえたのである。
 毒々しいジュリエッタがゴンドラ船(海賊船は大道具だけ、乗船したのはゴンドラ船><)で舞台を去った後、間奏曲がオーケストラだけで演奏される。コンサートマスターと首席チェロがソロで舟歌を奏でる、勿論ジュリエッタとニクラウスの旋律。東京交響楽団は初日も良かったが、楽日は更に歌い込んで演奏した。


アルロー演出意図:第2幕・第3幕・第4幕をそれぞれ「ロンド形式」で統一し、第1幕を第5幕で再現しオペラ全体の統一感を全面に出す


ガンズブール版第4幕フィナーレは「良い演奏」ならば、統一感あることを、今回公演で初めて知った。「ホフマン物語」と言えば「舟歌」、それが(幕は降りるものの)音楽が途切れずに第5幕に突入するのは、効果大である。ケイ&ケック版よりも統一感ある。
・・・と言うか、ジュリエッタに2曲(以上?)のアリアがある、と言うのは、生前オッフェンバックが想定していた初演ジュリエッタが2名いたのか? 迷っていたのか? 出来が難し過ぎて作り直したのか? ケイ も ケック も迷っているから「ケイ&ケック版」なのであろう。
ガンズブール版追加2曲をそのまま生かし、エーザー版から適宜補充した「アルロー演出阪」は「幕毎の統一感」が極めて高い。

  1. オランピア幕 → 「青ひげ」の行進曲がロンド主題
  2. アントニア幕 → アントニアの病弱がロンド主題
  3. ジュリエッタ幕 → 「舟歌」がロンド主題
  4. エピソード幕 → プロローグ幕再現

これほど強い構成感のオペラはワーグナー以外では珍しい。オッフェンバックがワーグナーを手本にした感じは全く無い。「動機の発展」は使わないから。「アルロー演出:ホフマン物語」は素晴らしい。
カーテンコール時

  1. 合唱指揮 三澤洋史
  2. 大隅智佳子
  3. 安井陽子
  4. シリンス
  5. 小林由佳
  6. カパルボ
  7. 指揮者 レトーニャ

にブラヴォーが掛かった。ミューズ/ニクラウス役=小林由佳 は第4幕冒頭の「舟歌」2重唱に全力で立ち向かい、初日とは別人の出来。その後は力尽きていたが、やはり「舟歌」2重唱が「ホフマン物語」を決める、であった。楽日ブラヴォーが来た!

アルロー演出は、この「ホフマン物語」が最初で、続けて「アンドレア・シェニエ」「アラベッラ」演出し、3演目とも再演されている。
「ホフマン物語」は是非再演して欲しい。出来れば、指揮=レトーニャ、ジュリエッタ=大隅智佳子、オランピア=安井陽子で。
アルロー新演出も見てみたい。
2023.03.21所見
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