Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

新国立劇場「ホフマン物語」初日批評(No.2652)

2023-03-19 00:45:07 | 批評

聴き応え抜群だった第4幕 → 第5幕


新国立劇場5度目の オッフェンバック「ホフマン物語」。初演2003年から、2005年、2013年、2018年、今回2023年全てを観たが、2回目休憩後の第4幕~第5幕の出来が、今回2023年公演が圧倒的に良かった。

ジュリエッタ役 = 大隅智佳子 が豊かな声で歌い、ホフマン役 = カパルボ、タペルトゥット役 = シリンス が豊かな声をマックスに歌い上げたから


これまで含め全5回とも主役男声2名は海外招聘で豊かな声男声主役なのだが、長い時間のオペラだからなのか? 相手役ジュリエッタの声量不足からか? オッフェンバック自身の作曲では無い曲で締め括られるからか? 指揮者の解釈か? 第4幕は聴き応えが第3幕までより劣り、「尻すぼみ」傾向が4回続いていた。初演時プログラムに『1881年世界初演時、ジュリエッタの幕(第4幕)が削除され、舟歌はアントニアの幕(第3幕)に移された』記述を読んで納得した記憶がある。2003年ジュリエッタ=佐藤しのぶ。その後も、「尻すぼみ」傾向は変わらなかった。

第4幕フィナーレ「6重唱+大合唱」で 指揮者レトーニャは大隅智佳子 を向き、アンサンブルを引っ張らせた


この第4幕フィナーレもオッフェンバック没後、追加作曲された曲、これまでは「オッフェンバックオリジナル曲に比べ、魅力薄い」と感じていたが、この日は違う。

  1. 奇怪な衣裳で眼を惹くオランピア役=安井陽子
  2. 病弱でお涙頂戴のアントニア役 = 木下美穂子
  3. 高級娼婦で幕切れで海賊船にて悠々逃走するジュリエッタ役 = 大隅智佳子

が「徐々にクライマックスを作り最後にカンカンで盛り上がる オッフェンバック 天国と地獄」に比肩する締め括り、となった。「ユーリディウスの突き抜ける声」をイメージして補作したのだろう、と思われる「ジュリエッタの突き抜ける声」はまさに「オッフェンバック風のクライマックス」! 良い補作である。


「ドン・ジョヴァンニ」「カルメン」などでお分かりのように、幕切れで盛り上がると、客席は盛り上がり易い。オッフェンバックの死が完成を阻んだ「ホフマン物語」は、3人目の女性=ジュリエッタの幕に未完成の曲があり、原曲だけでは幕が成立しない。「オッフェンバックの素材」を他の作曲家に補作してもらい、上演している。過去4回は、「他の作曲家の補作は弱い」を感じたが、今回は他の幕と同じ感触で聴こえた。

ドニゼッティ「ルチア」のアリアも他の作曲家の補作、ビゼー「カルメン」のレシタティーヴォは全て他の作曲家の補作、他の作曲家の補作が必ずしも悪い訳では無いことがお分かり頂けるだろう。指揮者の判断(指揮者が愚作と思ったら名演は決して生まれない)、演奏家の技巧が積み重なって名演奏が生まれる。その瞬間に立ち会えて幸せである。


カーテンコールでは、ブラヴォー (& スタンディングオベーション)が

  1. 大隅智佳子 に始まって
  2. 木下美穂子
  3. 安井陽子
  4. シリンス
  5. カパルボ

の5名に懸けられた。指揮者レトーニャにブラヴォーが掛からなかったのは不思議な感じ。補作曲も素晴らしい演奏だったのに!
アルロー演出は、「オランピアの幕」の腹を抱えて笑える服装に下駄を履かせた背丈の面白さは相変わらずで、その勢いで「ジュリエッタの幕」の毒々しいジュリエッタが十全に表現された。2003年初演時、五十嵐喜芳元芸術監督は、このような舞台が再現されることを期待していたと推察する次第である。20年が経過してしまったか(泣
2023.03.15所見
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする