Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

2012.09.15 マーラー対決 インバル+都響「巨人」 vs. プレヴィン+N響第9番(No.2142)

2012-10-07 20:58:09 | 批評

「なめらかさ」「音の開放」を強調するインバル、「静けさ」を強調するプレヴィン


 インバル はこの日から2シーズンを掛けて『マーラー交響曲全曲演奏会』を行う。「嘆きの歌」が演奏されるが、「大地の歌」「第10番」は発表になっていない。
 インバル の指揮はまず「なめらかで、フレーズが繋がっていること」を強調する。アクセントは強調しないし、「音をためる」ことは少ない。極めて「耳あたりの良い音」が基本だ。但し、これだけだと物足りないので、各楽章毎に大きく「音を開放」して盛り上げる。「金管楽器 + 打楽器 のフォルティッシモ」が各楽章毎「吠える」のだ。マーラーの指示とは相関関係は薄い。
 このパターンは「ワンパターン化」だが、都響ファンからの支持は絶大の様子。終演後はブラヴォーが(協奏曲の後とは別物のように大きく)降り注いだ。


 プレヴィン の指揮は小振り。「マーラーの静けさ」を強調する。特に秀逸だったのは終楽章(第4楽章)。マーラーの最後に完成した交響曲との別れを惜しむかのように、緊張感を持続して行く。フォルティッシモは「鳴らす」では無く「響かせる」。金管楽器も「響き」を保ち、弦楽器&木管楽器と調和して「響き」を作る。


 インバル は都響のトップ指揮者。プレヴィン はN響の役付指揮者。どちらもオケと熟知した仲。「オケとの意思疎通」は感じられる演奏だった。

杞憂していた『N響のティンパニと一番トランペット』は、メンバーが 植松 と 菊本 に変わっており、「プレヴィン指示通り&マーラー楽譜通り」だった!


 今年9月から、ティンパニは 久保 が首席から外れ、トランペット首席に菊本が加わったからである。これならば、今後、N響のマーラーも怖がらずに聴けるようになる可能性が高い。(久保 と 関山 が「一番で乗り番」になることあるの? マーラーで??)


N響は「遠いポジション」でも旋律の受け渡しがスムーズだが、都響は遠いポジションにはうまく受け渡せない


 インバル は「なめらかさ」重視の指揮なので、これは都響の問題だろう。指揮者インバルを信じて、と言えば聞こえは良いが、

都響は「インバルに頼り切って」メンバーが音の受け渡しに無頓着


に聴こえた。トランペット → オーボエ の距離があると、(間にクラリネットとファゴットがいるためか)受け渡しがぎこちない。(後日の「復活」でも同じだった。)


 ティンパニ と トランペット を強化したN響はプレヴィン指揮を忠実に再現し、「マーラーの静けさ」を聴かせた。ピアニッシモで終わる曲だが、終演後はブラヴォーが降り注いだ。
 都響はインバルの指揮に忠実であろうとしたが、旋律線の受け渡しはN響の水準には達していなかった。「指揮者が指示してくれるだろう」と思っているように聴こえたが、オーケストラメンバー同士で旋律線受け渡しが出来ているN響を同日に聴くと、残念な思いがある。
 プレヴィンの指揮は極めて「小振り」。基本テンポと「クレッシェンド&デクレッシェンド」を正確に指示するが、旋律線受け渡しを全部こと細かに指示していたようには見えなかった。N響は放送もされるので、私高本の指摘が正しいか、正しくないか、は読者の皆様に判断頂きたい。

インバル + 都響「マーラー交響曲全曲演奏会」には大いに期待している


 今後さらに素晴らしいマーラーを聴かせてほしい。
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