Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1811)

2011-03-23 10:49:01 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 「チェコ舞曲集第2集」の各曲について。

  1. フリアント


      「ポルカ」と並ぶチェコを代表する踊りで、ドヴォルザーク も愛用した舞曲。交響曲第6番作品60第3楽章にまで用いられたほど! 男性的力強さが魅力。「チェコ舞曲集第2集」全体が「3拍子と2拍子のリズム交錯の魅力」にあふれているのだが、「フリアント」では、長い序奏が終わった直後から「リズムの交錯」がきらきらと輝いているかのよう。名作の出だしにこだわり、全10曲中、唯一短調の曲だが、終結では長調に転調して輝かしく終わる。

  2. ちっちゃなめんどり(スレピチカ)


      ボヘミアの田舎村で放し飼いの ちいさな鶏(雌)が群れで「コケッコッコ」とさえずりながら、のどかにエサをついばんだり取り合ったりしている情景を描いたかのような「メンデルスゾーンに匹敵するか超越した情景画」の1曲。

  3. からす麦(オヴェス)


      これは民謡「からす麦の種を播いた」を元歌にした曲。日本では「田植え歌」が各地に残っているが、チェコでも「麦植え歌」があるようだ。麦収穫の情景なども描かれる。穏やかな曲想が続く中で、農民が一斉にステップを揃えて踊り出すシーンもある。

  4. 熊(メトヴェット)


      昔のチェコにはお祭りの時に「熊を連れた興行師」が田舎まで廻っていました。その熊は後ろ足で器用に立って踊りを踊れるように訓練を受けていました。日本の「猿回し」のようですが、スケールが大きいですね! 熊のユーモラスなそれでいて重量感たっぷりの動き、田舎のお祭りで子供たちが騒いでいる様子などが、それは生き生きと描かれている! 尚、熊についての民謡「君とは結婚しないよ。だって君は熊にそっくりだから」「熊の足は毛むくじゃら。お前の心はきれいじゃない」なども引用されている。

  5. 小さなたまねぎ(ツィプリチカ)


      たまねぎに関する民謡を引用した曲で変奏曲形式になっている。穏やかなテーマから思いもよらぬ轟きも聞こえてくるが、終結では「・・・とあったとさ」と、爺様がむかしばなしを語り終えるかの口調となる。

  6. 足踏みダンス(ドゥパーク)


      後半の開始部であり、ここから1曲毎に技巧的で激しい曲と穏やかな曲がコントラストを付けながら終曲(=第10曲)まで一気に「スメタナの世界」に聴き手を引きずり込む。
     前半5曲に無かった「極めて速い かつ 力強い」歯切れ良い序奏があっという間に終わると、テンポを落とさずに主要主題が出てくる。片足づつ力強く「足踏み」するのがはっきり聞こえるように スメタナ は作曲しているのだが、テンポがやたら速いので、演奏家の腕の店どころである。めくるめく次々に変奏されるが「足踏み」は激しさを増すばかり。途中2回出てくる寂しげな副主題との表情の違いが大きい。

  7. 騎兵隊(フラーン)


      チェコで今でも人気ある民謡「騎兵隊の恋人がいたのよ。私は彼が大好きだったの。」がほぼ原型で主題となっている変奏曲。全曲中、最もロマンティックな曲想。それでいて、変奏技巧は リスト を目標にしている!

  8. オプクロチャーク


      この曲も民謡を主題とした変奏曲だが、変奏主題自体が「女声と男声の掛け合い」になっているのが最大の特徴。変奏曲でもこの「掛け合い」がそのまま生かされて変奏されるのが、技巧的に難しく派手。リスト「ハンガリー狂詩曲」を思わせるフレーズが長く続くのも魅力。

  9. お隣の踊り(ソウセツカー)


      「お隣」が「家」を指すのか? 「村」を指すのか? 「国」を指すのか? 諸説ある曲。但し、スメタナ「チェコ舞曲集第2集」の前年に作曲&出版された ドヴォルザーク「スラブ舞曲集作品46」について、ドヴォルザーク が語っているところだと「隣国=オーストリア」から伝わった踊りで「レントラー」だと言う。シューベルトは「ウィーンの貴婦人レントラー」作品67 を残している。ウィーンから伝承して来た「都会プラハの舞踏会」情景なのかも知れない。全10曲中、最も優美で都会風。

  10. 跳躍ダンス(スコチナー)


      「飛び上がる(跳躍)」がスコチナーの特徴。オペラ「売られた花嫁」から ドヴォルザーク が「スラブ舞曲集第1集」で高く評価して取り上げたのも「スコチナー」。スメタナは「チェコ舞曲集第2集」を結ぶに当たり、「スコチナー」でチェコがこれからさらに高く飛躍することを願った。終曲ではリスト風にテンポと音量を最大限に上げて全曲を締め括る。
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