Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

スメタナ「チェコ舞曲第2集」(No.1808)

2011-03-20 20:59:03 | 作曲家・スメタナ(1824-1884)
 スメタナと言う作曲家は「わが祖国」ばかりが取り上げられる。その意味で、ベルリオーズ や ビゼー や ムソルグスキー に近い。同じチェコの同時代の作曲家=ドヴォルザーク とは、全く違う扱いである。「わが祖国」だけに限ると、ドヴォルザーク「新世界より」と同等かそれ以上に演奏頻度が高いのだが、他の曲の演奏頻度が極めて少ないのだ。「スメタナ4大名曲」に絞って考察してみよう。

スメタナ:「売られた花嫁」


 この名作オペラに関しては、原因ははっきりしている、「チェコ語上演できる世界的歌手が極めて少ない」からだ。昔(と言っても1970年代までは)「オペラ訳詞上演」は少なくなかったので、ドイツ語圏のオペラハウスではドイツ語上演していた時代がある。録音も残っている。今も後進の指導に当たっている世紀の大歌手の フィッシャー=ディースカウ が ヴェルディ「ドン・カルロ」ドイツ語訳詞上演を DG に録音したり、2才年上の マリア・カラス が ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の終曲をイタリア語訳詞上演で EMI に録音していた時代があるのだ(爆
 チェコ語オペラの大作曲家は、スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク の3名なので、これだけのレパートリーではオペラ歌手として食っていけないので、チェコ人とスロヴァキア人歌手以外はほとんど手掛けないのが実情。

「売られた花嫁」は、明るい曲想で、チェコ民族の希望を失わない陽気な気質を見事に表現した名作


なのだが、「原語上演」の壁に阻まれている(泣

スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」


 この曲は、「弦の国=チェコ」の弦楽四重奏団が頻繁に演奏するおかげで、一定のファンが付いている。名録音も多い。「わが祖国」の次に演奏頻度の高い曲である。
 弦楽四重奏曲には2つの系統がある。

  1. モーツァルト → シューベルト → ドヴォルザーク の「優美弦楽四重奏曲」路線


  2. ベートーヴェン → スメタナ → バルトーク → ショスタコーヴィチ の「私小説弦楽四重奏曲」路線



 どちらも素晴らしいのだが、「芸風」が全く異なる。「ベートーヴェン と シューベルト」や「スメタナ と ドヴォルザーク」は住んでいる街も時代も重なっていて、ジャンルによっては「近似性」を感じることもあるのだが、弦楽四重奏曲に限っていえば「スメタナ と ドヴォルザーク を混同する人は皆無」である。(「ベートーヴェン と シューベルト」も同様だ。)

 チェコは、スメタナ と ドヴォルザーク だけでなく、ヤナーチェク や マルティヌー などなど「弦楽四重奏曲の名作曲家」が目白押しなので、「チェコの弦楽四重奏団」の活躍が目覚ましい。
 ・・・が、逆に言うと、チェコ語に全く左右されない(楽譜の指示用語もごく普通に「イタリア語」で、シューマンの曲を演奏するよりも語学的には楽!)にも関わらず、チェコの団体以外には意外にも演奏&録音は少ない。「わが祖国」とは全く違う扱いだ! ドヴォルザーク弦楽四重奏曲「アメリカ」が、チェコの団体どころか、欧州の & アメリカの & 日本の 団体から演奏&録音されているのとは対照的。やはり「優美弦楽四重奏曲」路線の方が人気あるのだろうか?
 「耳が聞こえなくなったスメタナ」の苦悩の半生(← この時からまだまだスメタナは生きる!)を絶叫することはなく、描いた名作だと思う。次作第2番になると、苦悩が創作技術に覆い被さるようになってしまった感もあるのだが。

スメタナ:「チェコ舞曲第2集」


 上記2つの曲に比べてもさらに人気が薄い。私高本は1982年以降、「音楽の友」で全曲演奏会の告知を見たことが無い。全世界に3種類の「全曲盤」が現役盤であることはある。但しどれもが評判を勝ち得てはいない。
 佐伯周子の演奏を「チェコ音楽コンクール2010」で、1番+6番+7番+10番 で聴いた。1番は「モラヴェッツの超名演」があるのでその魅力の全貌を知っていたが、「6番と10番」の鮮やかな技巧による爽快感! はそれまで聴いたことの無い名演だった。審査員の皆様からも高く評価頂き、「第1位優勝」の栄誉を頂いたことに感謝!
 佐伯周子の演奏を聴くまでは「第1番だけが圧倒的な名曲か!?」と思っていたが、どうも違うようだ。

スメタナ「チェコ舞曲第2集」は、「売られた花嫁」の世界を取り戻し、さらにリストの「超絶技巧」を加えた曲集


 「神話の世界」を描いた「わが祖国」(と弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」)でスメタナが描き尽くせなかった世界が、スメタナの心に残っていた。「熊」みたいに荒々しい表情もあれば、「小さなたまねぎ」みたいにかわいらしい表情もある。
 ここだけの話だが「指の独立性」が「リストの超絶技巧練習曲」並みに保たれていないと、声部進行が不明瞭になるようだ。う~ん、これはキツい(爆

 「モルダウ」くらいの人気があれば、「リスト弾き」がこぞって弾く可能性は高いのだが、「よく知られていないから、評価はわからない」状態の「超絶技巧曲」って、誰が弾くのだろうか???
コメント
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