ヴィム・ヴェンダース 作品。
主人公は、一流カメラマン。
ミラ・ジョヴォヴィッチ(本人)の撮影を仕切っていたりして、業界売れっ子という設定。
ところが、表には出さないが、本人は最近すっかりスランプ。
アイデンティティを喪失しつつあるのだ。
そういう中、「死」とニアミスですれ違う瞬間を少しずつ感じだす。
この設定はヴェンダース本人の意識も投影されているのだろうけど、自分的に納得するのは、そういう悩みを持つには、それなりに成功していなければならないだろう、ということ。
日々の生活に必死でもがいている間は、そのゾーンには辿り着けないだろうからだ!
そういう点で、その設定をすんなり受け取れる自分がいて、物語にスンナリ入っていけた。
そのせいだろうか、物語の進行とともに、彼の身の回りで起こる事象に、さすがヴェンダース、という感じ。
最初のニアミスのシーンとか、彼得意のバーでのシーンに登場する某有名ミュージシャンの幻(必見!)とか。
またパレルモに行くきっかけとなる、川岸でのシーンのセリフまわしとか。
出演陣では、デニス・ホッパーが強い印象を残す。
これが彼の約30年ぶりのヴェンダース作品への出演で、これが実質の遺作なのではと思わせるのも何かの因縁?
またあとで資料を読むと、主人公もドイツでは有名なバンドのボーカルとのこと。
これで先の「成功者の憂鬱」が湧き出ているんだなと納得した。
またその資料で、ヴェンダースが今作で自分に挑戦を課していたことを知った。
「安全なゲームをプレイするのに疲れ果て」
「もう一度、ロックンロールのように映画を撮りたいと思った」
「予めどこに行き着くかを知らぬまま物語を語り、主題を発見してみたかった」
確かにこの映画、安全なゲームはしていない。
批判される可能性をも承知で、チャレンジした作品だったのだ。
そのわりには、凄みが足りないような気もしなくもない、が自分的には今年前半戦で 強く印象に残った1本に。
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