図書館で借りGWに読んだうちの一冊ですが、出来が良かったのでご紹介いたします。
著者はクレイグ・マクギル氏, 翻訳が田邊雅之氏。
タイトルの通り、ビジネスサイドからサッカーというスポーツを俯瞰、検証していると言えます。
章でいうと、
第1部 サッカー界の主役は誰だ(選手の収入高騰他)
第2部 ピッチの芝生は黄金色(サッカーは金のなる木;八面六臂のテレビ業界他)
そして
第4部 サッカーを取り戻すためのファンの闘い
途中にはさまる第3部は、「サッカーの敵」や「サッカーが世界を解明する」などでも克明に描かれている人種問題、フーリガン問題についての章。作者がグラスゴー生まれなので、特にセルティック vs レンジャーズまわりの宗教問題について簡潔に描かれています。
最もおもしろかったのは、書き物としては私はこの本で始めて読んだのですが、2006年ワールドカップ開催国にドイツが決定した時の裏話。
実にドロドロした話で、もともと日本の次はアフリカと言われていたなか、どういう経緯でドイツになったか興味深く読ませていただきました。
ということで、発行が2002年1月の日本でのワールドカップ直前ということを差し引いても、サッカーマニアにはお勧めの本と言えましょう!
2002年ワールドカップの開催の成功を期待する分章で締めくくられるあたり、なかなかぐっときます。
あと時制のずれからくるおもしろさでいうと、まだこの時点では、マンチェスター・ユナイテッドがまだアメリカ資本には吸収されておらず、BスカイBによる買収を回避できたことによって、ファンの権利が守られたというスタンスの記述があるのですが、ここも時代の変化を感じます。
あまり買収当時と比べると静かになっていますが、「アメリカ型のエンタテイメント化」ひいては「アメリカ型の社会発展」という文脈でとらえ、一種の「文明の衝突」という文脈でも捉えると大きな事件であり、引き続きウオッチしていく必要があるなとあらためて痛感した次第です。
最後にちょっとだけ本から引用。
作者ではなく、サッカージャーナリストの言葉ですが、
「非常に気の重い話ですが、サッカーは、規制を設けないうちに市場の力に屈してしまった他の産業がたどった轍をふむことになると思います」
こうならないように願いつつも、心配の種は尽きないサッカー界ではあります。
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