パティナ

2014-07-15 23:20:10 | アート・デザイン・建築

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イタリアのボローニャにあるサント・ステファノ聖堂は、数世紀にわたり繰り返し増築されることで次第に大きくなっていた聖堂です。大きくなったといっても、その起源がはっきりわからないぐらいに昔のことですから、簡素で素朴な小屋からスタートしたのでしょう。小さな御堂をちょっとずつ足していったかのような小振りな佇まいの積み重ね、といった感じが魅力です。
その歴史の積み重ねはそのまま質感に表れていて、回廊のなかに描かれているフレスコ画も、年月を経た美しさを醸し出していました。

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このフレスコ画が描かれた当時、画家は神の僕ですから、個性を絵の中に込めるというよりも、定型の構図・画法にしたがって淡々と描いたのだろうと思います。ですが、このようなことは考えなかったでしょうか。もしこの絵が後世にまで延々と残り続けるとしたら。

フレスコ画のもつ宿命として、剥離や色彩の消滅について画家たちが知り得ていたかどうかはわかりませんが、修復家チェーザレ・ブランディによれば、絵画そのものが古色を帯びていくことを、画家はどうやら意識し、計算に入れていたようだ、というのです。もちろんフレスコ画家たちのもっと後の時代ではありますが。ただそれ以前の画家も、同じようなことを考えていた可能性はあると思うのです。今、我々が目にする絵画のどの時点をもって、その絵画がもっともその真価を発揮しているか、とうのは、とても深遠な問題です。

フレスコ画は、少なくとも描かれた当初は、この写真のようなものではありえませんでした。しかしもう何世紀も後に生きる僕はこの絵を目の当たりにし、そのアンフォルメル直前ともいえる判然としない図像と、醸し出される質感に見入り、美しいと思いました。絵画が時間を経て得ることができる、古色ある味わい=パティナ という概念について、僕はとても興味をもっています。そしてそれは図像や色彩を超えて、何か大切なものを見る者にもたらしてくれるように思うのです。

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