ぼくは高校生のとき、一冊の本に出会いました。
田沼武能写真集「カタルニア・ロマネスク」。スペインのカタルニア地方にある山奥の集落にある、ちいさくて素朴な礼拝堂の数々と、それらと共に暮らす人々を撮った写真集です。
その世界観にぼくは次第に惹かれるようになり、飽くことなく繰り返し眺め、大事に抱えるようにして生きてきました。
ぼくの美意識や価値観や、生き方の筋道はすべて、この写真集に導かれてきたものです。人生の大事な局面には、いつもこの写真集からの後押しがありました。
そして、見えざる不思議な力に導かれるようにして、この写真集に深く関わる方々に出会うことができたのです。
写真家・田沼武能のご家族、そしてこの写真集の当時の編集者。そして巡り合わせてくれたのは、ぼくの施主のMさん。
ぼくは、この写真集にどれほど影響を受け、私淑し、導かれ、励まされてきたことか。そんな溢れる感謝の思いを、うまくお伝えできたでしょうか。
あらゆることが、今回の出会いにつながる伏線だったのだと思わざるを得ません。
なんだか、映画にでもなりそうなシナリオだな。誰か撮ってくれないかな。
「カタルニア・ロマネスク」と、ご家族からいただいた贈り物が、静かに集う光景。
それらが置かれたテーブルも、その背景の室内も、すべて「カタルニア・ロマネスク」への私淑から生まれたものです。
建築家として、ひとつの筋道を通してこれたのは幸せだなと思います。
そして、今回の感動的な出会いとご縁に、感謝の思いでいっぱいになります。
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