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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

「 李承晩TV 」- 4 ( やはり、「悲しみの詰まった動画」 )

2020-02-23 19:23:50 | 徒然の記

  氏の真意を説明する前に、もう一つ大事なことがありました。それは、朝鮮に関する氏の考え方です。

 極端な言葉になりそうですが、氏には強い「愛国心」があるのに、国土という観念が希薄で、同じく保守と言ってもここが私との決定的な相違点です。

  ・国土というものがなくても、自立した朝鮮民族が、世界各地で根を下ろし、誇りを持って生きればそれでいい。

 氏のこういう考え方の生じた原因を知った時、私は氏に同情しました。動画の中では述べていませんが、氏がこうした考えを持っていると知っておくのは大事です。

  ・はたして5千年前から、韓国人は一つの民族であり、一つの共同体だったのでしょうか。

  ・改めて問うとすれば、誰にも明確に応えることはできません。それでも皆が、そのように信じているのです。」

  ・しかし、私はそういうふうに考えません。結論を先に述べれば、今日における韓国の民族主義とは、20世紀に入り日本の抑圧を受けた苦難の時代に、産み落とされたものなのです。

  ・日本の抑圧を受け、集団消滅の危機に瀕した朝鮮人は、自分たちは、一つの政治的な運命共同体であるという新たな発見に至り、民族という集団意識を共有するに至りました。

 歴史学者は朝鮮半島が、5千年も前から国の歴史を有するとは誰も語りません。中国に支配される国があり、日本と同盟を結ぶ国がありで、ずっと群雄割拠の朝鮮半島だったからです。だから氏は、20世紀に入った35年間の日本統治で、初めて朝鮮人が民族意識に芽生えたのだと主張します。

  ・わが民族は、アメリカが日本帝国主義を強制的に解体したはずみで、解放されたのです。自分の力で解放されたのでは、ありません。
 
  ・自力で解放を迎えることができなかったという、厳然たる歴史の前において、親日派の清算という大義名分は、叶うことのない夢に過ぎませんでした。
 
 私が感じたのは、統一国家として歴史を持たない韓国人の悲しみでした。だから氏は、著作の最後で韓国民へ懸命に訴えていました。
 
  ・韓国の政治は、過去の歴史の亡霊から解放される必要があるという思いを強くします。
 
  ・過去をあげつらう行為ばかりするのは、愚かなことではないでしょうか。これ以上、死者が生者の足を引っ張ることができないようにしませんか。いつ果てるともない歴史戦争は、歴史研究者に任せて良いのではないでしょうか。

 氏は日本の統治が非道でなかったと説明しながら、他方で日本から抑圧されたと語り、氏自身でも思考の整理がついていません。韓国内の知日派の清算は手に負えない難題だから、こんなものとはオサラバしようと言う苦痛の提案です。

 氏の意見は、「国土を持たない愛国思想」と言う見方もできます。その点だけ見ると「根なしのグローバリストの思考」似ていますが、「儲けさせてくれるところ」が自分の国だと言う国際金融資本家の意見ではありません。

  ・民族というものは、歴史上すべてのものがそうであるように、成立・発展・挫折・解体の過程を踏む、歴史的現象の一つであるに過ぎません。それは20世紀に生まれ、発展し、今まさにその全盛期にあるようです。

  ・しかし今後は、民族主義は少しずつ衰えていくでしょう。

  ・資本と労働の国際移動が、どれほど激しくなっているか。すでに韓国の若者の十分の一、農村青年のほぼ三分の一が、国際結婚をしているではありませんか。いまや韓国も先進国並みに、徐々に多民族社会となる時期に差しかかっています。

  ・皮膚の色とは関係なしに、お互いに自由で平等な人間として共同で生きる、こうした秩序を持ち、社会と国家を統合していくしかない時代になったのです。

 民族主義が20世紀に生まれたという氏の意見には、無理があります。千年の単位で続いている、世界の民族紛争をどう説明するのでしょう。確立した個人さえいれば、国も民族も必要でないという氏の意見を、どれだけの韓国人が受け入れるのでしょう。

 祖国のなかったユダヤ人は何千年もかけ、パレスチナの地に自分たちの国を作りました。世界中にに散らばっていても、自立した韓国人であれば良いという氏が、保守と呼べるのか、私には疑問でなりません。

  ・民族主義は、1945年以前の帝国主義時代という、暗い精神史に属するものです。民族主義を掲げた天皇制の日本と、ナチスのドイツが、周辺の民族にどれほど大きな傷を与えたでしょうか。

 氏もまた、天皇をナチズムと同列に並べ日本への批判を強くします。

  ・その民族主義の弊害を、今日の我々は、天皇制やナチズムよりはるかに酷い、「北朝鮮の首領体制」を通じて追体験しています。

  ・李氏朝鮮王朝はなぜ滅んだのかと、この問題が出てくるだけで、韓国人は過敏になってしまいます。」

  ・歴史学者は、李朝が滅んだ原因についてきちんと話をしないままでいます。教科書の文脈のまま読めば、日本が闖入したせいで、李朝は滅んだということになります。

  ・「善良な主人」」と「凶暴な盗賊」という比喩がそれです。それは紛れもない事実ですが、そんなやりかたは、歴史から何も学ぶつもりがないという無責任な姿勢にすぎません。

 李朝は日本のせいで滅亡したのでなく、内在していた矛盾のため解体したのだと、氏は結論づけます。日本などそんなものは、関係がないと言いたいのです。李朝は自国の伝統的文明に拘泥するあまり、文明の大転換が出来なかったため、必然として崩壊したと説明します。

  ・文明史の大転換を強要した勢力が、もともと同じ文明圏に属していた日本だったため、気づくのが容易でなかったからでしょうか。

  ・島国の夷狄と軽んじていた日本から受けたプライドへの傷が、あまりに深かったからなのでしょうか。

 氏の意見を読み、朝鮮人の反日思想の芽生えが、やはり大院君時代であったと確信しました。氏はまるで共産主義者のように、自国の歴史を切り捨てます。

  ・滅んだのは、王と両班たちの朝廷としての国であり、民たちの国ではありませんでした。

 民たちの国が本当の韓国だというのなら、いったい韓国は何時になったら国ができるのか。思わず問いかけたくなったら、答えが用意されていて、ここでも日本が悪役でした。

  ・1945 (  昭和20 ) 年8月15日、ついに日本帝国は滅びました。ご存知の通り、大韓民国の最も大きな休日は、8月15日の 「 光復節 」です。

 氏は著書の最後で、自由と民主主義に立脚し李承晩が作った大韓民国が、本物の国家の始まりだと説明します。そして米国は朝鮮の国家建設を支援し、共産国からの侵略を防ぎ、国防を担ってくれる素晴らしい国だと語ります。

 「李承晩TV」の動画は38本ありますが、まだ数本しか見ていません。韓国内で放映されている動画と日本版が同じなのか、反日の部分が編集されているのか分かりませんが、激しい日本批判がなくなっています。

 今回の動画も氏の著作同様、私は「悲しみの詰まった動画」と、名付けたくなりました。日本と韓国の関係については造詣の深い氏ですが、アメリカについては単純な賞賛をしています。

 長い動画ですが、私は退屈しません。氏の意見は韓国人としては勇気のある発言ですが、生まれたばかりの星雲のように、取り留めのない部分が沢山あります。日本への悪意はないと見えるのに、強い憎しみを持つ不思議な学者です。

 学徒としても日本人としても、氏の意見には無視できない興味があります。しばらくつき合ってみようと思いますので、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々も、もし良ければおつき合い下さい。

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