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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『日露戦争』 - 10 ( 各国の思惑と日本 )

2021-10-02 19:12:25 | 徒然の記

 本日から、中断していた『日露戦争』の書評をはじめます。既に読み終えていますので、思い出しながら書かなくてなりません。ルーズベルト大統領が、斡旋に乗り出す前後の、各国の思惑について、下村教授の説明を転記します。

 明治28年( 1895 )の5月、対馬沖で日本がバルチック艦隊を撃滅する直前の、各国の動きです。

 〈 日本 〉

  ・元老と政府は、戦争開始と共に和平工作を念頭に置いて、戦争の経過を見守っていた。

 〈 フランス 〉 ( ルービィエ大統領 )

  ・露・独の接近状態に不安をだき、日露の講和を斡旋し、ロシアの好意をドイツから奪回しようとしていた。

 〈 ドイツ 〉 ( 皇帝ウィルヘルム二世 )

  ・日露戦争後、列国による清国分割が行われることを予測し、ドイツが除外されないための検討をしていた。

  ・独・仏・米の三国で日露の和を講じさせ、ついでに日英同盟を離間させ、日本とロシアの同盟を画策。( イギリスを孤立させようとする考え )

  ・これについては、アメリカの動向が成否の鍵だった。

 〈 アメリカ 〉 

  ・ルーズベルトは日本に同情的であったため、ドイツの提案を拒否し、このことを駐米大使高平に告げた。

  ・フランス大統領に対し、ロシアにとって講和が得策であることを、ロシアに勧告するよう求めた。

 〈 ロシア 〉  ( 皇帝ニコライ二世 )

  ・バルチック艦隊と、奉天に展開する数十万の兵力に期待をかけ、フランスの要請に応じなかった。

 ルーズベルトの意向を知った、枢密院議長の伊藤は、これを受け入れようとしましたが、桂太郎首相と小村外相が次の理由で反対しました。

  ・今、講和に意のあることを示すと、ロシアの主戦派が、日本に弱点があるため戦争遂行が不可能になったと思い、返って戦争継続を決意させる恐れがある。

  (  駐米大使高平を通じ、この点をルーズベルト大統領に説明させ、意思を通じ合わせた。)

 桂首相は、大きな決断のできない凡庸な宰相と言われていましたので、中心になっていたのは、小村外相です。元勲伊藤侯に同意せず、国益のため身を挺しました。反対された伊藤侯も、その意見を受け容れたのですが、ルーズベルト大統領が日本に好意的なのも、元はと言えば金子堅太郎を米国へ送り込んだ、候の決断と説得の成果でした。

 国運をかけた「日露戦争」に際し、元老と政府は一丸となって知恵を出し合っています。現在の日本で、政府が一丸となり国難にあたっているのかどうか、どうしても考えてしまいます。

 日露戦争は昔のことですから、多くの情報が開示されており、私たちもこうして知ることができます。現在の政府や各国の動きは、ほとんど秘密裏に行われていますから、庶民には分かりません。マスコミの情報だけが頼りですが、今回の総裁選で分かりましたが、彼らだって憶測の記事でした。

 本気にしていると、とんでもないことになりますが、政府の内情や、他国とのやり取りなどは、誰彼に知られないのが正常なのだと思います。ひどい国が周りにいくらでもありますから、それに比べれば「日本は良い国だ」と考えます。私たちが知らないだけで、政府内では、明治時代に劣らない真剣な政治が、展開されているのではないでしょうか。楽観的に過ぎるのかもしれませんが、激戦だった総裁選を戦った自民党の政治家諸氏を、今は酷評せず、見守りたい私です。

 日露の講和が動き出すのは、やはりバルチック艦隊を撃滅した「日本海海戦」の勝利後です。政府はこの時が、列強に利用されたり、干渉されたりしない時期だと判断しました。政府はこれまで国民を鼓舞するため、楽勝を宣伝してきたので、ハルピンを攻め、ウラジオストックを占領せよと、強い圧力が生じていました。

 大東亜戦争の末期、大本営は日本の劣勢を国民に伝えず、連戦連勝であるかのような発表をしていました。東京裁判以後、政府が騙したと言って、マスコミと共に多くの国民が憤慨しました。やり過ぎだったとも思いますが、戦争は、そんなものではないでしょうか。日露戦争は辛勝しましたが、実情を知らされていない国民は、やはり大騒ぎします。

 誰もが知っているように、日露和平交渉に出かけた小村外相は、帰国時に「国賊」と攻撃され、交渉結果に不満を持つ暴徒に、自宅が焼き討ちにされます。下村教授の説明が、国際社会の現実を教えてくれますので、やりとりの一部を著書から転記します。

 〈 ルーズベルト大統領 〉

  ・この上戦争を続けることは、無謀である。

  ・ロシアが誠意をもって講和に応じるならば、日本の要求は、予想するほど呵責なものではないだろう。

 〈 駐米ロシア公使カシニーの言葉 〉・・ロシア宮廷での会議の結論

  ・ロシアは、戦争を継続する。

  ・少しの領土も失っていない今、講和を要求することは、ロシアの名誉を失墜させることになる。

 〈  皇帝ウィルヘルム二世 〉

  ・ニコライ二世に対し、ルーズベルトの斡旋を受諾するよう勧告した。

 〈 ニコライ二世 〉

  ・講和への意思が、余にあることを絶対秘密にするならば、大統領の勧告に応じ、両国の代表が会見することに同意する。

  ・会見は、日本軍が樺太を攻撃する前に実行することが、重要だ。

 国際社会が、日露戦争の処理に激しいせめぎ合いをしていますが、日本政府内にも意外なせめぎ合いがありました。スペースの都合で今回はここまでとし、政府の実情報告は次に譲りますが、私が教えられたのは、政治に向かう国民の心構えでした。

 政権を担当している政府に、外野席の批判ばかりするのでなく、もっと国際情勢を見ながら、現実的な思考ができないものかと、実際には難しいことですが、そんな気がいたしました。息子たちには、何のことか分からないでしょうが、次回でハッキリするという気がします。

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病院からです。。。 (kiyasume)
2021-10-02 20:42:01
kiyasumeです。。。

今日、主治医から、「本当は半月ぐらい
入院させようと思って居たけど、、
発作も治ったし。後は自宅療法で

いいでしょう」との事で・・・・

来週中に早くも退院の見込みになりました。
退院したらblogは再開いたしますので
よろしくお願い致します。

大体が治療と言っても投薬と心理療法士に
よるカウンセリングですから・・・・・。

今は食後の自由時間です....。
病室の皆はテレビ見て居たり。寝て居たり。

そんな中、私はiPadでblogを見て居ます。
其れでは、退院したら,また来ますね。。。
返信する
ご見解御礼 (HAKASE(jnkt32))
2021-10-02 23:33:09
本日の拙記事ご見解を有難うございます。この 10月も
宜しくお願い致します。

自民党内でも明らかな劣勢となったにも関わらず、二階
前幹事長は 次の衆院選立候補の意向を固めたらしい
ですね。立つか否かは同氏の自由ですが、徐々にせよ
力を失っているのは自明の事でしょう。

日露戦、日本海海戦辺りの各国の思惑と、その間での
小村寿太郎・元外相の大いなる苦闘の軌跡が垣間見
える今回貴記事です。大東亜戦争こと太平洋戦争、
或いは他の戦でも、講和や和平への努力は、後世で
ないと正しく評価されない様ですね。

戦のない現在の視点からは「なぜ理解されない?」
の想いも頭を過りますが、戦時の当時ですと、国民
レベルで昂揚したりで 中々にこうした思考は通ら
ないのかも知れません。又 戦時にこそ外国の政府
や当局の意向を正しく掴む事が必要ですが、その為
の諜報活動ができる事も必要ですね。

現在の我国は到底その様にはできず、大いに不安な
所です。貴連載はまだ途上ですので、今回はこれ以上
は控えます。まずは お礼まで。Kiyasumeさん、
どうかお大事に。
返信する
Unknown (onecat01)
2021-10-03 00:00:21
 kiyasumeさん。

 こんばんわ。コメントを有難うございます。

 貴方は、自分のことについて、お医者さんよりよく把握しておられます。ですから、無理をせず、「ねこ庭」を訪問してください。

 ここは貴方のブログと同じで、「学びの庭」です。互いに知らないことを、教わったり、教えたり、伝えたりする場所です。

 私自身、貴方のブログを、そのような場所として訪問させて頂いています。互いに、いつまでも、そうでありたいですね。
返信する
普通の国 (onecat01)
2021-10-03 00:13:09
HAKASEさん。

 そうですか、二階氏は、最後まで議員として生きるつもりなのでしょうね。

 信念のためなら立派ですが、中国とのしがらみで引退できないというのなら、悲しい話です。事実を知りませんので、何とも言えませんが、日本のためには貢献しない人ですから、河野太郎氏や野田聖子氏同様、私には「獅子身中の虫」でしかありません。

 「温故知新の読書」は、やはり大切ですね。現在の日本を考えるための大切な材料を、たくさん与えてくれます。本を読んでいますと、自分は、マスコミが言うような右翼でなく、ごく普通の人間だということが分かります。

 日本を世界の中にある、「普通の国に」したいだけなのに、マスコミは「右翼」とか「極右」と片付けます。ここからして、日本の羅針盤が狂っています。

 次回もまた、ご意見をください。楽しみにしております。
返信する

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