ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

「チベット問題」を読み解く

2014-12-23 13:33:07 | 徒然の記
 大井功氏著「チベット問題を読み解く」(平成20年 祥伝社新書)。
名古屋で読んだ二冊目の本だ。筆者は昭和23年に長野県に生まれ、大学卒業後にビジネスマンとして世界各地で勤務し、今は松蔭大学の教授をしている。

 同じ長野に生まれても本多勝一のような不心得者がおり、大井氏のような良識人もいる。
ひとつの県に賢者も愚人も生まれて当たり前なのだが、そこを強調したくなるほど氏の本に感銘を受けた。久しぶりに心地よい読後の余韻を味わい、世間の広さを知らされた。

 まず驚かされたのは、チベット本来の領土が、中国の4分の1を占める宏大さであったということだ。
ダライラマ14世のインドへの亡命後に、自治区として中国が認めている地区でも、中国の領土の8分の1の広さがあるという。これだけの話だって、教えられなければ分からなかった重要事だ。

 四川省とか雲南省、青海省など、私たちはあたかも元々から中国領のように思い込んでいるが、これらの省の人口はチベット人が大半を占めている。移住してくる漢民族が増えたためこうなったのであり、今でも年々漢民族に浸蝕され、チベットの文化が失われつつあるのだと言うから驚きでないか。

 氏の言葉を引用してみよう。
「悲しいことだが、"民族浄化" の例は、歴史上も現代もいくつもある。近年ではボスニアのムスリム(イスラム教徒)虐殺がある。さらに現在では、中国政府が手を貸していると、世界から非難されている、アフリカのスーダン・ラルフールでの虐殺である。
これらの問題より遥かに長期間行われて来た"民族浄化" として、国際社会から非難と危惧が寄せられているのが、中国のチベット政策だ。」

 日本の政治家や政府関係者がチベット問題に関し、何も言わず静観している理由として氏は3つを上げる。
その1番目は、チベット問題に関する知識も情報も持っていないこと。2番目は、経済へのマイナス影響の懸念。中国を有望市場として企業が進出している中で、中国の機嫌を損ねたら、財界や業界団体から反発されると言う危惧だ。3番めは、チベットは中国の内政問題だから、内政干渉すべきでないと建前論を守っていること。

 中国がオリンピックを開催するとき、欧州各国が不参加を表明していた背景に、チベット問題への抗議があったことなど、本を読むまで知らなかった。
当時チベット争乱に対する強い非難を表明し、オリンピック不参加を表明したのは、ポーランド、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギー、バチカン、EUである。

 何も報道しなかったマスコミめと怒りたくなる私に、氏はその心得違いを説く。
「政府や大手メディアを弱腰と責めるのは簡単だが、そんな政府やマスコミの姿勢を許して来たのは、紛れもなく、われわれ国民である。民主主義の国においては、政府もメディアもその国民のレベルにあったものしか存在しない。国民は賢明だが、政府やメディアだけが愚かという逆はありえない。北朝鮮による拉致問題についても同じ経験を痛感したが、戦後の日本人は何かにつけ余りにも"ことなかれ主義" だった。私たちは、そのことをまず反省しなくてはならない。」

 国民を騙し続けた売国の朝日新聞だってそのままにしている私たちだ。不買を広げ倒産させるだけの見識も気概もないのだから、その通りですと反省するしかない。これ以上感想を述べる資格もない。

 紹介した内容は著作の最初の部分で、ほんのサワリのみだ。賢明なる国民の皆様におかれましては、各自、図書館で借りて読まれることをお勧め致します。
有益なこの本も、図書館で貰って来た「廃棄処分本」の中にありました。

 で、私はこの書籍をゴミとして処分せず、本箱の棚にキチンと並べることと致しました。
希望する方にお貸ししたい気はありますが、ブログの世界ではそれもなりません。残念なことです。

 
コメント
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