市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…バイオマス発電補助金差止訴訟の第3回口頭弁論が前橋地裁で開廷

2017-01-28 22:15:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■東電グループの関電工が主体となってバイオマス発電施設を風光明媚な赤城山南麓の電中研の敷地内に建設中ですが、この放射能汚染された木材を20年間に亘り毎年8万トンずつ燃焼させるという取り返しのつかない亡国事業に、我々の血税を4億8千万円注ぎ込むことに対して、補助金の交付に基づく支払いを差し止めるよう求めている住民訴訟の第3回口頭弁論が前橋地裁で2017年1月20日(金)午前11時から開かれました。以下はその模様です。

2017年1月20日の午前11時から2階の第21号法廷で開催された前橋バイオマス発電の燃料用チップ工場への補助金交付にかかる取消訴訟の第3回口頭弁論が開かれた前橋地裁。


 安中市での情報開示を終えてから急遽、前橋地裁に向かいましたが、道路がいつになく空いており、僅か30分で到着したため、1時間ほど早く前橋地裁についてしまいました。さっそく1階の開廷表をみると、本日は6件の裁判が予定されており、市民オンブズマン群馬のメンバーが関係する裁判がそのうち3件と半分を占めていました。

*****平成27年1月20日開廷表*****
第21号法廷(本館2階)開廷表
平成27年1月20日 金曜日
●開始/終了/予定:10:30/10:40/弁論
〇事件番号/事件名:平成28年(ワ)第218号/損害賠償等請求事件
〇当事者:谷内功 外/有限会社南雲商事
〇代理人:井坂和広 /神谷保夫
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸
●開始/終了/予定:11:00/11:10/弁論
〇事件番号/事件名:平成27年(行ウ)第7号/住民訴訟事件
〇当事者:小川賢 外/群馬県知事大澤正明
〇代理人: ―   /関 夕三郎
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知

    書記官 清宮貴幸
●開始/終了/予定:11:00/11:10/弁論
〇事件番号/事件名:平成28年(ワ)第12号/住民訴訟によるバイオマス補助金取消し請求事件
〇当事者:小川賢 外/群馬県知事大澤正明
〇代理人: ―   /石原栄一
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸

●開始/終了/予定:13:10/13:20/弁論
〇事件番号/事件名:平成28年(ワ)第2号/補修義務等確認(公法上の当事者訴訟)等請求事件
〇当事者:株式会社三井の森 外/嬬恋村 外
〇代理人:宮田眞       /熊川次男
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸
●開始/終了/予定:13:10/13:20/弁論(判決言渡し)
〇事件番号/事件名:平成28年(ワ)第16号、同第22号/登記申請きゃっか処分取消請求事件
〇当事者:佐藤泰山/国
〇代理人: ―  /益子浩志
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸
●開始/終了/予定:16:00/16:10/弁論
〇事件番号/事件名:平成28年(行ウ)第14号/懲罰処分取消等請求事件
〇当事者:本庄一志ことリャン・ジーボー/国
〇代理人:滝悠樹           /山崎誠司
〇担当:民事第2部合議係
    裁判長 原 道子
    裁判官 佐藤 薫
    裁判官 根岸聡知
    書記官 清宮貴幸

■10時半になると傍聴者の皆さんが集まってきて、開廷時には20人を数えるまでになりました。

 開廷表の順番では最初が大同スラグ不法投棄事件なのですが、開廷前に書記官から「最初にバイオマス補助金事件(平成28年(行ウ)第12号)から始めます」と言われたので、定刻の11時に原告2名が法廷内に入り着席しました。被告側には弁護士や県職員ら8名が陣取りました。また傍聴席にも県職員らしき関係者が数名待機していました。次の大同スラグ裁判の被告らのようです。

 さて、いつものとおり裁判長が入廷すると一同礼をしてから第3回口頭弁論が始まりました。

 裁判長は冒頭、「本日の第3回口頭弁論期日に向けて、当事者から、原告準備書面(2)と、甲14号証以下が用意されているが、この準備書面を提出したいということですね?」と原告に確認を求める発言をしました。原告は「はい。陳述します」と答えました。

 さらに裁判長は「甲14号証以下だが、甲22号証は全部写しなのか?甲22、甲23は原本も提示してもらってもおかしくはないが、写しで提出するというのであればそれはそれでもよい」と言いました。原告は「写しで提出することでお願いします」と答えました。裁判長は「はい。それではすべて14号証以下は提出ということね?」と言うので、原告は「はい」と答えました。

 裁判長は「本日のところは、原告からの陳述ということになるが、前回の第2回口頭弁論期日」から今回の期日までの間で、あらためて入口の問題ではなくて、本体について監査請求を経らうえで、訴訟という形にした方がよいのではないだろうかということで話をしたつもりだ。原告は新たに訴訟を提起したように聞いているが、そのとおりですか?」と質問してきました。原告は「そのとおりです」と答えました。

 裁判長は「本件については、その監査請求の前置が適法かどうかの問題と、訴えの出訴期間がクリアできているかどうかという2つの問題がある。これらは入口の問題なので、そのことについてこの事件をやっていく、というよりは、そういった問題がない形ができるのであれば、そのほうがよいだろうという話しをさせていただいた。そこで原告に伺いたいのは、本件では訴訟を続けるのか?ということだ」と原告に、この訴訟が出訴期間を徒過しているのではないか、という点を示唆してきました。

 さらに裁判長は「訴訟を続けるということの関係で、被告から調査嘱託が出ているが、これは、原告は別訴を起こすとか、そういったこととの関係で、どうするか分からないため、採用を保留している。この事件はこの事件で審理してほしいということになれば、いつ住民監査の通知が届いたのかを審理することになる。そのため調査嘱託を採用するという方向になるが、それを希望するか?」と、この事件を提出期限徒過の可能性があるから取り下げてはどうか、と示唆する質問を原告らにしてきました。

 これに対して原告らは「前回、裁判長から、本案前の無用なやりとりを避けようということで、この度、新しく訴訟を出した。要するに我々としては、本当は最初の件で、本案前にしても、我々は住民監査請求を経たということで、手続き上、訴訟資格があると思っています。被告はないと言ってきましたが、それについても、我々も主張しています。確かに裁判長の言うとおり、無用なことは避けるということで、我々は新たに訴訟を提起しました。今の発言にあったように、いつ監査結果通知を受けとったのかということで、調査嘱託。これも時間稼ぎ狙いの非常に遺憾な被告側の対応だと思うが、それはそれで調査嘱託で調べてもらってもいいと思います。我々は早く本案の内容にしっかりと入りたいと思っています。だからそれについて裁判長が、本案前のごたごたについて、被告側に何らかの対応をするような余地を与えることは確かに時間的・コスト的にも問題があると思う。内容的には同じなんですね。内容的には全く同じですから」と答えました。

 すると裁判長は「原告としては内容的に同じかもしれないが、出訴期間を守ったかどうかというのは、被告が同行とおっしゃるのはまあ、一つの参考意見であって、裁判所としてはそこを、出訴期間を守っていないのに守ったのと同じ扱いをするわけにはいかない」と述べました。原告はこれまでにも訴訟資格について不適格だと言われて門前払いをくらわされた経験が多々あるため、今回もそのような思惑があるかもしれないと警戒しつつ、「出訴期間というのはようするに・・・」と出訴期間がぎりぎりだったかもしれないが、間に合っているはずだと思っており、反論を試みました。

 裁判長は重ねて「いつ監査結果通知を受け取ったのかはっきりさせないといけない。出訴期間、この期間の訴えの提起期間の、法律が定める間に訴えを提起したかどうかということだ」と述べました。原告らはしばし熟考した挙句に、このまま何もしないでこの事件について門前払いをさせられるのも心外なので、「では、訴状を維持します。徹底的にやります。やってください。それほど訴訟指揮でおっしゃるのであればね」と返事をしました。

 裁判長は原告がなかなか言うことを聞かないので、「そうなると、この事件はそれだけで話が終わるかもしれない。出訴期間が守られていないということになればね。だからこそ、それをきちんとやらなければならないということだ。内容が同じと言うことになる前に。で、最初のこの事件に力を入れるよりは、新しく提起した2番目の訴訟の中で、対応的なところを主張・立証してリンクさせた方に力を注いだ方がよろしいのではないのか、ということ、それは前回申し上げたとおりだ」と述べました。

 原告は「いずれにしても、そういったところを排除して早く本案に入れるのであれば、新たに提起した事件で係争したいと思う」と答えました。

 裁判長は「新たに訴えは提起したんだよね。訴状送達まで行っていないのかしら?」と被告に向かって確認を求めました。被告は「いいえ」と首を横に振りました。

 次に裁判長は「届いていないの?何か補正が必要だったりしているのか?」と原告らに向かって聞きました。原告らは「いいえ、(補正命令の件は)聞いていません」と答えました。

 裁判長は「ああ、そうなの」と言いました。原告らは「たしか、今回も締切りぎりぎりの30日までに提出したと思います。12月28日が仕事納めだった。12月27日に裁判所に持ち込んでいるかと思います」と具体的な日取りを説明しました。

 裁判長は「で、そちらで、そちらが監査請求を経た方の、と言うことで、原告としては出訴期間を過ぎているという問題がないかたちで提起したのでしょう?」と問いかけてきまいた。原告は「そうです」と答えました。裁判長は「その問題について議論するよりは、その問題がない状態の方が(中身の審理が)できるわけだからね」と言うので、原告は「そうです。いずれにしても、前回のを踏まえて住民監査請求を新たにしておりますから」と見解を伝えました。

 裁判長曰く「それは原告が選ぶところなので、この事件はこの事件で進めてほしいという話しなのであれば裁判所としては調査嘱託を採用して、出所機関が守られているかどうか、それから監査請求が適法であるかどうか、監査請求前置の要件を要件を満たしているかどか、あと補助金が一部交付されているということからすると、この事件は一部支出してはならないというものを支出されているので、してはならないという形ではなくなるはずなので、そういう問題がまた生ずるが、それをやってほしいというのであれば、内容に入る前に訴訟要件を審理しなければならない、と言うことですすめていきたい」というので、原告らは「わかりました。やってください」と述べました。

 裁判長は何らやしっくりいかない様子ながらも「それは原告が選ぶところなので、なんとも」と述べました。原告らはあらためて「いずれにしても、最初の件も維持します」ときっぱり意思表示をしました。

 それを聞いた裁判長は「そうですか。では今日のところは調査嘱託を採用するということになる。調査嘱託を採用するということで、今のポイントに絞ってやっていきたい。今、話をしたが(補助金は)一部交付されているのだよね?」と被告に聞きました。被告は「はいそうです」と答えました。

 裁判長は「すると差止請求のある部分は訴えの利益がないというかたちになると思うが、これは順次なくなってくるのか?」と被告に再度聞いたところ、被告は「そのようになると思う」と答えました。原告らはそれを聞いて思わず「おかしいねぇ」と言いました。

 裁判長は「中身に関してがとにかく問題なので、出訴期間の問題と、監査請求の前置については主張して頂いているが、訴えの利益の点についても事態がかわって来るなら、それはそれで指摘してほしい。それはその点について決着をして、中身に入るということになったときに中身についての応答ということでお願いしたい」と被告に向けて言いました。被告は「了解しました」と答えました。

 裁判長は「それでは、送付嘱託を採用する。これは相手方のある事なので、返事が来たら双方に連絡する。被告が申立てたのでそれを書証にするということになるのでよろしく」と被告に確認したところ、被告は「はい」と答えました。

 裁判長は「送付嘱託が届いたら、それを書証として出してもらう。その書証のあった状態のものを出していただくというのが、主に次回と言うことになるが、それでよいね?」と被告に念押しをすると、被告は「はい、結構です」と答えました。

 裁判長はさらに被告に向かって「そのほかに訴訟要件として問題があるということであればそれも出してほしい・・・ごめんなさい。送付ではなく調査嘱託です。調査嘱託はそのままで証拠になるので、書証として出すのは理論的には必要ないが」と伝えました。被告は「一応(書証として9出します)と答えました。

 裁判長は「それを出して相手(原告ら)に送ると?」と被告に言うと、被告は「はい」と答えました。裁判長は「相手のあることだから、1ヶ月ほどみたい。もっと余裕を見たほうがよいか?」と被告に尋ねました。被告は「そうですね、お願いします」と言いました。

 結局裁判長は被告の意向に沿って、1ヶ月半ほど時間をとり、「それでは次回の期日は3月の10日か24日にしたい」と言いました。

 原告らは「(3月10日でも24日でも)どちらでも構いません」と直ぐに答えました。すると、被告の訴訟代理人弁護士は「24日は、差しつかえます」と言いました。

 それを聞いて裁判長は、次回第4回口頭弁論期日について「(3月)10日の10時か、もしくは午後1時半でどうか?」と言いました。原告らは「できれば午前中でお願いします」と要望しました。

 被告から異論がでなかったことから、裁判長は「3月10日(金)10時にこの法廷で続行と言うことになります」と、次回期日を双方に明言し、「はい、では(事件番号)12号については以上です」としてこの事件の第3回口頭弁論は約13分間で終わりました。

■こうして、バイオマス補助金交付の取消=差止訴訟の第3回口頭弁論は、訴訟適格について終始してしまい、次回までに被告が出した調査嘱託の結果により訴訟適格の有無が判断されることになりました。

 おそらく出訴期間についてはぎりぎりでセーフのはずですが、郵便局の記録できちんと確認してもらえばわかる事なので、原告らが自主的に1回目の住民訴訟を取り下げる必要はないと判断して、上記のように調査嘱託を受け入れることにしたものです。

 そもそも、補助金の交付がなされていないから、とか、出訴期間が30日を徒過しているかもしれないからとか、いつものように行政訴訟の最初のいやがらせをクリアしなければなりません。こうしている間にも関電工はちゃくちゃくと施設の建設を強引に進めているのです。もたもたしているわけにはいかないのですが、つねに行政訴訟は行政側の都合で判断されるケースが多く、今回の裁判もそのようにならないように、注意深く見守りたいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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公金で損賠金が支払われ不起訴になった体罰教諭に係る住民監査請求で安中市監査委員の前で陳述

2017-01-28 01:31:00 | 安中市の行政問題

■2015年11月に安中市内の小学校で発生した体罰事件について、暴行罪で起訴された元教諭が安中市による被害児童の代理人の弁護士に賠償金50万円を支払ったことが考慮されて前橋地検により不起訴処分(起訴猶予)となった件で、当会は、公金での損害賠償金の支払いが妥当かどうか今年1月6日付で住民監査請求を安中市監査委員に提出していましたが、同1月16日付で地方自治法第242条第6項に定める陳述の案内通知が配達証明付き郵便で届けられことから、1月27日(金)午前10時から35分間にわたり、安中市役所2階にある監査委員室で陳述をしました。

安中市の監査委員事務局は、新館の2階の介護高齢課の奥にある。


監査委員事務局の案内板。だが他の自治体と異なり、住民監査の陳述会場の行先を示す貼紙はなく、玄関の案内所で場所をあらかじめ尋ねた。

 陳述の内容は次のとおりです。

*****陳述書*****
        陳   述   書
            日時 2017年(平成29年)1月27日(金)午前10:00~
              場所 安中市役所2階監査委員室
              請求人・陳述者 小川賢

1.本体罰事件の概要について
 安中市から情報開示された資料によれば、本事件は、平成27年11月24日(火)の昼休み時間の午後0時30分頃に発生した安中市立小学校勤務の教諭(現在は市教育委員会の別の部署に在籍)による同校児童への体罰事件です。
 その後、平成28年2月3日に被害児童保護者の弁護士から安中市に対して損害賠償請求通知が届きました。同2月5日に安中市の教育部長が市の弁護士に相談し、その後、双方の弁護士どうしで協議のあと、被害児童保護者の弁護士から損害賠償額50万円の提示がありました。
 このため、平成 28 年 4 月 22 日に、市長、副市長、教育長、教育部長、学校教育課長、 市民部長、市弁護士で相談の結果、損害賠償額50万円を了承し、同5月19日に安中市長の専決処分事項として、専決処分が為され、同6月17日に安中市の「教育費 教育総務費 事務局費 事務局運営事業 補償補填及び賠償金 賠償金」の費目から、被害児童保護者の弁護士に損害賠償金50万円が支払われました。

2.なぜ安中市が和解金を全額負担しなければならなかったのか
 本体罰事件は、元教諭が市立小学校内で、昼休みに被害児童に対して、低学年の児童に対するいじめ行為をしたとの思い込みから被害児童に対して行われたものであって、学校設置者である安中市の施設運営管理上生じた事故であるとは考えにくいものです。
 むしろ、県費負担教職員である元教諭による昼休み中の不法行為ですから、人事権を有する群馬県に重大な責任があると考えられます。
 もし、本事件が和解ではなく、被害児童により訴訟を提起された場合、元教諭の人事権
を有する群馬県が被告となる可能性がきわめて高いと思われます。そして、被告が敗訴した場合には、当然のことながら、国家賠償法(昭和22年10月27日法律第125号)により被害児童に損害賠償金を支払うことになります。
 この観点から、施設設置者である安中市が、なぜ元教諭の人事権を持つ群馬県に、なぜ和解に際して費用負担を求めすに、全額を安中市の財政から支出したのか、理解に非常に苦しみます。
 本来であれば、被害児童から民事事件として提訴された場合、元教諭の人事権を司る群馬県が被告となるわけですから、被告の群馬県が敗訴した場合には、敗訴に伴う損害賠償金と同等な金額を元教諭の給与から減額するなりして、損害を回避するのが通常の対応だと考えます。
 よしんば、県費負担教職員である元職員による不法行為として、学校内で発生した体罰事件ということで、学校の設置者である安中市にも何らかの責任があるとされる可能性もあるかもしれません。その場合でも、責任の割合が全部安中市に帰するということは有り得ません。
 本体罰事件は、県費負担教職員による体罰という故意の不法行為です。したがって、学校運営管理上の問題ではなく、元教諭の教職員としての資質の問題も少なからず含んでいることから、人事権のある群馬県は、一定の責任を免れないと考えられます。

3.県費負担教職員制度とはなにか
ここで県費負担教職員制度についても理解しておく必要があります。市町村は、学校教育法第38条と第40条に基づき、その区域内に小学校及び中学校を設置しなければなりません。また学校教育法第5条に基づき、学校設置者は、設置された学校を管理し、「法令に特別の定のある場合を除いて」、その学校の経費を負担することとされています。
 一方で、市町村立学校の教職員の給与は、市町村立学校職員給与負担法1条に基づき、都道府県が負担することとされています。この規定に基づき、都道府県がその給与を負担する市町村立学校の教職員のことを「県費負担教職員」というふうに呼んでいます。これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律、通称、地方教育行政法に定めがあります。
 さらに義務教育費国庫負担法により、「県費負担教職員」の給与その他にかかる費用の3分の1が国庫から支出されています。そして「県費負担教職員」の任命権は、地方教育行政法第37条により、都道府県にあります。
 都道府県教委は、市町村教委の内申を待って県費負担教職員の「任免その他の進退」を行います。市町村立学校の校長は市町村教委に対してその所属する教職員の人事について意見を申し出ることができます。これは地方教育行政法第39条に定めてあります。
 また、服務の監督については、地方教育行政法第46条により、市町村教委が行うこととされています。なお、教育公務員特例法第21条第2項により、県費負担教職員の研修は、原則として任命権者である当該都道府県教委が実施します。
ちなみに地方教育行政法第58条第1項及び第2項に基づき、政令指定都市においては、県費負担教職員の人事権及び研修は当該指定都市の教育委員会が行います。同じく地方教育行政法第59条に基づき、隣の高崎市のような中核市の県費負担教職員の研修は、当該中核市の教育委員会が行います。
このように、小中学校は、市町村が設置・管理し、それにかかる経費は原則として市町村が負担するものの、そこに配属される教職員の給与は、都道府県が支弁し、国庫が一部負担します。さらに、市町村立学校の教職員の「任免その他の進退」、すなわち、採用、異動、分限、懲戒にかかわる権限は、市町村教委及び校長の関与はあるものの、基本的には都道府県にあります。
 すなわち、公立小中学校の管理運営は、市町村の事務とされますが、人事権を都道府県に帰属させることで、市町村立学校に関する権限は、市町村と都道府県の両者がこれを分有し、さらに国も教職員の給与その他の報酬を内部負担することで一定のかかわりを有しているのです。
このような複雑な仕組みが成立した経緯は概ね次のとおりです。戦前の義務教育は、「官営公費事業」の範疇に含まれるものとされ、義務教育は国家事業と位置づけられて、教員の任免権その他は国家の権限とされました。これに対し、市町村は、学校施設の設置・管理にかかる費用及び教員の俸給の支弁を負担しました。1918年、義務教育の教員給与の一部国庫負担を法定した市町村義務教育費国庫負担法が成立し、さらに1940年、義務教育の教員給与費を府県が負担し、その2分の1を国が負担することとした義務教育費国庫負担法が制定され、同時に地方間の財源調整のため地方分与税が創設されました。(注:小泉政権以降、国の負担率は3分の1になりました。)
戦後の教育改革の一環として、義務教育は自治体の事務となりました。そして旧教育委員会法が1948年に制定されて、教職員の人事権はすべて市町村教委が行うこととされました。旧教育委員会法の成立した同じ年に市町村立学校職員給与負担法も制定されて、市町村立学校の教職員の給与は都道府県の負担とされました。
 また、1950年には、シャウプ勧告により、義務教育費国庫負担制度が廃止され、新たに設けられた地方財政平衡交付金制度に編入されましたが、1952年には義務教育費国庫負担法が復活し、翌年施行されました。さらに1956年に地方教育行政法が制定され、それまで市町村教委が有していた教職員の人事権を都道府県の権限とすることにしました。
 なお、都道府県教委による教員任免事務は、市町村教委からの「機関委任事務」であると位置づけられました。したがって、都道府県教委は、「関係市町村の総合的機関」として人事権を行使することとされました。しかし、地方分権一括法により、機関委任事務が廃止されたことにより、教員任免の事務は法定受託事務に編入されたわけではないので、都道府県教委の法定自治事務として整理されたことになります。
県費負担教職員の選任監督の実情については、安中市の教育委員会が詳しくご存じのはずですが、申請人が調べたところによれば、地方教育行政法第46条に規定されている市町村教委の服務監督権は「形骸化」しているということです。
 例えば、県費負担教職員が事件・事故を起こした場合、市町村教委は、最初に都道府県教委に報告を行います。そして都道府県教委の指示に従い、調査を行い、報告書を作成します。調査を終えて、事件・事故報告書を提出した後に都道府県教委による事実確認が行われます。その後、都道府県教委が市町村教委に対して、処分に関する内申を提出するよう「指示」を出します。その際、処分内容については、市町村教委からの内申の中には記載せず、「厳正なる処分」といった抽象的な文言にとどめるよう求められるそうです。
 処分の内容について市町村教委は公式に依頼することができず、専ら都道府県教委が決定しているというのです。このように、市町村教委の服務監督権の実情は「起きた事故について報告をすること」、監督するというより単に「見ている」権限に過ぎないというのが現状だというのです。

4.本体罰事件の報告は群馬県に正しく為されたのか
 前項に照らせば、本体罰事件について、安中市は人事権を有する群馬県に報告をいつどのように行ったのか、経緯が全く把握できません。なぜなら、開示された情報の中に事件・事故報告書はなく、市内にある安中市立小学校長から安中市教育委員会教育長あての体罰報告書しか確認できていないからです。したがって、報告を受けた群馬県教育委員会による事実確認が果たしてなされたのかどうか、全く分かりません。
 開示された資料によれば、事実証明書9にあるとおり、平成28年6月17日(金)に、安中市が群馬県西部教育事務所の大澤主任管理主事に、処分の判断について助言を求めたと思われるメモがあるだけです。その際、群馬県の大澤主任管理主事は「ここ数年、教諭の体罰で損害賠償請求の裁判は1件のみで、本人への求償はなく、その理由として判決文に「故意または重大な過失」が認められなかったため(第三者の判断として裁判所の判決を精査した結果)」とメモに記してあります。
 しかし、新聞報道によれば、群馬県教委は2016年2月に、加害者の元教諭を「戒告処分」にしています。
 ということは、安中市教育委員会は住民監査請求人が情報開示請求をした際、果たして関係情報を全て開示したのかどうか、という疑念も浮かび上がってきます。このことについても、安中市監査委員の皆さんには調査をしていただけますようお願い申し上げます。

5.体罰は果たして「故意または重大な過失が認められない」行為なのか
 今回の事件では、被害児童から暴行容疑で刑事事件として告訴された経緯があるようですが、新聞報道によれば、「前橋地検は『証拠を精査し、市側が賠償金を支払ったことも考慮した』としている」とあります。
 ところが安中市は、事実証明書9に示す通り、「今回の事案が教育現場における指導中の行為であり、対応の誤り、行き過ぎた指導行為は明白であるが、故意または重大な過失が認められていないこと」を理由に、国家賠償法第1条第2項に定めた「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」とする条項に基づく元職員に対する求償権を放棄してしまいました。
 また、国家賠償法第3条第1項で定める「公務員の俸給、給与その他の費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる」とされる群馬県が元教諭のサラリーを支払っていたわけですから、本来、全額を支払うべきですので、「費用を負担する者」である群馬県が、同法第3条第2項に定める「前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する」のですから、本来は群馬県が被害児童に損害賠償金を支払うことになるわけです。
 ところが安中市は群馬県に損害賠償の負担を求めることなく、事実証明書9に示す通り、ただ単に求償権の放棄に関する県の類似事件に関する対処事例のアドバイスをそのまま受け入れて、安中市だけで損害賠償の和解金50万円を全額、被害児童に支払ったにもかかわらず、「体罰は故意又は重大な過失ではない」などと不当に判断して、求償権を放棄するという方針を勝手に決めてしまいました。そのため、未だに国家賠償法第1条第2項に基づく原因者への求償が行使されておらず、安中市民の血税が、元職員の不起訴処分の“肥やし”にされたままとなっているのです。
 体罰とは「故意」で行われるものです。今回の事件では被害児童が何度も濡れ衣であることを元教諭にアピールしたにもかかわらず、それを無視して体罰を加えたのですから、仮に故意ではないとされる場合でも、「重大な過失」に当たると考えられます。

5.安中市の財政は国家賠償法による求償権を放棄できるほど潤沢なのか
 さきほど企画課から安中市土地開発公社を巡る巨額詐欺横領事件の和解金として2016年12月25日に群馬銀行に対して、公社が群馬県信用組合(けんしん)を通じて、2000万円を支払ったことを示す文書の開示を、情報公開請求に基づいて受けてきました。ここにその文書の写しがあります。今回の支払いは、総額24億5000万円の和解金のうち、当初の4億円を除く残りの20億5000万円を毎年2000万円ずつ公社が群馬銀行に対して103年かけて支払っているもので、18回目に当たります。今後さらに85回支払うことになっており、つまり今後85年間、支払いが続くことを意味しています。
 このような和解金は、原因者である元職員や、公社の歴代の役員や上司らが負担すべきものですが、請求人をはじめとする市民らが住民訴訟を提起したものの、裁判所は、公社は安中市とは別法人であるから、市民には損害賠償請求をする資格がないとして、全て敗訴となってしまいました。

6.まとめ
 安中市長の地元である岩野谷地区第4区の北野殿で元旦に開かれている恒例の新年会では、今年も市長の挨拶がありました。その挨拶のなかで、今年も「厳しい市財政」という認識を示す言葉が発せられています。また、前述のとおり安中市では21年半前に前代未聞、空前絶後の巨額詐欺横領事件が発生しましたが、単独犯とされた公社元職員からの損害金の回収は皆無に近く、公社の当時の理事や監事、そして上司らは全く責任を取った者がおりません。
 こうした悪しき前例もあるため、今回の体罰事件で安中市がこれ以上損害を被らないように、きちんと法律に基づいて必要な措置を講じたのかどうか、住民として確認しておく必要がある為、申請人は住民監査請求に踏み切りました。
 これまでの申請人の調査によれば、安中市が、明らかに国家賠償法第1条第2項の行使を怠っていることは明らかです。
 従って、安中市監査委員に皆さんにおかれましては、厳しく監査を行い、国家賠償法第1条第3項に基づき、安中市教育委員会の委員長に対して、原因者である元教諭への求償権を行使するよう勧告をしてくださり、安中市への損害を回避してくださるよう、強く要請する次第です。
                         以上
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■陳述後、監査委員2名からは陳述内容に関する質問はありませんでした。最近、久しく住民監査請求はなかったそうなので、司会の有坂・監査委員事務局長も最初はなんとなくぎこちない様子でしたが。請求人のほうからなるべくリラックスできるように声を掛けたりしてあげました。

 ちなみに監査委員2名のうち、識見を有する者としては磯部一丁目で税理士事務所を開いている安藤忠善氏が、議会選出委員としては松井田町を地盤とする市議の斎藤盛久氏が当日、陳述の場に出席していました。

 安藤氏は平成22年6月11日から4年間の任期で安中市監査委員をしており、平成26年6月10日をもって一旦任期満了となりましたが、平成26年5月12日に開かれた安中市議会平成26年5月第2回臨時会で、茂木・安中市長から「すぐれた人格、見識と、豊かな税務経験などを持って、市の監査委員として多大なるご尽力を賜っております。よって、まことに適任であると存じ、ここに引き続き監査委員としてご推薦を申し上げる次第でございます」と再び推薦され議会の賛成多数で承認されました。
○安藤氏のプロフィール:
http://www.city.annaka.gunma.jp/kouhou/pdf/pdf2208/P7.pdf

 ちなみに監査委員の報酬は「○安中市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」(平成18年3月18日安中市条例第42号)により、識見を有する者として安藤委員の場合は月額66,000円、議会選出委員の新政会所属の斎藤委員の場合は37,000円となっています。

【ひらく会事務局からの報告】

※参考情報
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○安中市監査委員条例
平成18年3月18日
安中市条例第12号
(趣旨)
第1条 この条例は、監査委員に関し必要な事項を定めるものとする。
(監査委員の定数)
第2条 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第195条第2項の規定により、監査委員の定数は、2人とする。
(平19条例2・一部改正)
(事務局の設置)
第3条 法第200条第2項の規定により、監査委員に事務局を置く。
(定期監査)
第4条 監査委員は、法第199条第4項の規定による監査を行うときは、監査期日7日前までに、その期日を市長及び関係機関(以下「関係機関」という。)に通知しなければならない。
(随時監査)
第5条 監査委員は、法第199条第5項の規定による監査を行うときは、その都度、その期日を関係機関に通知しなければならない。
(請求又は要求による監査)
第6条 監査委員は、法第75条第1項、第98条第2項及び第242条第1項の規定による監査の請求並びに第199条第6項の規定による監査の要求があったときは、当該監査の請求又は要求を受理した日から10日以内に監査に着手しなければならない。ただし、特別の理由があるときは、この限りでない。
(例月出納検査)
第7条 監査委員は、法第235条の2第1項の規定による検査は、毎月25日にこれを行う。ただし、その日が安中市の休日を定める条例(平成18年安中市条例第2号)第1条第1項に規定する休日に当たるとき、又は特別の理由があるときは、その期日を変更することができる。
(職員の賠償責任の監査等)
第8条 監査委員は、法第243条の2第3項の規定による職員の賠償責任について市長から賠償責任の有無及び賠償額の決定を求められたとき、又は同条第8項の規定による賠償責任の免除に関する意見を求められたときは、当該決定又は意見を求められた日から30日以内にその決定又は意見を市長に報告しなければならない。
(決算、証書類等の審査)
第9条 監査委員は、法第233条第2項及び第241条第5項、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第30条第2項並びに地方公共団体の財政の健全化に関する法律(平成19年法律第94号)第3条第1項及び第22条第1項の規定により審査に付されたときは、審査に付された日から60日以内に意見を付けてこれを市長に提出しなければならない。
(平20条例23・全改)
(請願等の措置)
第10条 監査委員は、法第125条の規定により市議会から請願の送付を受けたときは、20日以内にこれを処理しなければならない。
(監査結果等に関する報告の提出)
第11条 監査委員は、監査又は検査が終了したときは、法第75条第3項、第199条第9項又は第235条の2第3項の規定により、その結果に関する報告を30日以内に市議会及び関係機関に提出しなければならない。
(公表)
第12条 監査委員が行う公表は、安中市公告式条例(平成18年安中市条例第3号)の例による。
(委任)
第13条 この条例に定めるもののほか、監査委員に関し必要な事項は、監査委員が協議して定める。
附 則
この条例は、平成18年3月18日から施行する。
附 則(平成19年3月19日条例第2号)
この条例は、平成19年4月1日から施行する。
附 則(平成20年6月20日条例第23号)
この条例は、公布の日から施行する。
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○安中市監査委員事務局規程
平成18年5月19日
安中市監査委員訓令第1号
(趣旨)
第1条 この訓令は、安中市監査委員事務局(以下「事務局」という。)の事務処理等に関し必要な事項を定めるものとする。
(組織)
第2条 事務局に監査係を置く。
(職員)
第3条 事務局に事務局長、係長及び書記を置く。
(職務)
第4条 事務局長は、監査委員の命を受け、事務局の事務を掌理し、所属職員を指揮監督する。
2 係長は、上司の命を受け、分掌事務を掌理し、所属職員を指揮監督する。
3 書記は、上司の命を受け、事務をつかさどる。
(職務代理)
第5条 事務局長に事故があるときは、係長がその職務を代理する。
(事務分掌)
第6条 事務局の事務分掌は、次のとおりとする。
(1) 市の事務及び事業の監査、出納検査及び決算審査に関すること。
(2) 監査、検査及び審査の執行計画に関すること。
(3) 定期監査、出納検査その他結果の報告及び公表に関すること。
(4) 職員の人事及び服務に関すること。
(5) 公印に関すること。
(6) 文書の収受、発送及び保存に関すること。
(7) 予算の経理及び物品の出納、保管に関すること。
(8) 庶務に関すること。
(事務専決)
第7条 事務局長は、代表監査委員が処理する事務のうち、次の事項を専決することができる。
(1) 所属職員の休暇に関すること。
(2) 所属職員の時間外勤務命令に関すること。
(3) 所属職員の出張命令に関すること(宿泊出張を除く。)。
(4) 定例又は軽易な報告、照会、回答及び通知に関すること。
(5) その他軽易な事項に関すること。
(公印)
第8条 監査委員、代表監査委員、代表監査委員職務代理者、監査委員職務執行者及び事務局長の公印は、別表のとおりとし、事務局長がこれを保管する。
(平22監委訓令1・全改)
(その他)
第9条 この訓令に定めるもののほか、事務の処理、公印の取扱い及び職員の服務については、市長部局の例による。
附 則
この訓令は、決裁の日(平成18年5月19日)から施行する。
附 則(平成22年4月30日監委訓令第1号)
この訓令は、平成22年5月1日から施行する。
別表(第8条関係)
(平22監委訓令1・全改)
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