田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

エッセンシャル・キリング(essential killing)

2012年10月02日 00時17分18秒 | 日記

 

 前作『アンナと過ごした4日間』で久々に復帰したポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督によるサバイバル・アクション。
アフガニスタンの荒野を一人さまよっていたムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)は、アメリカ軍に捕らえられる。激しい尋問を受けた後、別の場所へ移送中に事故に遭い、その混乱に乗じて彼は逃げ出す。民間人を殺し、車を奪い、雪に閉ざされた深い森をやみくもに逃げ続けるムハンマドは、やがて森の中に一軒の家を見つける・・・。アメリカ軍に追われるアラブ兵の逃亡劇を83分間セリフなしで撮り上げ、第67回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞と最優秀男優賞を受賞した。飢えと闘い、傷も負った極限状態で大自然の中を逃げ回る主人公を、顔の表情と肉体のみで表現したヴィンセント・ギャロの鬼気迫る演技は必見。(シネマトゥディより)


 今頃すみません。気になっていたのに見に行けず、wowow録画になっていた作品です。個人的には、単純にヴィンセント・ギャロが好きだったこと、そして「アンナと過ごした4日間」を見て強く印象に残ったこと、そんな理由で興味を持ったのでした。

ヴィンセントは基本しゃべらないのですが、時々叫び声やうめき声を上げることがあります。「絶対にしゃべらない」と思い込んでいた私は却ってギョっとしました。

砂漠の追跡劇から始まって、いったいどこなのか、舞台は真っ白な雪原へ。監督の意図で、場所も、男(ヴィンセント)のバックグラウンドも、何も提示されません。ただひたすら過酷な自然の中を逃げているだけです。

ただフラッシュバックで、男はアフガニスタンかどこか、イスラムの国でアラーの教えを乞い、その教えの声は西洋を敵視しているようすが示されます。男はそういう衣装も着ていますし、故郷には妻子もいるようです。

それ以上はなにも情報は与えられません。なにか、テロにでもかかわったのでしょうか、ひたすら追われているわけです。

灼熱の砂漠の次は、零下35度の雪原(この間、一度捕まって護送されるのです。その途中で、イノシシを避けそこなった車が転落したため、逃げ出したわけです)。追うアメリカ軍もプロです。優れた犬を連れた屈強な男たちが執念深く追って来ます。

そんななか、獣用の罠にかかるわ、山の斜面を滑り落ちて冷たい川に落ちるわ、もう満身創痍で走り続けます。その間、逃げるに必要な人殺しのみを行い、蟻を食べ、木の皮をむいて口にしながら、人里近くなってくると授乳中の母親の乳を無理やり吸ったりもします(女性が、なんであんな道端で突然授乳し始めたのかは謎ですが。日本と文化の違いでしょうか)。

ともかく、とうとうある女性のお店の前で倒れてしまいます。その女性(エマニュエル・セリエ)は聾唖で、またまた誰もしゃべりません。そして、女性は最低限のけがの手当てと着替え、食事と馬を与え、早々に彼を逃がします。横暴な主人がいつ帰ってくるともしれないのです。

しかし、体の中から傷ついている男は、真っ白な馬の首に血を吐き続けます。

そして、ラストシーンでは、首に血を浴びた馬のみが、草をはむ様子が映し出されます。彼はどうしたのか?まったく説明はありません。観客の想像にまかせる、ということなのでしょうか。


映画は以上です。なかなかに見応えのある映画だとは思いますが、追われている理由付けが必要だからと言って、アフガニスタン等を登場させるのは、ちょっと危険な感じがしました。それとも、ポーランドの監督だから、アメリカ人ほど責められたり非難されることがないのかしら。

まぁ、今アメリカ人がムハマンドを侮辱する映画を作ったとかで、反発の嵐が吹き荒れている時期だから、余計に敏感に思うのかもしれませんが。

ともかく、これだけ場所も時期も特定せずに逃亡劇を作ったのなら、もっと徹底的に匿名でもよかったかな、と思います。

それにしても、久しぶりにみるヴィンセント。待ってたよ~。多才な人だから、いろいろやることもあるんだろうけれど、もっと映画に出てね。

それから、イエジー・スコリモフスキ監督、今は奥深い森の庵に引きこもって絵を描いていたいそうです。

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